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五百九十一話 久しぶりのデート
「ふーん、けっこういいとこ選ぶじゃない」
アリエは俺が連れてきたスイーツパティスリーを見て言った。
「ま、昨日調べたからな」
俺は躊躇いがちに答える。
「ふーん、そんなにあたしとのデートが楽しみだったんだ」
アリエは嬉しそうに呟いた。
「楽しみっつうか、ゆっくり顔を見たくなったんだよ。やっぱちゃんと話す機会とかないとな」
俺は胸の内を吐露する。
「そ、まあそういうことにしてあげる」
なんだか上から目線だな。いや、しばらく辛い思いをさせたんだ。これくらい大したことないさ。
受付をし二人でケーキを選ぶ。複数さらに置くアリエと違い俺は控えめに一つだ。
「なに、あんたそれだけでいいの」
「いや、ちょっとな………」
アリエに不審がられるが俺は躊躇いがち答えた。
「俺さ、受験の勉強で絹江さんに料理のこと詳しく教わっててそのためにお前ともあんま会わずにいたんだけど…………やっぱ無理みたいだわ、お前がいないとな………」
アリエがケーキを食べ始めた頃を見計らって俺は弱音を吐いた。




