四十話
名前が喫茶店なのに喫茶店のシーンが減ってるのはあくまで喫茶店が主役じゃなくて喫茶店で働く人達とその関係者が主役てことでやってます
俺の家の方を通過し駅で待っているとものの15分で電車がやってきた。学校に行く時も電車を使っているがこの駅は規模が小さめの割には比較的多く電車が来るのだ。
「はーい、みんな行くよー。はぐれたりしないよーにねー」
すももさんが手を上げて俺達を誘導する。
「なに言ってんだよ姉貴、あたし達ガキじゃあるまいしそんなのあるわけないし」
りんごが言ながら車内に入る。
俺は念のためみかんと手を繋いで入る、なぜかシャロンがみかんと手を繋ごうとして弾かれていた。
車内はあまり人がおらず容易に座れた。電車が移動する間、ずっとシャロンがみかんの手に触れては弾かれていた。
「お前はさっきから人の妹になにやってんだよ!嫌がってるだろ!」
みかんが言えずに困っていたので俺は代わりに声を上げて注意した。
「だって手繋がないとはぐれちゃいそうですし」
「すももさんの言うこと真に受けんなよ、まだ人全然いねえだろ!人混みならともかくこの状態ではぐれようなんてねえよ」
「チッ、怪しまれずにミカンに触れるチャンスだったのに」
シャロンが顔を歪ませて言う。こいつ、みかんが関わると敬語が抜ける上に腹黒くなるのか。
「シャロンちゃんて、昨日から何か変だね………」
「昨日からっつうかみかんに反応してるだけだけどな」
すももさんとりんごもシャロンのただならぬ様子に引いていた。
駅を通過するごとに車内に人が増えていく。とはいえ田舎な方なのか満員電車、というほどには混まない。
間もなく目的の駅に着くのを知らせるアナウンスが鳴る。
「はい、みんなそろそろ降りるよー。間違えて車内に残らないでよねー」
すももさんが席から立ち上がって言う。
「だからガキじゃないんだから大丈夫だって」
りんごがまたすももさんの言葉を否定する。
「でも降りるのを間違えるのは油断するとなっちゃうから気をつけないと駄目だよ」
そう言うすももさんには強い説得力があった。もしやそういう失敗を実際にしたことがあるのだろうか。
目的の駅に到着し電車を降りる、駅を出ると視界の向こうにFPと大きく書かれた建物があった。
「はい、この通路を通れば双葉パークだからね。ちゃんと着いてきてねー」
すももさんが手を振りながら俺達を案内する。通路は下が金属プレートになっており歩く度にカンカンと音がする。すももさんの言う通り双葉パークに繋がっているがどうやらこの駅と繋がる専用の通路らしい。
映画館につくとたくさんの人が歩いておりチケット売り場にも多くの人が並んでいた。ひとまず俺達はチケット売り場に並んでから見る映画を決めることにした。
「で、なに見よっか。やっぱりヒーロー大戦?」
すももさんが提案した映画は最近になって毎年公開されるやつだ。
「あれネットだと評判悪いみたいですよ」
「毎年やってるけど大体悪く言われてます」
俺とみかんが言った。
「ネットって、お前らそんなん調べてんのかよ」
りんごが言った。
「まあネットやってると色々情報入るからな」
俺は濁した言い方をした。
「色々っていうか検索ワードに単語入れなきゃそういう話出てこないだろ」
「ネットって色々調べられるからな」
またもや俺はあやふやな答えを出した。
やはり子供向けの番組をこの歳になって見てる上にネットでその評判を調べてると思われるのは気まずいものがあった。
「まあいいや。姉貴、それ評判悪いみたいだけどどうする?」
俺への詰問をやめたりんごがすももさんに聞く。
「うーん、でもなんか見てみたい気がするんだよねー」
すももさんは見たい映画の悪い評判を聞いても動じることはない。
「シャロンちゃんは?」
すももさんがシャロンに話を振る。
「わたしは是非とも見てみたいです!日本のヒーローというのをスクリーンの大画面で見れるなんて滅多にないですから!」
「そ、そうなんだ……」
シャロンの気合いの入った声にすももさんが驚く。
すっかり俺達に馴染んでいたがそういえば外国の人だった。子供向けの作品だろうが日本文化は日本文化だ、それにヒーローものの方が話の内容は分かりやすいかもしれない。
「そういえば今日マジシャンズレディの映画やってるんだってな」
俺はそれとなく言ってみる。
「あたしそれ見たい!」
みかんも俺に続く。
今朝アパートを出る前ネットで上映作品を調べみかんと相談していた。
「ではそれを見ましょう!ミカンのためにも!わたしの!愛しのみかんのためにも!」
みかんの言葉にシャロンがすぐさま考えを改めた。うーむ、君子豹変すか。
「い、いいけど…………。えっと、みんなもそれでいいよね?」
すももさんがシャロンの豹変ぶりに驚きながら俺達に確認をとる。
「あたしは別にいいけど」
りんごが言う。
「ああ、元より俺とみかんはそのつもりだからな」
「えー、それなら先に言ってよー」
「先にたってすももさんが先に見る映画提案してきたじゃないですか」
文句を言うすももさんに俺は抗議した。
「あ、そうだった。ごめんごめん」
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