五十六話
葉月side
苦労のすえようやくパーティーの準備が終了、飾りを作るまではいいとして何の料理を作るかで時間を食いすぎた。なんでピザだのスパゲティっだのチャーハン大量に作ろうとするんだ。一個ずつ作るならまだしも一種類につき人数分なんて馬鹿な真似はやめろよ、すももさんが言い出したものだがシャロンや清まで悪乗りしだして止めるのにどんなに苦労したか。途中からお客さんも参加することになったのでどっちにしろ一種類につき作る量は増えたが。最初の会議の時点で時間食わなければもう少し早く終わったものを。
飾りつけの方はお客さんにも協力してもらい時間はともかく手間は関わらず終わった、気の効いたいい常連達だ。ほとんどババアかジジイの二択だが。
みかんと会ったこともない人間もいるなかお客さん側も参加してくれるなんて嬉しい限りだ、ジジババだけあって義理人情に熱い人達ばかりだ。
そして今、パーティーの主役であるみかんを迎えようとしている。
「みんな、準備はいい?」
『おお!』
すももさんが周りの人達に聞くと俺達の威勢のいい声が響く。店側の人間に常連のジジババが加わった大所帯の合唱だ。
ガチャと店の扉が開く。
『お誕生日、おめでとー!』
パン!パンパンパン!
クラッカーが一斉に鳴り紙テープが飛ぶ。準備の間外に連れ出してもらったアリエに招かれたみかんが驚きに目を丸くした。
「て、あれ?出迎えの台詞違いません?今日みかんの誕生日でしたっけ」
俺は出迎えの時にみんなが言った台詞が気になった。そもそもこのパーティーはみかんとのお別れを惜しむものだったはずだが。
「あれ、なんでみんなあたしの誕生日知ってるの?」
驚きなのか喜びなのかで涙を流すみかんが言った。ん、そういえばみかんの誕生日ていつだっけ。俺は思い出そうとした。
「あ、あー!みかんの誕生日忘れてたー!」
衝撃の事実に気づき俺は頭を抱えた。
『えー!』
それを聞いて店の人達も声を上げた。
「すまんみかん!この埋め合わせは絶対するから!許してくれ、ほんとすまん!」
俺は慌ててみかんに謝った。
「ばか、お兄ちゃんなのにあたしの誕生日忘れないでよ」
みかんが不満に頬を膨らませた。
「すまん………」
今の俺はみかんに謝る言葉が見つからなかった。ほんと、兄のくせに情けないぜ。
「でも、今日は特別に許してあげる。お店の人に感謝しないとね」
みかんが涙を拭いながら言った。
「そうだな。みなさん、今日は妹のために、ありがとうございます!」
俺は店に集まった人達に頭を下げた。言い間違いだとしても感謝してもしきれない感謝だ。
「いいよ気にしなくて。それよりも、みかんちゃんの誕生日をみんなで祝おうよ!」
『いえーい!』
すももさんが言うと店内から拍手が巻き起こった。
「あの女、思ったより悪くないわね。みかん、あたしもあんたの誕生日祝ってあげるから感謝しなさい」
すももさんを見たアリエがみかんに言った。その顔は恥ずかしそうに顔を赤くして髪をいじりながらだった。
「アリエ…………ありがとう。もしかして今日アリエのお店に連れ出してくれたのは…………」
「あー、あー、聞こえない聞こえない。なにも聞こえないわー」
みかんが何かを察したように言うとアリエがわざとらしく耳を塞いだ。
「ささっ、こっち来てパーティーしよ!」
すももさんがみかんを店の真ん中のテーブルに連れ出す。
「ケーキ?」
そこに置かれたケーキには「みかんちゃん、また会う日まで!」と書かれたチョコプレートと火のついたロウソクがあった。元は誕生日を祝う予定ではなかったがただロウソクの火を消す動作を見たかっただけである。
いつの間にか店内の明かりが消える。
「さ、消して」
「はい!」
みかんがフゥーとロウソクに息を吹きかけ火を消すと再びおめでとう!という声と共に拍手が巻き起こった。
「こんなにたくさんの人達に祝ってもらえるなんて、うちの妹は幸せだ!」
俺は思わず感動で泣いてしまった。
「え、葉月くん泣いてるの?」
「キモ………」
「あんたの誕生日じゃないんだけど」
すももさんやりんご、アリエに引かれてしまった。
「うっせー」
泣くなと言われても止まらない。なんたって愛すべき妹の誕生日なのだ、それをみんなに祝われて泣かないはずはない。
「お兄ちゃんの馬鹿、恥ずかしいじゃない」
主賓のみかんにまで言われてしまった。
「葉月は感動屋なのですね、うう………」
シャロンもハンカチで自分の涙を拭いていた、貰い泣きだろうか。
ロウソクの火も消したのでケーキを切り分けみんなで食べていく。当然この人数で足りるわけなく他のテーブルからもケーキが切られていく。もちろんケーキたけでなくスパゲティやピザなど色んな料理をみんなで食べた、酒を飲んで悪ふざけした人も出たがなんとか店を出てもらい事無きを得た。それくらいテンションが上がっていたのだ。こんな楽しいことは俺もみかんも初めてだろう、きっとすももさんもりんごもシャロンもアリエも絹江さんもきっと初めてだろう。
こんな日がずっと続けばいい、俺はそう思った。
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