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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
十章 夏編
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八十二話 夏だし、プールに行かないか?②



翌日、俺はアリエとバス停で待ち合わせをした。プール施設は遊園地と違いバスで行ける範囲にある。


「待たせたわね」


アリエが現れて言った。


「待ってねえよ、今回はそんな待ってない」


「あ、そう……」


遊園地の時は俺の様子を伺うような視線があったが今回は水着を買いに行ったのも入れて三回目だからかそんなものはなかった。


「今日も、その格好なんだな」


アリエの服装は遊園地の時と同じロングベストと短パンだった。


「なによ、悪い?」


「別に、可愛いからいいけど?」


妹の選んだ服だからな、とは今度は言わなかった。


「あ、そう………。別に、みかんの選んだ服だからじゃないわよね?」


アリエは顔を赤くしたが念を押すように言ってきた。


「お、おう……」


本当は思ってはいたがそれを指摘しても黙っていることにした。


「ならいいけど………」


「待ち合わせは、もう少し先なんだがな」


俺は腕時計を見ながら言った。


「そういうあんたこそちょっと早いんじゃない?」


その問いに俺は肩をすくめる。張り切ってるのはお互い同じだな。


!?俺は何か気配を感じて横を振り向いた。見えるのは曲がり角のコンクリート塀、建物だけだ。


「どうしたのよ?」


アリエが俺の動きを不振がる。


「いや、気のせい………かな」


「あ、そう」


バスが来て席に座る、俺は少しして乗ってきた客が気になった。そいつらは夏の真っ盛りだというのにトレンチコートを纏っており、サングラスまでかけていたのだ。片方は長い髪だから女性か、もう片方も男にしては長いからやっぱり女性か。怪しい、あからさまに怪しい二人組だ。明らかというよりあからさまだ、自分達が怪しい人間だと主張してるみたいだ。


「ねえ葉月………、変なやついない?」


アリエもそいつらに気づいたのか俺に言った。


「ああ、なんだろうな……」


このバスは親切にも、プール前に着くようになっている。そのバス停に到着した。着替えをするためにアリエとは一旦別れる。


「よっ、やっぱ似合ってるなそれ」


俺は合流先でアリエに言った。やはり黄色いワンピースの水着はこいつには映える。


「分かってるわよ、昨日も言ってたし……」


アリエはこう言うが心無しか嬉しそうだ。


「じゃ、流れるプールでも行くか」


俺はアリエの手を取る。


「いや、そのことなんだけど………」


アリエは顔を逸らして言いづらそうにする。


「あたし………金づち、なのよね」


「うそ………」


俺はそれからしばらく言葉を失った。


「えっと、そういう話………全然聞いてないんだけど………」


俺は恐る恐る手を上げて言った。


「だって、恥ずかしくて………言えなかったんだもん」


アリエは本当に恥ずかしそうに顔を赤くして言った。さて、どうするか………うーむ……。あ…………。


「てかさあ、流れるプールなんだし、泳ぐ必要なくね?」


「それは嫌よ、この星宝アリエが金づちのままとかありえないし」


「ありえないって………学校でプールの授業とかないのかかよ」


プールの授業があるならそこで多少の泳ぎ方、クロールやバタ足くらい習ってるはずだ。


「ないわよ、ないわけじゃないけど選択制でプールの授業選んでないからやってないわ」


「金づちだからか?」


その問いにアリエはコクリと頷いた。


俺は彼女の口振りから奥にある要求を汲み取る。


「で、金づちなのは嫌だからこの際練習したいと」


「うん」


「分かったよ、流れない方で練習でもするか」


彼女の頼みだ、聞かないわけには行かないだろう。


「ありがと。あ、と、特別に感謝してあげなくもないんだからね!」


パアッとアリエの顔が輝いた後無理矢理取り繕うように腕を組んでふんぞり返って来た。ふ、可愛いやつめ。



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