九十七話みんなでおばあちゃん家に行こう⑪(葉月のお風呂編 )
俺はシャロンの残り香、ではなくシャロンの入れた入浴剤の風呂に入る。桜の花びらがあったと言われただけあって入浴剤も桜仕様、ピンク色で甘い香りがする。桜の花びらがないのは残念だ、清さんはああ言っていたがやはり桜の花びらがあるとお洒落かもしれない。
身体を洗った後バスタブの外を見る。珍しくみかんがいないり。いや、いるはずがないか。ていうか親の前で年頃の兄妹が一緒の風呂に入りに行くとかおかしいし何か言われかねないからな。だが妙に寂しい、これが妹のいない寂しさというやつか。
しばらく湯船に浸かって身体も暖まったので風呂を出て着替える。
リビングに入るとすももさんに騒がれた。
「あー!葉月くんてそういうパジャマ着るんだー」
「なんですか、俺がこういう服着ちゃ悪いって言うんですか」
好奇な声に俺は嫌悪するように言った。
「そんなことないよー、お洒落で可愛いて言ったのー」
すももさんが踊るように言う。
「ただのパジャマですよ?」
俺はなに言ってるんだという風に両手を広げた。
「でも可愛いよー」
可愛いを連呼するすももさん。
「はい、とっても似合ってます」
シャロンも言う。
「ふふ、素朴な装いもいいものよ」
清さんが軽く微笑みながら言う。俺は愛想笑いで返す。
「しまむ〇で買った安物だけどね。因みにあたしのもしまむ 〇製よ」
みかんが言う。
「嘘でしょ、あんたの服…………あんなにセンスあるのにパジャマはしまむ〇だなんて………」
アリエが絶望したように言う。あのアリエでも流石にあの有名なファッションショップは知ってるか。
「メリハリよ、メリハリ。人間いつも肩張ってると疲れるじゃない」
みかんが軽く手を前後させながら言う。
「そういうもんなの?」
「そういうものよ」
時計を見るとそろそろ11時になろうとしていた。道理で眠いわけだ。
「そろそろ寝るか」
「大丈夫!布団ならもう敷いたよ!」
すももさんが言う。
「え、マジすか」
俺は瞬きした。
「お前が風呂入ってる間あたし達がやった」
りんごが説明する。
「わりいな、客なのにそんなことさせて」
「なに言ってるのよ。お世話になってるお家の手伝いをするくらい当然じゃない」
清さんが慈愛に満ちた笑みで言う。
「一宿一飯の恩義です」
「お、おう」
流石日本好きのシャロン、フランス人の口からそんな言葉が出ては驚いたがこいつなら当たり前だな。
「ふ、あたしも頑張ったのよ。あたしの家はベッドだから布団なんて普段広げないから苦労したんだから」
アリエがふんぞり返って言う。そんな可愛い自慢に思わずフッと笑みが零れてしまう。
「そっか、お前も頑張ったな」
俺はアリエの頭を撫でた。
「べ、別に褒めて欲しいわけじゃないし」
アリエが顔を赤くする。顔がにやけていて嬉しいのが丸わかりだ。
「ハッ、彼氏の父方の実家に行ってまで惚気けてんじゃないわよ」
みかんが蔑むように言った。
「なに、あんたあたしの妹に嫉妬してるの?」
アリアさんが言う。
「してないわよ、兄の恋人に嫉妬なんてありえません」
心底心外だというようにみかんが反論する。
「なんだ、お前も撫でて欲しいのか?」
俺はみかんの頭に手をやる。
「お兄ちゃんもそんなことしなくてもいんだけどなー」
今回もお読みいただきありがとうございます。ブックマークや評価、感想お願いします。次は海の話やります