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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
十一章 みんなでおばあちゃん家に行こう
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九十一話 みんなでおばあちゃん家に行こう⑤(料理編)



「そろそろ晩御飯作らないとねぇ」


ばあちゃんが言った。


「あ、手伝うよ」


「あたしも」


俺とみかんは手伝いを名乗り出た。


「いーつも助かるねえ」


「晩御飯?わたしも手伝います!」


「わたしにもやらせてくださいな」


「一宿一飯の恩義、やってやろうじゃない!」


するとすももさん達も手伝いを名乗り出た。


「おやおやみんな元気で助かるねえ。でもまな板もフライパンも三つしかないんだよー」


ばあちゃんが困ったように言う。


「なんでまな板が三つもあるんですか?」


すももさんが聞いた。


「いやだってえ、まな板がたくさんあった方が葉月とみかんが手伝えるだろ?」


「へー、二人のことを考えてるんですね」


「そりゃあばあちゃんだからの」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



台所に行きみんなで分担しながら食材を切る。包丁は四つあったので俺とみかんが一つのまな板を使うことにした。かぼちゃを切ろうとした時、アリエが手を上げた。


「それあたしやれる、やるわ!」


「ええ、かぼちゃて硬いぞ。大丈夫か?」


俺は不安になった。


「大丈夫よ、あたしを誰だと思ってる?星宝アリエよ!かぼちゃくらい切れるわよ!」


アリエは自信満々に言う。それが不安なんだがな。


「とりあえず、やってみるか?」


「任せなさい!」


「いいの?」


みかんが聞いてきた。


「まあ、やってみて駄目なら変わってもらうだけだよ」


俺は軽く答える。


アリエが包丁を取りかぼちゃに刃を入れようとする。


「あれ、入らない………」


案の定苦戦していた。包丁の先端部分をかぼちゃに触れてるせいでパワーが入らないんだ。


「貸してみぃ」


俺はアリエから包丁を奪い腹部分をかぼちゃに触れ、上からぐっと押した。するとサクッと刃が入り真っ二つに割れた。


「すごい葉月!あんな硬いかぼちゃが一瞬で切れちゃった!」


アリエが驚く。


「これくらい当たり前だって。てかお前………かぼちゃ切ったことないのかよ」


アリエは実家のメイドカフェの手伝いもしてるから料理はある程度してると思うが………。それとも接客しかしないのか?


