表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
九章 坂原北高校文化祭
79/594

七十八話 山崎、飯山、田中の来店

今回は文化祭回で出たあのキャラの再登場です


「こんにちはー」


「この紋所が目に、入らぬかー!」


動画を投稿したのとは別の日、山崎と飯山が店に現れる。山崎が普通に飯山が印籠を見せる動作で来た。山崎が割と普通なミーハー女子で飯山が金髪ギャルという一見合わなそうな組み合わせだが波長が合うのか学校でも同じクラスでよく一緒にいる。


「いらっしゃ………てお前ら………」


声でまさかと思ったが振り返ってみて出迎えた二人が二人だと分かって驚いた。


「お前ら、来てたのか」


「ヤマザキ、イイヤマ、いらっしゃい」


りんごも二人の来店に驚き、シャロンは笑顔で出迎えた。


「ちょっとなによー、わたし達が来ちゃ駄目なわけー?」


山崎が俺とりんごの反応に不満を示す。


「いや、お前らこの店に来たことあったっけ」


「見たよー見たよー、あの動画。この紋所がーとか、みんな土下座してるのがよくわかんないけどいんじゃないのー?ちょーベリーグットて感じぃ?」


飯山がテンションあげあげで言った。ちょっと早口でなに言ってるのか分からない。


「ちょっと二人ともー、置いてかないでよー」


ドタドタ!と大きな音を立てながら新たな客が現れる。田中だ、新井より変態指数が強めの野郎、田中くんだ!


「なんでお前まで………」


今まで店に一歩も現れなかったやつらがなんで三人も………。


「ちょっとー、ついて来ないでって言ったでしょー」


「ほんとキモい、こっち来んなし」


山崎と飯山のダブル拒否、容赦ないな女子二人。


「いいんですか?クラスメイトにそんなこと言って」


シャロンが田中を心配する。


「シャロンちゃーん!」


「は、はい………」


田中に泣きながら腕を掴まれ、シャロンが戸惑う。


「俺の見方はシャロンちゃんだけだよー…………」


「そ、そうですか…………」


涙ながら語る田中にシャロンは引いている。なぜなら田中は気持ち悪い、顔が気持ち悪い、表情が気持ち悪い。泣いてる今も泣きながらシャロンの胸を見ながら興奮してるんだ。やつはそういう顔になる、だから気持ち悪いんだ。


「お前らこいつどうにかしろよ、シャロンが困ってるぞ」


このままにするのは釈なのでシャロンに助け舟を出す。


「いやだってこいつ………」


「うん………」


二人は顔を見合わせるがはっきりと言わない。


「なんだよ」


「お尻、見てくるし………」


「ていうかぁ、尻触ってくるしぃ」


二人のその言葉で店にいる他のやつら含め顔に縦線が入った。なんというか、空気が重い、ガチの変態じゃないかこいつ………。新井みたいに美女に目がないとか胸をガン見するとかじゃない、完全なセクハラじゃないか。


