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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
十章 夏編
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八十三話 夏だし、プールに行かないか?③

僕とカフェダムールの喫茶店生活83


目的のプールに移動した。


「で、お前プールの中には入れるのか?」


「入れるわよ!馬鹿にしないでよ」


アリエは怒って言うと冷たっと言いながらプールに入っていく。そうそう、プールって最初が面倒なんだよなー。まあ、慣れれば大丈夫だけど。


「で、潜れる?中で息止められる?」


「出来るし!見てなさいよ!」


アリエはそう言うと身体を水の中に沈めた。


「おー」


あまり深くないプールでの潜水など大抵のやつは出来て当たり前だが目の前で見せられると思わず拍手してしまう。


「え?」


いきなり手を引っ張られた。身体は水に沈み、息が出来なくなる。


「がぼ、がぼぼぼぼ」


息が漏れて変な音が出た、口の中に水も入って気持ち悪い。俺は慌てて水上に出た。


「ぷはあっ!はあ、はあ…………おま、お前なにしてんだよ!溺れるかと思ったぞ!」


俺は息を切らしてアリエに怒った。


「いいじゃない、生きてるんだしー」


アリエはいたずらっ子のように笑った。こいつにはあまりない顔だ。


「こいつめぇ………」


珍しい顔を見たせいか対抗心に燃えてきた、なにか仕返ししてやろうか。


「ふん!」


「あっ」


俺はアリエを押し倒し、自分ごとプールの水に沈めた。仕返しするならこれくらいやらないとなぁ。て、こいつ沈められたのに水中で笑ってやがる………。こいつめぇ………。俺はアリエに自分の頬をこすりつけた。水中で頬をこすりつけるというレアな体験に俺は興奮して胸が高まった。


するとアリエの笑顔がにこやかなものからなにか企んでそうなものに変わった。なにをする気なんだ?分からないでいるとアリエの手が俺の腹に伸びた。


「う、がぼぼぼぼ!」


ひたすらくすぐられて笑った衝撃で口が開いた。口が開けば当然水が入って息が出来なくなる。


「ケホッ、ケホッ!なにしてんだお前、くすぐったいだろ!」


俺はまたむせて怒る羽目になった。


「いいじゃない、楽しいんだし」


満面の笑みのアリエ。全く悪いとも思ってない顔だ。


「お前しか楽しくねえよ、俺はさっきから水入って辛いんだけど」


「なによ、不満だっていうの?」


「不満っていうかさっきから水が入って身体がもたない」


「そう、なら仕方ないわね………」


すごいがっかりようだ、だがこれ以上変な真似されると俺の身体がおかしくなるので仕方ない。彼女のこういう顔はあまり見たくないがやむを得ない。


「あたしのせいで葉月が倒れたら仕方ないものね」


「お、おう……」


アリエに優しく微笑まれて俺は少し戸惑った。こいつ、こういう顔もするんだな。


「さあ、泳ぐ練習をしましょ。次はなにするの?」


「ああ、バタ足でもやるか」


「バタ足?」


「クロールとか平泳ぎじゃなくてビート板持ったり手すりに掴まったりして泳ぐやつだよ」


「ごめん、流石にこれ以上は………」


アリエは不安そうになる。


「大丈夫だって、俺が支えてやっから」


俺はアリエに手を差し出した。


「うん」


アリエが俺の手を取る。


「お、上手い上手い」


アリエは意外と上達が早く、少し泳いだだけで大分動きがよくなって行った。


ザバッとアリエが顔を水から浮かす。


「当然でしょ、これくらいのことすぐ出来るようになるに決まってるじゃない」


アリエは腰に手を当てふんぞり返る。彼女のとっては当たり前の動作だがそれすら可愛く思えてしまう。


「なによ?なんか変?」


俺が変なところで笑ったと思われたらしい。


「別に、やっぱお前………可愛いなって」


言うのもむずがゆいがつい言いたくなったのだ。


「なによ急に、変なこと言わないでよ」


アリエが顔を赤くしてもじもじした。


「いや、思っただけで別に変なことってわけじゃ………」


「馬鹿………」


アリエが恥ずかしさに俺に抱きついてきた。俺はその細い身体を抱きしめる。アリエの体温が伝わってきた。冷たい水のついた今は彼女の低めの体温でも温かく感じた。



次はクロールの練習だが流石にこれには苦戦して時間がかかった。とはいえ負けず嫌いだからか上達するまでかなりの時間諦めずにやっていた。


「ふう、こんなものかしら。次は平泳ぎの練習にしましょ」


「まだやるのかよ、そろそろ休まね?つうか腹減った」


俺はバイタリティ溢れるアリエに呆れながら言った。


「はあ?あんた水の中にいただけでしょ?ずっと泳いでたあたしはともかく、なんであんたが………」


アリエが言葉を止めて顔を赤くした。彼女の腹の虫が鳴ったのだ。アリエは自分の身体から出た音が恥ずかしく、腹部を抑えた。


「じゃ、飯でもするか」


「うん」


俺達は昼食を買うため更衣室のロッカーに財布を取りに行こうとしたのだが…………。


「葉月?」


アリエが俺の首の動きに首を傾げる。


「いや、視線を感じてな」


「視線………」


「バスに乗る時にもあったんだが誰もいなかったから気のせいだと思ったけど、また出たから何かありそうな気がして…………」

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