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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
6章 双葉パークに行こう
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四十一話




チケットを買った後ポップコーンや飲み物、パンフレットなどのグッズを手に会場の席に座る。りんごは映画館でチケット以外のものを買うのは乗り気じゃなかったがすももさんがポップコーンを買うと言い出しその間に俺とみかん、シャロンがパンフレットとグッズを買いに行ったのだ。


ゴールデンウィークということでスクリーンの会場にも他の観客が多くいた。子供連れもいくらかいたが元が昔の作品だけあって俺達のような年齢の高い人達が多くいた。


パンフレットによればテレビ版にはなかったメタモルフォーゼという変身能力があるようだ。変身するとユウカはピンクのリボンや宝石をあしらった華やかな衣装をまとい変身前より身体能力や魔法の運用が容易になっているらしい。


宣伝が終わり映画が始まる、ボブカットの少女が学生服を着て走る映像から流れる。この少女がマジシャンズレディの主人公であるユウカだ。


このタイミングで会場にいる子供達から歓声が上がる。


このユウカは普段俺が見ている映像より頭身が若干高く成長している。ネットで調べたところによると今回の映画は俺が見ている再放送の数年後の設定らしい。数ヶ月後にはテレビで新作が放送される予定もある。


スクリーンには学校でのシーンから始まり日常から物語が始まるようになっていた。日にちが変わりかけた夜に異変が起き敵キャラが動きはじめる。


序盤のシーンはどうにも退屈で俺はその間ずっとポップコーンを食べたりコーラを飲んだりしていた。


シーンが変わりユウカが異変と遭遇し事件の調査が始まった。俺は目が離せなくなりスクリーンに釘付けになった。


事件が進みユウカが調査をする中、第二、第三の被害者が出てしまう。増える被害者に憤るユウカに俺も思わず拳を握り締めた。


そして黒幕との対面、ユウカも遂には魔法を使い戦いを始める。剣を形成したり風を起こしたりという様々な魔法を精霊の力が込められたカードにより使う様は見ている俺も手に汗を握るほどだ。


子供達が大きな声を上げる中さほど大きくはないが大人の観客席からも声がちらほらと上がる。


やがて戦いが進み、ユウカの身体や衣服がボロボロになっていく。ユウカが苦戦する中、仲間の魔法使いが乱入することで戦いは一旦お開きになった。


戦いの後、ユウカは敵を倒すための新たな力を得るために動いた。どうやらパンフレットにあったメタモルフォーゼになるための力がいよいよ手に入るようだ。


話はいよいよクライマックスになり町が暗雲に包まれる。


戦いが再び始まる前に俺はポップコーンを食べる。今の内に食べないと食べるタイミングを見失う恐れがあるからだ。


ユウカ達はなんとか新たな力を手にするも事件は悪化し土壇場のタイミングで駆けつけることになった。そこで遂にメタモルフォーゼを披露しスクリーンに華やかな衣装が現れる。


「おおおー」


思わず俺は声を漏らす。観客席の声のボリュームも上がっていた。


「いけー!ユウカー!やっちゃえー!」


「これが生ユウカ!わたし、感無量です!」


一部俺の知り合いが大きなお友達に関わらず大きめの声を上げていた。映画館なのだから声を上げるにしても小さめの声にして欲しかった。知り合いとして恥ずかしくなり映画を見るどころじゃなくなった。


ユウカ達はメタモルフォーゼの力を使い敵を圧倒、一気に追い詰める。


そしてとどめの必殺技が飛び敵を消失させる。


町に立ち込めた暗雲が止み、平和な日常が戻ってくる。そこで物語は終わり、エンドロールとなった。


話はこれで終わり、かと思ったらエンドロールの後にまだ映像が残っていた。


『これでいい、これで』


今まで映画にいなかった敵キャラと思しき人物が口を開きシーンが切り替わるとユウカが口を開いた。


『あれで本当に、終わったのかな………』


え、終わりじゃない?まさかこの映画から新作に続くというのだろうか。だとしたらこれは新作の前座という位置づけだったというのか。ゴールデンウィークだから知り合いと見てみたもののすごいものに遭遇してしまった気分だ。




映画が終わりホールに戻ってきた。長時間椅子に座っていたことで凝り固まった身体を腕を伸ばしたりしてほぐす。


「面白かったね、お兄ちゃん」


「ああ、まさかユウカが変身するなんてな!」


みかんの言葉に俺は激しく同意した。


「もーっ、さいっこーだね」


「いい経験でした」


呑気に映画の感傷に浸っているすももさんとシャロンにちょっとムッとした俺は二人に言った。


「ちょっと二人とも、ここは映画館なんだからもう少し大人しくしてくださいよ。さっきも大きな声が目立ってましたよ」


「えー、いいじゃん。他の人だって声出してるし」


すももさんが口を尖らせる。


「声と言っても大きい声なのは小さい子供達だけで大人達は比較的小さい声でしたよ。それなのに二人は学生なのに声が子供並に大きかったんですよ!」


俺はあの時感じた恥ずかしさと映画に集中出来なかった恨みも入れて怒鳴る。


「今の葉月くんも声大きいじゃん」


「ここはホールだからいいんですよ」


すももさんに揚げ足を取られて調子が狂ってしまった。


「しかし日本の映画とは騒ぎながら見るものと聞きましたが」


今度はシャロンがおかしなことを言った。


「どこだよそれ、日本でもそんなとこねえよ」


「ほら、ライト振って頑張れーて応援する………」


「それはプ〇キュアです、普通の映画ではライトは振りません」


みかんが指摘した。シャロンの日本観はやはりアニメから仕入れてるのだろうか。


「そんなぁ、がっかりだよお姉ちゃん………」


シャロンが落ち込む。勝手に人の妹の姉にならないで欲しい。

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