四話
今回は前回から1日経って二日目の話です
グゥ~。
腹が減った。時計を見るともう二時を過ぎていた、そりゃあ腹も減るわけだ。ソシャゲのスタミナ消費に夢中で昼を食べるのを忘れていたようだ。
何か食べるものがないかと台所を物色する。が、引き出しや収納扉を開けるも鍋やお玉などの調理器具、箸やフォークの食器しかなかった。
そうだ、冷蔵庫……………と開けてみるが飲みかけのペットボトルのお茶しかなかった。
これじゃあ昼どころじゃない。食事の度にコンビニに出かけるのも三日目だがいい加減飽きてきた。けど昨日は生活用品を揃えるのに忙しくて食糧を買うどころじゃなかった。
しょうがない、また出かけるか。
カフェダムール、また来てしまった。最初はコンビニに行こうと思ったんだけどな、腹が減り過ぎて道を間違えたか………………。
まあいいか、元々気にいった店だしな。
「いらっしゃい。あ、来てくれたのね!」
お姉さんが俺に気づく。
「どうも」
昼過ぎだからか人はあまりいない。俺は昨日と同じ席に座る。
カウンター越しに眺めるとお姉さんの艶やかな黒髪やまつ毛が目に入りまた見とれてしまう。
ってそうじゃないそうじゃない、今日は昼食を食べに来たんだった。決して美人見物のためではない。
レストランではないといえ喫茶店も料理屋なのは変わらないはずだ。
「今日はなに飲む?やっぱりブレンド?それともカプチーノとかカフェモカ?」
お姉さんがメニュー表を見せてくる。
さっき言った名前の他にキリマンジャロやブラジルなどのコーヒー、アッサムやセイロンなど紅茶などが並ぶ。
って、コーヒーとお茶しかねえじゃん!俺は腹が減ってるんだよ、メシだよメシ、メシ寄越せ!
落ち着け、このメニューがここにあるやつだけとは限らない、周りを見渡せばきっと…………。
グゥ~。
腹の虫が鳴った。
「あ…………」
恥ずかしさで声が漏れる。
「あ、もしかしてお腹空いてるの?」
パンと手を合わせてお姉さんが言う。
この女なんてデリカシーがねえんだ、いいから料理のメニュー寄越せ。
マイペースな彼女の態度に俺は先ほどまで感じていた彼女の美貌など忘れてしまった。
俺は言葉には出さないもののお姉さんを睨みつけた。
「ごめんごめん、そんな睨まないでよー。えっと、確かご飯も書いてあるメニューは……………あったあった、これだよ、この中から選んで」
お姉さんがコーヒーと紅茶のメニュー表の右にあるA4サイズのファイルを取り出す。
なんだ、すぐ近くにあったのか。腹が空きすぎて感覚がおかしくなっていたのか。
メニュー表を開くとまずナポリタンやカルボナーラなどスパゲティの種類がいくつか並んでいた。その下にハンバーグやオムライス、エビピラフ、チャーハン、オムライス、ひつまぶし、牛丼、サンドイッチ等々がある。ひつまぶしとか牛丼て喫茶店の雰囲気に合わなくないか?
サイドメニューはフライドポテトに鳥の唐揚げ、イカリング、ギョウザ、しゅうまい、焼き鳥などが並ぶ。こっちはもう喫茶店ていうか居酒屋じゃないか?
よし、決めた。俺はメニュー表を閉じた。
「ナポレオン一つ」
「ナポレオンて皇帝やったことあるナポレオン?」
お姉さんに言われて気づいた。
なんてことだ、腹が減ってるからってナポレオンとナポリタンを間違えるなんて!馬鹿にもほどがある!
「皇帝ナポレオンじゃなくてスパゲティのナポリタンを一つ!」
言い間違えたショックでつい大声になってしまった。
「だよね、わたしもそう思ってたんだよー。ナポリタンだね、ナポリタン…………」
お姉さんがスパゲティの乾麺の入ったケースを取り出して…………、止まった。
ん?そこは確かお湯に入れるんだよな。俺は自分で作ったことないけど家にいた時母さんがよくそうやって作っていた。
「お姉さん?」
俺は心配になり声をかけた。
「ち、違うの!これは作り方が分かんないとかじゃなくて…………」
誤魔化すように乾麺のケースを振るお姉さん。
いや、絶対作り方分かんないだろあんた。
「じー」
俺は無言で彼女を睨む。
「だから違うって!」
「これこれ、何を騒いでおる」
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