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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
十一章 みんなでおばあちゃん家に行こう
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九十話 みんなでおばあちゃん家に行こう④(スイカ編)



スイカに軽く塩を振ってかじる。シャリ、という音と共にほのかな甘みが広がった。


「ねえ、前から気になってたんだけどなんでスイカに塩を振ると甘くなるのかしら」


みかんが首を傾げる。


「そういえばそうだな………」


「なんでだろうな」


「あ、分かった!」


すももさんが人差し指を立てる。


「どういうことかしら?」


「塩ってさ、辛いよね?」


「そう、ですね」


「それがどうしたのよ」


「辛いから逆に甘くなった、てのはどうかな?」


知識ではなく推測だからか疑問形で台詞を締めるすももさん。


「意味分かんないんだけど、なんで辛いもの入れたのに逆に甘くなってんのよ。おかしいじゃない、辛いもの入れたら普通辛くなるんじゃないの?」


アリエが反対する。


「それは………分かんない」


あまりに素直な返事にずっこけた、やはり分からないのか。


みんなが苦笑いする中清さんは何か含みのある笑みを浮かべていた。


「清さん、もしかして何か知ってます?」


「うーん、でも葉月くんのお祖母さんのが色々知ってるんじゃないかしら?ほら、お祖母ちゃんの知恵袋てよく言うでしょ?」


清さんが柔和に微笑む。いつもと違って何か掴みどころがない感じだ。


「あらまー、よくそんな言葉知ってるねぇ」


ばあちゃんが思わず歓喜の声を上げる。


「色々勉強しておりますから」


「さっき辛いから逆に甘くなったって言ってたろ?」


「うん」


ばあちゃんがすももさんに確認する。


「実はそれ、正解なんじゃよー」


「ええ?」


すももさんは当てずっぽう気味の答えが正解だと言われて驚いた。


「スイカはな、実は元々ちょっとだけ甘いんじゃ」


「ええ?」


ここでええ?と言ったのは俺だ、てっきりスイカというのは塩を振らないと甘くならないと思っていたが違うのか。


「でも普通に食べただけじゃシャリって音や水分にかき消されて甘いて感覚も薄れるんじゃよ。そこで、塩じゃ。スイカは甘い、そこに辛い塩がちょっと乗ると甘い部分が引き立つのじゃよ。対比というやつじゃ」


「ほー」


これには素直に関心してしまう。


「さっすがおばあちゃん!そんなことも知ってるんだね!」


みかんも関心を大声に出す。


「はっはっは!わしは物知りじゃからの」


ばあちゃんも思わず大笑いだ。


「へー、対比かー。じゃあ辛いやつに砂糖入れたら辛くなるのか?」


りんごが言う。


「かもしれんの」


「では今度、麻婆豆腐が出た時にやってみましょう」


「おお、いいな」


シャロンの言葉にりんごが乗った。


シャリシャリ、そろそろ口の中にスイカの種が溜まってきたな。舌を動かしてぷっと種を外に出した。みかんも同様にやる。


「ちょっとなにやってるのよー、汚いじゃないー」


するとすももさんが嫌悪感を出した。


「汚いて、スイカて元からこういうものですよ」


「スイカの種は飛ばすもの」


「いや、でも………」


すももさんが躊躇ってるとりんごがぷっと種を吐き出した。


「お、これいいな」


「ちょっとりんごまでー、やめてよきたなーい」


「面白そうね、あたしもやってみようかしら」


「あたしも」


すももさんが注意するが今度はアリエとアリアさんがやった。


「ちょっと二人までー?!お金持ちだからもう少し真面目だと思ってたのに……」


「金持ちは関係ないんじゃないかしら?」


「葉月がやって面白そうだったんだからあたしだってやってもいいじゃない」


すももさんの嫌悪感に二人が反論する。


すると今度はシャロンがぷっぷっぷっと連続で種を発射した。


『おー』


思わず俺達は賛美の拍手を送った。後ろですももさんが汚いから、あれ汚いからとか言ってるが気にしないことにした。


「これが日本の文化というやつですね」


シャロンが微笑むと俺は思わずサムズアップをした。


ププププププ!今度はかなり短い間隔で大量の種が飛んだ。な、これは………。


「タネマシンガン?!」


間違いない、これはタネマシンガンと言っても過言ではないくらいの速さと量だ。やったのは清さんだ。


「タネマシンガンなんて懐かしいわね、ポケモンの技みたい」


清さんが頬に手を当て微笑む。


「すごい!師匠と呼ばせてください!」


みかんが清さんに言う。


「あ、俺も俺も!」


「あたしも!」


「わたしもお願いします!」


「あたしにも教えて!」


「わたしもちょっとやってみたいわね」


すももさん以外のみんなも清さんに弟子入りを志願する。


「あらまー、困ったわねぇ」


清さんは首を傾げるが言葉の割にちょっと嬉しそうだ。


「えっと………清、ちゃん?」


すももさんが今まで一番の嫌悪感を出した。


「あらどうしたのかしらすももちゃん。まるでお化けでも見たみたいじゃない」


清さんが微笑む。


「いやだって、清ちゃんはそういう下品なことには一番しないと思ってたのに………」


「もしかしてわたしのこと、虫も殺さないいい子と思ってたかしら?」


清さんが怪しい笑みを浮かべる。なんというか、ゾッとした。前から人にまとわりつく時は蛇みたいなイメージだったけどこれは完全に獲物を捕食する前の蛇の笑みだ。


「そうじゃ、ないけど………」


すももさんは迷うような顔を見せる。


「わたしだってこういう子供っぽいこととかするのよ。ねこまんまも学校のクラスメイトがやったのを見て昔やってたわ、お母様に怒られてやめちゃったけど」


清さんの言葉にはいつにない人間臭さを覚えた。いつもは猫を被ってるけどたまにみんなと一緒にふざけてみたいて感じかな。


「でもやっぱ汚い」


「あらそう………」


清さんの内面は容赦なく叩き落とされた。


スイカを食べ終えると俺とみかんは庭に出てスイカの種を回収しに行く。


「なにやってんの?」


すももさんが聞いてくる。


「なにって後片付けですよ。子供の時おもちゃ散らかしたら片付けなさいてお母さんに言われませんでした?」


「そういうこと、偉いね」


子供からしたら偉いが年を取って言われてもあんま嬉しくないな。


「あたしもやるわ」


「あたしも」


アリエやアリアさん、りんご達も種の回収に出てきた。


「これをと……」


俺とみかんは花壇の方に向かう。


「どうするの?」


「ふ、どうすると思う?」


みかんがもったいぶる。


「ねえ、もしかしてこれ植えようとしてる?」


アリエが種を見ながら言う。


「えーでもこれ………」


どうせ芽なんて出ないだろうと思ってる顔のすももさん。


「そういう問題じゃないんですよ、ある種のロマンなんですよこれは」


俺はすももさんに力説した。


「はあ…………」


すももさんは分かっていなかったがみんなでスイカの種を花壇の土の中に埋めた。

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