「お祖母ちゃん、こいつどうする?変態さんだよ」


すももさんが絹江さんに言う。すももさんがこいつなんて言葉で人に対して使うことはない、完全なセクハラをする田中に対しては人間としてのレベルが低いと判断したらしい。


「うむ、お主、ババアに興味あるか?」


絹江さんが田中に言う。


「えっと、お、おばあさんはちょっと………シワが多すぎる気がしますし………」


流石に興味ないらしい。シワが多すぎるのとこで客のばあさん方の顔がピクっとなったのは気のせいだろうか。


「ふむ、コーヒーは欲しいかい?」


「は、はい、是非!」


コーヒーには食いつきが良かった、二つ返事である。まあ喫茶店だし、結局はコーヒー飲んでなんぼだな。


「ふ、合格じゃ、座るが良い」


絹江さんがバトル漫画の師匠みたいな雰囲気で言った。いや、なにか裏に企みがありそうな気がするのは気のせいか。


「ははー!」


そうとは知らず、田中がカウンターに座る。


「ふふふ………、お前達、手出しにはいらぬぞ、この客にはわし自らコーヒーを進呈してしんぜよう、ふふ………」


「は、はあ………」


気のせいじゃなかった。絹江さんは絶対何か企んでる、企んでるよ。無意識なのかわざとか分からないが怪しい笑みがさっきから零れっぱなしだ。


「な、なあ………ばあちゃん絶対田中のコーヒーに何か入れるよな、絶対入れるよな?」


りんごが小声で念を押してくる。どうやら彼女も絹江さんのただならぬオーラに気づいたらしい。


「あ、ああ。なにかは企んでそうだな……」


ああ、恐ろしい、彼がどうなるかを想像するのが俺達には恐ろしい。


「え、てかこいつ入れんのぉ?マジ嫌なんだけどぉ」


「ちょっとわたし遠慮したいなぁ」


やばい、田中がコーヒーを飲むことになったせいで飯山と山崎が帰ろうとしてる。


「ちょっとどうすんですか絹江さん!せっかくの客が逃げちゃいますよ!」


俺は慌てて言う。


「それは残念じゃのう、残念じゃが……まあいいか」


残念と言いつつきっぱり諦める絹江さん。


「いいのかよばあちゃん!帰るぞこの二人!本気で帰っちゃうぞ!」


りんごが絹江さんを必死に説得する。


「いんじゃなかろうか」


深くは考えない絹江さん。


「いやいや駄目だろ!何考えてんだよ!客逃げたら儲け減るだろ!いいのかよ本当に!」


だが食い下がらないりんご、すごい必死だ。


「むむ、それは困る、困るの。そこの二人、店の儲けのためにも一杯飲んでってくれんかのう」


「反応するとこそこなの?」


「いや、ええ………?」


絹江さんが頼むが駄目だ、二人は田中を見て引いている。そこまでこいつが嫌か。


「頼むよ二人ともー、一杯でいいから飲んでってくれよー」


「せっかくだから、ね?」


「あたしからも頼む、な!」


俺はすももさんやりんごと共に山崎と飯山に頼み込む。


「うーん………」


「なんかなぁ………」


山崎は首を傾げ、飯山は髪をいじるだけで俺達の頼みに応じてくれそうにない。


「カフェダムールの一杯はいらした方に癒しを提供します、不安なんてありません。さあ、わたし達と共にコーヒーの安らぎへと参りましょう」


シャロンが手を重ねて神様の言葉を述べるように二人に言った。なんだこの感覚は、俺は目をこすった。シャロンの周りに銀色の粒子がキラキラと舞っている、どっから持ってきたんだあの輝きは、あいつにあんな才能があったのか。


