五百話 すももと新井の遊園地、葉月達の観察②
葉月の観察通り新井一希の心臓は緊張で高鳴っていた。バックンバックン、あいつはどこだ。早く戻って来いよ、すももさんと二人とか冗談じゃねえ。なに話せばいいんだよという具合である。
「えっと、あいつら戻るの遅いですね。あはは」
なにも他のことは話せず当たり障りないことしか言えない。
「そうだねー」
☆☆☆☆☆☆
その言葉からしばし経った。
「え、無言?」
「なんか喋れし」
「うわつまんなーい」
「ねえ葉月、あたし達どこか別のとこ行かない?」
二人があまりに喋らないため飽きてしまった。アリエに至ってはここを離れたがっている。
「みんな戻らないし、わたし達だけで遊ぼっか」
「えっ、いいんすかそんなの………」
先に痺れを切らしたのはすももさんだ。新井は緊張で声が震えてるが。しっかりしろよ、男だろ。
「このまま待っててもつまんないしどこか行こうよ」
「そ、そうすね。あはは………」
あいつさっきりからあははしか言わないな。緊張し過ぎておかしくなってるぞ。
「うん?一希くんさっきから変だけどどこか調子悪いの?」
「べ、べべ別にそんなことないっすよ。俺は元気っすよ元気元気!」
すももさんの顔がやつに迫る。まさかの名前呼びだ、緊張がクライマックスで新井は元気すら装う羽目になっている。




