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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
九章 坂原北高校文化祭
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六十四話




「ん?」


りんごが目を細めて向こうを見る。


「どうした?」


「いや、何かいたような………」


「何かってここ文化祭の会場なんだからこの学校の生徒も他の学校の生徒も生徒だらけに決まってるじゃない、他に何がいるってのよ」


アリエが言う。


「お嬢様、そのような口の聞き方はいけません。はしたないですよ」


彩原さんが言う。


「いいじゃない、ちゃんとしたとこじゃないんだしー」


ちゃんとしたというのはお金持ちの集まりか何かだろう。アリエも一応お嬢様だからそういう集まりに呼ばれることもあるのだろうな。普段じゃありえないくらいの派手な衣装着てそう。


「そうじゃなくて、知り合いがいそうな気がしたんだよ」


りんごがアリエに答える。


「知り合いねぇ………」


りんごの交友関係てそんな広かったか?て思ったがそういえば学校に来てからすももさんと絹江さんに会ってないことに気づいた。二人とも文化祭に来てるのだろう…………


「て、あれ絹江さんとすももさん?!」


俺は思わず声を上げた、まさか本当に来るとは思わなかったぞ。


「って、おいー!二人ともこっちにいるってことは店番するやつがいないってことだよ!どうなってんだうちの店ー!」


りんごが別の驚きに声を上げる。


「本当です、誰が店番をやっているのでしょう………」


シャロンも首を傾げる。


「おーい!」


すももさんがこっちに気づいて手を振ってくる。


「あーねーきー」


返事の代わりに唸りながらすももさんに向かっていくりんご。


「りんご?」


急にりんごが走りだしたので俺達も人込みの中をかいくぐりながら追いかける。


「姉貴の…………」


りんごが走りながら拳を固めて腰に添える。


「やっほーりんご、お姉ちゃん来ちゃ…………」


「がっはー!?」


拳がすももさんにクリーンヒットして上空に吹っ飛んだ。


「綺麗に飛んだなー」


手を頭の横に添えて見上げる。


「流石にやりすぎじゃないかしら」


「ワイルドですね」


アリエとシャロンが言う。


「いや、こええよ間宮」


飯山が言う。


「あわわわ…………」


田中は口に手を入れて怯えている。


まあ初めて見るやつはこうなるな。俺達もこれは流石に初めて見るけどな。りんごとすももさんのことはよく知ってるからあまり驚かないだけで正直心の中だと割と驚いてる。


ドン!とコンクリートの地面に落ちるすももさん、普通なら骨折とかしてそうな勢いだ。


「なに来てんだよ!姉貴まで来たら店開けたら店番するやつが誰もいなくなるだろうが!」


りんごがすももさんの襟を掴んでガックンガックン揺らす。


「いやー、でも大丈夫だよ」


高いところから落ちたのに平然と自分の後ろを指さすすももさん。


「あなた方は!」


そこにいたのは意外というかまあ違和感はないが人数が多すぎて違和感バリバリの方々だった。


「うちの常連の」


りんごが言う。そう、そこにいたのはカフェダムールの常連の人達だった。やはりと言うべきか、ほとんどが老人の方々だったが。


つまり客はほぼ全員来てるから店の心配はいらないと言いたいらしい。本当にこれで全員なのか気になるが。


「でも、どうして常連の方々が?」


シャロンが首を傾げる。


「今日あんたらの学校の文化祭があるって言ったらみんな行ってみたいて言い出してねぇ、こうしてみんなで来たってわけさ」


絹江さんが言う。


「りんごちゃん達の学校なんてそうそう行ける機会ないからねぇ」


そんなに行きたかったか。


「りんごちゃんもシャロンちゃんも葉月くんも、みんなわしらの子供みたいなもんじゃ、行かせてくれんかのぉ」


「来たかったのは分かりますけど勝手に自分の子供にしないでくれます?」


俺はその言葉を言った老人に抗議する。


「いいじゃないか、今後ともうちの店を贔屓にしてくれてんだから」


絹江さんに言われうーむと唸る。そういう問題かぁ?


「ところでりんごちゃん達のお店はどこかの?」


老婦人が言う。


「ああ、こっちだよ」


苦い顔をしながらりんごが絹江さん達を連れていく。


「あたし教室戻るから、お前らは先に店回ってくれー!」


遠くからりんごが手を振りながら言う。


「分かったー!」


俺も口に両手を添えて叫んだ。


「あれが間宮さんのお店の常連さんかぁ」


「じいさんとばあさんばっかだな」


山崎と飯山が言う。


「可愛い子が一人しかいねえ。あれ、間宮のお姉さんだっけ」


田中が言う。


「美人だろ?かく言う俺も、あの人にはメロメロだがな」


新井が言う。


「美人だが内に何か秘めてそうだ。そこもまた、いい」


まさか田中、すももさんの残念部分を察した上で受け入れてるのか。


「いや、あの人だけはやめとけ。悪いことは言わない、やめとけ」


「あいつ、喋ってると急にキレたり泣いたりして走りだすわよ」


アリエが言う。


「なにそれ、問題児?」


山崎が唖然とする。


「間宮の姉だから、あたしらより年上だよな」


飯山が言う。クラスメイトの姉にしては奇妙な動きと思うだろう。


「でもそーんなすももちゃんも可愛いのよー」


清さんが両手を頬に当ててときめく。


「アホくさ、ただうるさいだけでしょ」


アリエが呆れた様子で言う。


「間宮の知り合いて、変わってるよな」


飯山が言う。


「いや、おかしいのはすももさんと清さんだけだから。俺らは割と普通だから」


俺は言い訳のように言う。


「うーん、君嶋くんも大分変だと思うけど………」


「え?」


山崎の言葉に俺は呆気に取られてしまった。


「だって文化祭の出し物決める時あんなにコーヒーにうるさかったし、準備の時もコーヒーの淹れ方細かく指示してたから、君嶋くんもちょっと変わってるかなって、あはは…………」


なんか灰になった気分。


「あんたそんなことしてたの?」


アリエが聞いてくる。


「うん」


「あら意外、葉月くんてそんなこともするのね」


清さんが言う。あまり大袈裟ではないが驚いてますよて声だ。


「俺って、普通じゃない?」


「最初は控え目かと思ったけど今回は大分変だったかな」


恐る恐る聞いた俺は山崎から返事で灰がただのススになった気分だ。


そうか、俺は変なやつだったのかー。自分じゃ意識してなかったが俺は大分変わった人間らしい。カフェダムールにいる時や普段学校にいる時は気づかなかったがまさかこんなところで気付かされるとは思わなかった。





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