「かぼちゃはまだないわ」



すももさんはナスを横に切っている。スッ、スッと華麗に包丁が入っていく。すももさんはカフェダムールで普段から料理してるからこれくらい普通か。


清さんはサツマイモをサクッ、サクッと切っていく。


「慣れてる感じね、普段から料理とかやるのかしら?」


アリアさんが清さんに聞く。


「家の手伝いでよくやるわ」


「これだから貧乏人は、わたしの家はメイドがぜーんぶやってくれるのに」


アリアさんが見下すように言った。


「あら、ということは家族の人はお料理はほとんどしないのかしら?」


見下されたのにも関わらず清さんが柔和な笑顔で言う。いや、心無しか背景にゴゴゴゴ…………と黒いオーラが見える。


「そうそう、わたしくらいになるとみんな料理なんて自分でやらなくていいのよー」


アリアが手を振って言う。


「でも、アリエちゃんは少し出来るのにあなた達は少しも出来ないのね」


「ええ、必要ないからね」


今度はアリアさんの口の端がひくついた。



「わちゃわちゃー」


すももさんが切り終わったナスにパン粉をまぶしていく。


「姉貴、ちょっとパン粉つけすぎじゃないか?」


りんごがすももさんに不安げに言う。


「いいじゃん派手なんだしー」


「ちょっとやり過ぎかのー」


ばあちゃんがすももさんのつけた食材からパン粉を少し落としていく。そして熱せられたフライパンに入った油に突っ込む。ジュワー、パチパチと油が音を立てる。


「どきなさい、あんたはちょっと雑なのよ」


アリエがすももさんをどかしてナスにパン粉をつける。そろーそろーと少しずつつけていく。これは逆に慎重過ぎるな。


「これじゃあちょっと足らんねえ」


ばあちゃんはアリエのナスを取ると今度はドバっとパン粉をつけて余剰分を落とした。


「えぇ………」


自分の作業を否定されてアリエががっかりする。


「どんまい」


すももさんがアリエの肩に手を置こうとしてパン粉がついてることに気づいて甲の方で置いた。



「このお皿もういっぱいだからあっち持ってってちょうだい」


「はーい、わたしやりまーす」


すももさんが一番に名乗り出て揚げ物の乗った皿を持っていく。


「あ、そっちじゃないよ、向こうの部屋に持ってってちょうだい」


すももさんが台所の向かいにあるリビングの方に皿に運ぼうとしたのをばあちゃんが止める。


「向こう?」


「向こうに仏壇ある部屋あるじゃろ?あそこに持ってってくれ」


「はーい」


ばあちゃんに説明してもらってすももさんが指定の部屋に向かう。



その後は俺やみかん、アリエ達も皿を運んでいく。いつもならリビングで食べてるけどリビングだとこの人数分の皿を並べるのは難しいからな、広さのある仏壇の部屋に皿を運んだんだ。


『いっただきまーす!』


皿を並べ終わった俺はみんなと手を合わせた。海老の天ぷらを取り口に入れる。揚げ物特有の油っこい感じがしたがこれこそが天ぷらの醍醐味と言える。衣を砕くと中からプリップリの身が現れた。サクサクに揚げられた衣からのプリプリの身、昔から好きなんだよねこれ。


俺は二つ目の海老に箸を伸ばす、みかんも同じようにした。だがその二本の箸はアリエとアリアさんに止められた。


「お前、なにすんだよ」


「そうよ、あたしが食べれないじゃない」


俺とみかんが文句を言った。


「あんた達はもう食べたじゃない」


「人数分しか揚げてないんだから余計に食べないでよ」


「海老食いてえんだよ、どけろよ」


「駄目よ、あんた達でもそれは認められないわ」


アリエが頑なに拒否する。ギチギチと箸がぶつかる。


「こうなったら………」


俺は左手を伸ばして海老を掴んだ。


「あ!」


アリエが声を上げるのも構わず俺は海老を口に入れた。サクサクプリプリ、うん、美味い。


「あたしも!」


みかんが同様に海老を手で掴む。


「く、やられた………」


アリアさんが海老を取られて悔しがる。


「だらしないからやめなさいよー」


母さんが諌めてくる。


「いいじゃん別にぃ」


「食べ方なんて人それぞれでしょ」


俺達は母さんの小言など気にしない。


「ほんと子供ねえ」


すももさんが馬鹿にするように言う。


「すももさんには言われたくありませんよ」


すももさんのいつもの振る舞いのが子供っぽいことがよくあった。すももさんがペロっと舌を出した。


「意外ねえ、すももちゃんなら海老くらいもっと食べてもいいのに」


清さんが首を傾げる。


「ごめん、あたしサツマイモ派なんだ」


『あー!』


俺達は声を上げた。すももさんの取り皿にはサツマイモが大量に乗っていた。俺とみかんがアリエやアリアさんと争ってる間に集めたのか。


「はむっ、あむあむ………おいしい!」


すももさんがサツマイモを口に入れて幸せそうな顔をする。


「はっ、やらせるか!」


俺はすももさんの取り皿のサツマイモに手を伸ばす。


「あたしだって!」


「独り占めは許さないわ!」


みかんやアリエ、アリアさんもすももさんの取り皿に手を伸ばす。


「あれ、お前らはいいのかよ」


りんごとシャロン、清さんは黙々とかき揚げやきくらげなど他の天ぷらを食べていた。


「だってこういうのなんか面倒臭いし」


りんごが嫌そうな顔で言う。。争いが苦手なのか。


「天ぷらはどれもおいしいですから」


シャロンが笑顔で言った。天使かこいつは、心無しかパァーと後光が指してる感じだぞ。


「好き嫌いは、よくないわね。色んな天ぷらを満遍なく食べなきゃ」


清さんが女神のように微笑んで言った。その言葉に俺だけでなくみかんやすももさん達まで固まった。


「すいませんでしたー!海老やサツマイモだけじゃなく他の天ぷらも食べるんで許してください!」


「ごめんなさい!あたしが悪かったの!」


「清ちゃん………独り占めしてごめんね……」


「ごめんなさいごめんなさい」


俺達は思わず平謝りした。


「くっ、参ったわ。この女、一味違う」


アリアさんだけがなぜか歯ぎしりして悔しがった。


「みんな気にしなくていいよ、足んなくなったらまた作ってくるから」


『ほんと!?』


ばあちゃんの言葉に俺達はまた闘志が燃えた。戦争の火蓋がまた切って落とされることになるだろう。

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