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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
6章 双葉パークに行こう
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四十三話




映画を見終わった後時間も時間なので昼食を食べることになった。


ショッピングモールなので飲食店の店も多くどれにするか迷うほどだ。


「ねえ、あの店いいんじゃない?」


すももさんがある店を指さした。


「イタリアンレストラン?」


りんごが店の看板を見て言う。看板には店名が達筆な字、正確には筆記体で書かれておりその下にはイタリアンレストランの字と店名が日本語で書かれていた。


そういえばカフェダムールもこんな感じの看板だったな………。


「美味しそうです!是非とも入りましょう!」


シャロンが入り口前に置いてあるメニューを見て言うとみかんの手を持って言った。


「みかんちゃんも一緒に食べよっ、ねっ?」


「別にあなたと一緒じゃなくてもいいです」


「そ、そんなぁ………」


みかんが冷たい目でピシャリとシャロンを突き放した。


「一緒に来てんだから一緒に食ってやれよ」


俺は流石にシャロンと別れて昼食をとるのは可愛そうと思いみかんに言った。


「少なくともこいつの隣とか向かいの席はいや」


もはやシャロンをこいつ呼ばわりするみかんであった。


「で、どうする?ここにするか?」


俺はみんなに聞いた。


「あたしは別にいいけど」


「あたしも大丈夫」


りんごとみかんはいいようだ。すももさんとシャロンは元より乗り気だ。


中に入りメニューを見る、どうやらこの店はピザをメインに扱ってるようだ。


「なに食うよ?」


「いやピザしかねえよ!右も左もピザしかねえよ!」


俺が聞くとりんごが激しく突っ込みを入れた。


「いや、ピザにも色々あるだろ…………」


メニューにはトマトがメインのピザや魚介類のピザ、チーズが乗ったピザなど種類が様々なピザが載っていた。


「スパゲティとかもあるみたいですけど………」


みかんに言われてメニューをめくっていく。


「マジか」


ピザのページの後にみかんの言ったスパゲティの他にオムライスやハンバーグなどが申し訳程度に載せられていた。スパゲティはナポリタンになっている。


「あったぞ、オムライスやハンバーグとかもあるな」


「どうしよう、ナポリタン食べる?」


すももさんが言うとりんごが同意した。


「あたしはそれでいい」


「すいません、あたしピザ食べたいんですけど………」


「俺もピザで」


「みかんちゃんが言うならわたしも!」


みかんが手を上げて言うと俺とシャロンが同意した。


「ありゃ、半分はピザの人なのね。ピザは………いっぱいあるね」


「とりあえずマルゲリータとかいうトマトのやつとエビのとチーズのやつだな、三つ頼んで三等分すれば三倍食える」


迷うすももさんに俺は指を三本出して言った。


「流石お兄ちゃん、ナイス!」


みかんが親指を突き出した。俺は無言で親指を返す。


「すごいです!三つものピザが食べれるなんて嬉しいです!素晴らしいデース!」


シャロンのテンションが上がって久しぶりに語尾がフランス訛りになっていた。


飲み物の後スパゲティが運ばれすももさんとりんごがフォークを手に食べていく。


二人の飲み物はコーヒーで最初二人が口にした時の第一声が甘い!であった。


「なんかこのコーヒー甘くない?」


「ああ、もうちょっと苦味がないとなー」


とは言っていたが普段からカフェダムールのあの苦いコーヒーを飲んでいれば舌も苦さに慣れるというものである。多少の苦さに不満なのも無理はない。もしかしたらあの二人はカフェダムールに来る前から絹江さん流のコーヒーを飲んでいたのではと思えてくるほどだ。


