三百六十一話 五年生の美結
この日、珍しい客がカフェダムールに来た。
「美結ちゃんいらっしゃい。て一人?」
「一人なんて珍しいね」
俺とすももさんはは彼女が一人であることに驚いた。彼女は小学生でいつもは母親の礼子さんと一緒に来ることが多いのだ。
「ふっふー、もうあたし五年生だよ。喫茶店くらい一人で行けるよー」
美結ちゃんはふんぞり返った。
「子供ってのは成長が早くて泣けるな………」
りんごが涙を拭う。こいつってこんな涙脆かったっけ。
「じゃあ、ブレンドも飲めますね」
「うん、今日はブレンドちょうだい」
シャロンが言うと美結ちゃんが注文する。果たして彼女は本当にあの苦いブレンドも飲めるのか。
ブレンドが完成し彼女の前に置く。美結ちゃんは恐る恐るブレンドのカップを取り中身を口に含む。カップは離さない、だが我慢するような顔で飲んでいる。
その顔はみるみる内に険しくなっていく。
「ねえ、大丈夫?苦くない?」
思わずすももさんも声をかける。
「ぷはあっ」
美結ちゃんは息を切らしてカップから口を離す。そして慌ててて砂糖とミルクを入れていく。
「ふう」
そして飲めることを確認するとほっと息をつく。
「はは、まだ美結ちゃんにブレンドをそのまま飲むのは早かったみたいだな」
俺は思わず笑った。