「しゃ、シャロンちゃん………」


山崎が彼女に見とれる。やはり彼女の魅力は山崎にも効いたか。


「ま、まあそこまで言うんならいんじゃね………」


飯山が頬を染めながら承諾する、やったぜ。


「おっと、お前さんのコーヒーが出来たぞい」


絹江さんが田中にコーヒーを出す。


「お、これがここの………いっただきまーす!」


田中がいやらしい笑みを浮かべつつ手を擦り合わせる。そしてコーヒーを口に含む、そして…………。


「ぶるうあああああ!」


某若本みたいな悲鳴を上げた。ケホッケホッ!と咳き込む。


「どうした田中、なに変な悲鳴上げてんだよ」


「ばあさん、これ苦いっす、飲めたもんじゃないっす」


田中が顔をしかめながら言う。


「いや、ここのブレンド苦めだから苦手なやつは最初そうなるだけで砂糖とミルク入れれば………」


「そうじゃねえ、そうじゃねえんだ!なんつうか、この世の闇という闇を集めたような………」


田中の顔つきはまともじゃない。いや、いつもまともではないがそれとは別の異質さがあった。


「なにそれ?」


「そんなのあるわけないっしょぉ」


山崎と飯山も首を傾げる。そして飯山が田中のコーヒーカップに手を伸ばす。


「おいそれ………」


俺は止めようとしたが既に飯山の口にコーヒーカップは触れていた。間接キスだなこれは。


「ゲホッゲホッ!なんだしこれー、きもいんだけどー」


飯山もむせて変な顔になる。


「絹江さん、これなんです?明らかに普通じゃないでしょ」


「ああ、これかの?これはコーヒー豆の中でも苦い種類の苦い部分だけ回収して作った激苦コーヒーじゃよ。どうじゃ、びっくりしたじゃろ?」


絹江さんがいたずら小僧のようににひひと笑う。こういう顔を見るとすももさんの血筋なんだなと感じる。


「とんだばあさんだなこの人ー、お前らいつもこんなの出してんのかよ」


田中がドン引きして言う。


「ま、これに懲りたら女の子の尻を触るなんて下品な真似なんてするんじゃないぞ」


絹江さんが諌めるように言う。


「お、おう………」


真顔になる田中。今のは大分効いたらしい、あの変態の田中が珍しくまともに見える。証明写真もこういう顔で写るんじゃないか?


「じゃ、じゃあわたしは………」


田中が食らった激苦コーヒーのせいで山崎がためらい気味に口を開く。


「ブレンド、アメリカン、キリマンジャロ、コロンビアとかとかあるぞ」


俺は指を一本ずつ上げながら勧める。


「うーん、なんかコーヒーはいいかな………なんか他のない?」


「あ、あたしも………」


二人とも完全にコーヒーから脱線していた。く、絹江さんがやりすぎたせいだな、仕方ない。


「じゃあ、紅茶でも飲む?」


すももさんが提案した。


「じゃあそれで………」


「しくよろー……」


二人とも完全に乗り気じゃなくなってる。


「あ、俺コーヒーはこれでいんだけど牛乳入れてくんね?」


田中が言う。


田中に牛乳と砂糖を足したコーヒーを差し出す。


「お、これ普通に飲めるな。ちょっと甘いけど」


田中がコーヒーを飲んで言う。


「すげえ苦いっつったから牛乳も砂糖を大量に足したんだよ」


「お、おう………」


しばらくして山崎と飯山に紅茶が出る。


「へえ、これが喫茶店の紅茶なんだ」


「臭いがチョベリバって感じよ、臭いだけでもやれんじゃねぇ?」


二人が紅茶の味と臭いに関心する。飯山は一部なに言ってんのか分からないが一応褒め言葉かもしれない。


「で、なんでお前らは急にうちに来たんだよ」


俺は田中達に聞いた。


「いやー、あの二人がYouTube見てたみたいで面白いもんが映ってたのよー。この紋所が目に入らぬかーて」


田中が印籠を出す動作をする。


「YouTubeに店のホームページもあったし、気になって来てみたんだよねー」


山崎が上を見ながら言う。


「よくわかんないけど面白そうだったしぃ」


飯山が楽しそうに髪をいじる。


『ねー?』


そして声を揃える、ほんと仲いいなこの二人。


「へえ、あの動画見て来てくれたんだ。ねえねえ、あの動画撮ったのわたしなんだよ?どうでしょ、すごいでしょ?」


すももさんが自分を指さして自慢する。すももさんにとっては自分の子供みたいなものだからな、自慢して当然だ。


「わー、すごーい!間宮さんのお姉さんが作ったんだー」


山崎が大袈裟に驚く。


「あ、だからあんたが映ってなかったんだな」


飯山が関心する。


「そういう、こと」


「その動画をネットに揚げたのがわしじゃ」


「あ、そうですか」


絹江さんが胸を張るがあまり驚かれない。まあネットに揚げただけだからな。


「そしてその黄門様役がわしじゃ!」


「助さんはわしじゃよ」


「格さんは、わしじゃ」


先日動画で黄門様御一行を演じたジジイ三人組が立ち上がった。


「あんたらがあの時の!」


飯山が興奮して立ち上がる。


「この紋所が目に入らぬかぁぁぁ!」


三人組の一人が紋所を出す動作をする。


「あ、タイムタイム」


飯山が手を上げる。


「これ気になったんだけどなんのやつなん?アニメ?漫画?」


その言葉で俺やすももさん達とジジイババア達の顔が凍った。こいつら、まさか知らずに来たのか。そうか、水戸黄門は見てないのか、見てないけど面白いから来てくれたのか、そうだったのかー。戦慄、だな。

今回もお読みいただきありがとうございます。ブックマークや評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