第四話
★あらすじ:
・ガイコツ→ガイコツ(元)→砂
・琴美が鏡の中へ
★前回の台詞(一部)
「パパ~」
「ヤア、オカエリ、コトミ」
「チッ」
「うひょー。やっふぅー」
第四話《呪いの鏡(前)》
[視点:茂]
「ハァー」
疲れた。正直こいつらといるとストレスが溜まって来る。
なんで俺、今までこいつらとずっと一緒にいることが出来たんだろう。
そういえば、昔はこいつらといてもあまり思わなかったような……。いつから、こういう風に思うようになったんだっけ。ちょっと考えてみよう。
幼稚園の時は……仲が良く、ストレスもなかったな。小学生の時……も、普通だ。中学生の時は……やっぱり普通だ。じゃあ高校生になってからか。
一年の時……も、普通だったな。てことは、二年になってから思い始めたのか。
でも昨日まで普通だった気が……。
「うーん……あれ? 俺はどうしてたんだっけ」
どうやら進が気が付いたようだ。
「お前はさっき、理科室から出た瞬間に琴美に殴られて気絶したんだ」
まさか運悪く琴美が拳を突き出したときに、いきなり進が出てくるんだもんな。
「ふーん。その俺を殴った琴美は?」
進がキョロキョロしながら聞いてくる。
「琴美ならハンカチを冷やすために、水飲み場に行ったぞ。そういえば遅いな」
大丈夫かな。一応護身用として、カッターを持たせたけど。
それからしばらくして、
「おーい。ただいま~」
と言いながら琴美が帰ってきた。
[視点:琴美]
「いったーい」
私は頭を押さえながら言った。
「ここは……鏡の中?」
辺りを見渡すと、薄暗い空間が広がっていた。
〈そうよ。そこは“鏡の中”よ〉
声がした方を見ると、そこには小さな窓のようなものがあり、そこにもう一人の私がいた。
「あなた、もしかして七不思議の『呪いの鏡』」
七不思議の一つ『呪いの鏡』は学校のどこかにある鏡で、その鏡を見た人を鏡の中へ、そして自分は外へ出る――つまり入れ替わってしまうのだ。
〈そう、私は“呪いの鏡”よ〉
もう一人の私はそういった。
「どこかの鏡って、水飲み場の鏡のことだったのね」
私がそういうと、もう一人の私はクスクスと笑いながら言った。
〈違うわ。その鏡の呪いは常に、鏡から鏡へと移動するの〉
そうだったのね。移動をして特定の場所にないから「どこかの鏡」という感じのあやふやな表現だったのね。
まあ、今はそれはいいわ。それより、ここを出なくちゃ。
「ちょっと、私をここから出しなさいよ」
私は小さな窓を叩きながらそういった。
けれど、もう一人の私は、
〈何を言ってるの? あなたと私は入れ替わったの。今からは私が“本当の琴美”よ。あなたはそこで“鏡の琴美”として、生きていなさい〉
そういってさっさといなくなってしまった。
「とにかく何とかしなきゃ」
私はそう言い、何か出る方法はないかと探索を始めた。
[視点:琴美(偽)]
ふふふ。やっと鏡から出られた。
これで私は自由……最初は何をしようかな。
「――その俺を殴った琴美は?」
この声は、“鏡の琴美”の友達の声ね。どうやら“鏡の琴美”を探しているみたい。
でも今日からは私が“本当の琴美”。というわけで、“私”を探しているみたいなので行ってあげるか。
丁度七不思議を退治していて邪魔な奴らだし、油断させて殺しちゃってもいいわね。
「おーい。ただいま~」
[視点:進]
「うーん……あれ? 俺はどうしてたんだっけ」
気が付くと俺は廊下に横になっていて、隣には茂が座っていた。
「お前はさっき、理科室から出た瞬間に琴美に殴られて気絶したんだ」
と、茂が説明してくれた。さっき、ということは、あれから少なくとも五分くらいは経ってるな。
それにしても、琴美に殴られて五分も気絶するなんて……。あれ、そういえば琴美がいないな。
「ふーん。その俺を殴った琴美は?」
俺は辺りを見渡しながら茂に聞いた。
「琴美ならハンカチを冷やすために、水飲み場に行ったぞ。そういえば遅いな」
遅い? 水飲み場ならここから一分もかからないじゃないか。一体どこで何をしてるんだか。
そう思い、しばらくすると、
「おーい。ただいま~」
琴美が駆け足でこちらに向かってきた。
「遅かったな。一体何をしてたんだ」
茂が琴美の方を見ていった。
「ちょっといろいろあってね。それより、早く次の七不思議のところに行こうよ」
そういって琴美は俺らの手を掴むと、引っ張って歩き始めた。
「?」
違和感みたいなものを感じたけど、気のせいだろうと思った。
☆第四話《呪いの鏡(前)》 完
★次回予告:
あんまり出番もなく、第三話では一言しか台詞のなかったあの茂にたくさん出番があった第四話。一体いつまで茂の出番が多いままでいられるのか!?
そして呪いの鏡と入れ替わり、鏡の中に閉じ込められてしまった琴美。鏡の中から出ることが出来るのか。
全ての答えは次回明らかに!……なるかも。次回、学校の七不思議?第五話《呪いの鏡(後)》