そして今スパゲティを食べた時の反応が…………。


「どうです、お味は?」


俺が聞くと二人は首をかしげた。


「ひょっとしておいしくないんですか?」


それを見てシャロンが言う。


「不味いってわけじゃないんだけど…………」


曖昧なすももさんの返事。


「言うほど美味くねえな」


りんごの言葉。不味いことを否定するのは控えめだが美味ではないといにはキッパリである。


「まあここ、メインはピザっぽいしな」


「不味いとはあたしも思ってねえよ」


俺が言うとりんごはすぐさま反論した。


「微妙なのか」


「いや、美味いっちゃあ美味いんだがそれほどでもないっていうか…………」


「ぶっちゃけお祖母ちゃんの作ったナポリタンのがおいしいね」


「まあな」


りんごの後にすももさんが続けて言った。


「お前らのばあちゃん何もんだよ………」


あんまりキッパリ言うものだから俺も思わず突っ込んでしまう。


「料理人歴五十年くらい?」


「長いなおい」


「お母さんの料理とどっちがおいしい?」


『お祖母ちゃん』


「即答?!」


みかんが聞くとすももさんとりんごが同時に答えた。


「すももさん達の両親も飲食店やってたらしいですけどそれでも絹江さんのが料理上手いんですか?」


「やっぱり、お祖母ちゃん?」


俺が聞くとすももさんが首をかしげながら答えた。


「そんなに料理上手いんですかあの人……………」


「飲食店てどんなお店やってたの?」


「イタリアンレストラン間宮っていう名前でね、ナポリタンが人気のお店だったんだ」


みかんの質問にすももさんが答えた。


「だった?」


過去形の部分にみかんが目ざとく反応した。


「お父さんもお母さんももう死んじゃってレストラン自体閉めちゃったからね」


すももさんが悲しそうに言うとりんごが口を尖らせてそっぽを向いた。


「お二人にそんなことが………」


それを聞いてシャロンも暗い顔になる。


「ごめんなさい、わたし………」


みかんがすまなそうに目を伏せる。


「いいのいいの、前のことだし気にしなくて」


それに対してすももさんは笑って済ました。親が死んだというのに明るいことだ。りんごはそっぽを向いたまま鼻を鳴らしただけだが。


そうこう話をしてるとピザが運ばれてきた。


「ピザだー、お兄ちゃんピザだよピザ!」


「おいしそうデース!」


みかんとシャロンが運ばれてきたピザを見てはしゃぐ。


「いや、さっきメニューで見たやつだしそんなに驚くことか?」


俺が二人に言うとみかんがチッチッチと馬鹿にするように指を振ってきた。


「甘いなーお兄ちゃんは。写真と本物はち、が、う、の」


違うの部分をもったいぶったように言ってくる。


「そうだけど最近の写真は画質いいから本物に限りなく近いから大差ねえだろ」


「だから甘いんだよお兄ちゃんはー」


反論するとウインクをしながら俺の口元に人差し指を置いてきた。


なんだこいつの言い方、図に乗っててむかつく。


「そもそも、絵に描いた餅は食べられないんだよ」


「なるほど。写真も絵と同じように、たとえ食べ物であっても食べることは出来ないんですね!」


みかんの言葉にシャロンが納得する。


「いやそうなんだけど…………」


みかんが言い淀む。


合ってる、合っているんだけど違う!みかんの顔はそう訴えていた。


俺はそんなみかんの肩に手を置いてもう片方の手でサムズアップして笑顔で言った。


「どんまい」


「うう、このタイミングで言われるのはすごいムカつく…………」


どよーんとした顔でみかんが言う。


俺もさっきみかんにむかついたからな、おあいこだ。


「本物が来たわけだし、冷めない内に食べるか」


この店のピザはご丁寧に運ばれた時点で切れ込みがありわざわざ客がナイフを入れる必要がないものになっている。


俺とみかんとシャロンはまずトマトのを一つとり口に入れる。


