第7話 アーサトゥアル帝都
所変わって、ここはアーサトゥアル帝国の首都、アーサトゥアル帝都。
街並みは碁盤の目のように整備されてはいるが、どこか不気味な感じがする。
地域によっては町の人々よりも警備兵の数の方が多く、警備兵が無法をなし、町としての機能を果たしていないようなところもある。
そのアーサトゥアル帝都を支配するのは、なんと女帝だ。
その女帝の口ぐせ。
「男はあてにならないわ。世の中女だけでいいや。
正確には、女と、女が求めるイケメンだけいればいい。
最低のクズ男なんかには消えてもらうわ。」
そんな極端な考えを持つ女帝だが、その正体は誰も知らない。
ごく一部の側近以外は、その顔を直接見ることもないという。
「申し上げます。ムッシー・ド・ハルゼー将軍が参られました。」
「へえ、ムッシー・ド・ハルゼー将軍ね。」
方面軍の司令官となっているムッシー・ド・ハルゼーが、報告をするため本国まで引き上げてきた。
「ムッシー・ド・ハルゼーにございます。
現在、例の辺境地域の農村では、我が軍が攻め滅ぼしたジャパネスク王国の敗残兵、ラファエロなる者が、スイーツ店と、飲食店を建てて、農業でもやりながら気ままに過ごそうなどと、考えているようです。」
女帝の名前は、
『イメルダ・エマニエル・ド・アーサトゥアル』
という名前。通称、女帝イメルダ・エマニエルという。
どうやら敗残兵ラファエロ=転生者の喜多風太陽の『農村のスイーツ店&飲食店』の情報は、これでアーサトゥアル帝国の中枢にも伝えられたようだった。
そして女帝イメルダ・エマニエル・ド・アーサトゥアルも、ラファエロのスイーツ店&飲食店に興味を持ったようだ。
「すておけ、と言いたいところだけど、まずは経緯を見守ろうかしら。」
ムッシー・ド・ハルゼーは報告を続ける。
「今のところはまだ、スイーツ店のみ。
しかも売り物となるのは、どこからか持ち込んできた市販品のプリンだけ。
ただ、並盛、大盛、特盛、メガ盛とあります。」
「へえー、これはぜひ一度、お目にかかりたいわね。」
女帝イメルダ・エマニエルは不敵な笑みを浮かべた。
ムッシー・ド・ハルゼーは、いかつい感じの男の将軍。
お世辞にも、イメルダ・エマニエルが理想とするイケメンとはほど遠い。
にも関わらず、イメルダ・エマニエルの顔を拝むことができる立場だ。
イメルダ・エマニエルはそれについても言及した。
「もっとも、能力のある有能な男で、私のために誠心誠意尽くしてくれるというような男なら、その能力を存分に発揮してもらうわ。」
要するにそういうことのようだ。
もちろん、帝国には他にも大幹部クラスがいるが、それはまた後ほど。