第3話 アーサトゥアル軍を撃退してしまいました
喜多風太陽こと落武者ラファエロは、しぶしぶ少女の頼みを聞き入れ、飲食店とスイーツ店の開業に向けた準備を進めることになった。
一見すると、外の世界の情勢とは無縁の世界に思えた。
が、こんな小さな名も無き農村でも、アーサトゥアル帝国の動向とは無縁ではいられなかった。
この世界はアーサトゥアル帝国という、イカれた帝国の動向を中心に回っていた。
アーサトゥアル帝国
建国からわずか30年程度の新興国でありながら、ここ2~3年は周辺各国への侵略により、急速に領土を拡張し、軍事大国としての地位を確立し、また近年は高度経済成長も著しく、経済大国としての地位も確立しようとしている。
「そもそも自分がこの農村に逃げ延びてきたことは、本当に良かったのか?
もしかしたら、自分がこの農村に逃げ延びてきたせいで、農村の人々を、アーサトゥアル帝国との戦いに巻き込んでしまうことになったら…。
それこそ、自分のせいだ、自分のせいでそうなってしまうんだから…。」
そう思いながら、飲食店とスイーツ店の開業に向けた準備を進めることになった。
が、いきなり準備を進めるといっても、何から始めたらいいか、それから考える必要があった。
開業準備をどうすればいいのかもわからないまま、それからしばらくして、アーサトゥアル帝国の部隊が差し向けられた。
この部隊を差し向けることを命じたのは、方面軍の指揮官、ムッシー・ド・ハルゼー将軍。
「ほう…、こんなところに、こんな農村があったとは…。
ここにラファエロがかくまわれているのか。
あの農村、潰せ。
ラファエロは生け捕りにしろ。
農村の者たちは皆殺しにし、農村の家と畑は焼き払え。」
「はっ!」
目的のためなら手段を選ばない冷酷な将軍、それが、ムッシー・ド・ハルゼーだ。
長老「な、なんですか、あなたたちは。」
アーサトゥアル帝国軍の部隊がついにこの農村に現れる。
部隊長「我々はアーサトゥアル帝国軍の者だ。
ここにラファエロという者がかくまわれているだろう。」
長老「はて、そのような者は、知りませんな。」
部隊長「とぼけるな!」
長老「それに、このような辺境の農村には、あなたがたの求めるような物は、何もありません。」
部隊長「そうはいかぬ。この世界の全ては、我らアーサトゥアル帝国のものだ。
たとえ、こんなちっぽけな、名も無き農村でもだ!」
長老「なっ…!」
そこにラファエロが現れる。
長老「ラファエロ様!危険です!お下がりください!」
部隊長「ようやく現れたな、ラファエロ。」
ラファエロ「こっちこそ、ようやくここがわかったようだな。アーサトゥアル帝国軍よ。
さっそく身につけた、チートの力を見せてやる!」
チートの力、それがいったい何なのかはわからないが、とにかくすごい力らしい。
喜多風太陽がラファエロの体内に帰依してきたことにより、身についたすごい力らしい。
ラファエロは、さっそくその力を解き放った!
「うおおおおっ!」
ラファエロの全身に力がみなぎる!
「なんとすごい力だ!」
波動がほとばしる。その波動をアーサトゥアル帝国軍に向けて発射する。
帝国兵「どぎゃひえーっ!」
帝国兵は砕け散る。
部隊長「ぎょえーーっ!」
部隊長もあっけなく砕け散る。
なんとすごい力だ。その力を駆使している本人が驚くほどの、すごい力だ。
帝国兵「ああ、部隊長がやられた!」
「ぶぎゃっ!」
「ぐげえっ!」
「た、たいきゃ、くべえおあっ!」
この帝国軍の部隊は退却することもできないまま、帝国兵たちが次々と、ラファエロの放つ波動によって砕け散っていき、そして一人残らず全滅した。
長老「ラファエロ様!ありがとうございます!
おかげで村は救われました!
しかしながら、アーサトゥアル帝国軍の兵たちのあの風貌は、あれは人間のものではなく、魔物ではないかと…。」