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五百十八話 アリエの別荘行き二年目⑦
そうこう言う内に新井やすももさん山崎は食べ始めていた。いただきます言ってないけど大丈夫か?
「お、美味いな!」
「美味しいー」
みんな歓声を上げるがトラウトではなくコロッケや唐揚げを食べてのものだ。
俺はトラウトの方に箸を伸ばす。最初から皮の剥かれた食べる者に優しい薄茶に焦げた身を口に入れる。
「どうなの?」
アリエが慎重に味を聞いてくる。
「美味いぞ。こいつ味付けがあるんだけど塩が振ってあっていい感じに香ばしいわ」
「ふむ、これぞ玉手箱やわーてやつね」
俺が言うとアリアさんが某グルメリポーターみたいなことを言った。究極と至高は知らなくてもそれは知っているようだ。
「えっと、お姉ちゃん急にどうしたの?」
アリエはわけが分からないとアリアさんを見た。そうか、アリエの方はちょうど知らないのか。
「あ、いえなんでもないのよ。おほほほ」
誤魔化すように笑うアリアさんにアリエは首を傾げる。ギャグやモノマネが通じなかった時というのは恥ずかしいものだ。




