五百七十五話アリエの部屋②
「わ、わりぃ」
俺は漫画を棚に仕舞う。
「あたしもね、そういう普通じゃない恋愛がしてみてみたかったの」
アリエが本棚を背にしながら言った。
「悪かったな、普通な恋愛しか出来なくて」
俺はバツが悪くなった。
「今はね。でもあんたと出会った時はまるで少女漫画の王子様な感じだった。だから、好きになっちゃった」
そう言いながらアリエは微笑んだ。それはいつになく輝いていて黄金の宝石に見えた。
いや、彼女が俺を王子と言うなら今の彼女は宝石ではなく姫なのだろう。ならばそれに応えるしかあるまい。
「なら、ゴールインまで行かないとな」
「振ったら、許さないわよ」
アリエが黄金の輝きのまま言った。
「バーカ、俺が望むのはその先だ」
俺はニヤリとして言った。
「先ってなによ」
アリエは腰を折られて口をへの字にした。
「少女漫画ってのは王子様と両思いになって終わるか結婚して終わりだろ?結婚したからには結婚生活も幸せにしないとな」
俺は将来の展望を言った。
「あんた…………やっぱり王子様じゃない」
アリエは恥ずかしくなったのか膝に自分の顔を被せた。
「なんと思われようとそれが俺の幸せってやつだよ」