熱い、出来立てなのかピザの熱さが口の中全体に伝わる。熱くてもトマトの辛さは十分伝わってくる。


「あっふ、あっふ!ちょっと、熱いんだけどこのピザ!」


みかんがピザの熱さに悲鳴を上げていた。見ると一切れの三分の一辺りまで一気に口に入れていた。


「一気に口に入れすぎだ馬鹿、食べるなら少しずつ食べていけ」


「はーい」


俺はみかんに注意した。


「ホクホクですー」


シャロンは熱いのを分かってはいるがそれでももう既に一切れを食べ終わりそうな勢いだ。


そして一切れを食べ終えると次の一切れに手を伸ばす。


まずい!シャロンの速さに見とれてる場合じゃない!急がないとシャロンにピザを全て食べられてしまう!


俺とみかんは急いで今食べているピザを食べきり次の一切れに手を伸ばす。


「はふはふ………」


と言ってもみかんはピザの熱さに苦戦して中々一切れを食べ終えるのが難しかったが。


気がつくとトマトのピザはもう皿が空になっており俺が二切れ、みかんが一切れ、シャロンが三切れ食べたという具合になっていた。


俺達はエビが乗ったピザを狙う。三本の腕がほぼ同時に伸びピザを取る。トマトのを食べてる間冷えたのか今度のはそれほど熱くない。


ピザをかじる度にエビのプリプリ具合が口に伝わる。エビの数も豊富なのでプリプリ度も強めだ。


今回はシャロンが先に三切れ食べるということはなくみかんが一切れ目を食べ切る前に二切れ目を手に持って確保していた。


そして空になるエビのピザの皿。


「これが最後のピザ………」


俺とみかんは最後に残ったチーズピザを前にゴクリ、と喉を鳴らした。


実家にいた頃から滅多に食べないピザ、高級品だからと言ってもデリバリーだろうと店でだろうと一切食べさせてもらえなかったピザ、辛うじて食べられたとしてもごく希で冷凍もののピザ!


そしてそれが記念すべき外で食べる最後のピザだと思うと胸に来るものが…………。


シャロンの手がチーズピザに伸びた。


「て、おいシャロン!」


俺は思わず叫んだ。


「なんです急に?」


「せっかくいいムードになってたのにピザ取ってくやつがいるかよー」


「あと一枚なのにひどいです………」


俺とみかんは悲鳴を上げた。


「えっと………ただのピザですよね?」


ピザなど数ある炭水化物にしか過ぎないと思ってるシャロンの返し。


「まさかお前、向こうじゃ昼飯にいつもピザ食べてたとか言うんじゃないんだろうな…………」


俺は恐る恐る聞いた。


「いつもではありませんが冷凍のをよく食べていました」


「マジか………」


冷凍とはいえ頻繁にピザを食べるシャロンに俺は驚愕した。


「ピザって高いんじゃなかったの?」


「いえ、比較的安価ですね。冷凍の場合それほど高くありません、日本のスーパーでも冷凍ピザが安価に売られてますよ」


みかんの問いにシャロンが答える。


な、に………?ピザが安価だと?俺はその言葉に目を上にやった。そんな記憶あったか?


「ねえ、お兄ちゃん。ピザって高級品っていつもお母さんが言ってたよね?」


どうやらみかんも同じ考えのようだ。


「ああ、けどシャロンが嘘が言ってるようには見えない」


「なに言ってんだよ、ピザなんて言うほど高級でもねえぞ」


「お祖母ちゃんはあまり出さないけどお父さんは普通によく作ってたよ」


りんごとすももさんが言う。


以上の情報を踏まえた結果、俺とみかんは一つの結論に辿りついた。そして叫んだ。


『騙された!』


「あのババア、よくも俺達の夢を邪魔し続けてくれたな………」


「ひどいよお母さん、あたしだってピザ食べたかったのに………」


拳を握り締め、母親への怨嗟を募らせた。


そしてその悲しみを抱いたまま最後の一枚に取り掛かった。


「あ、食べるならわたしも食べますね」


シャロンもピザを取る。

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