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三百四十九話 アリエとの入浴②
シャワーの音が止みチャプッと湯船に浸かる音が聞こえる。
「もういいわよ」
「ちかっ」
言われて目を開けると目の前にアリエの背中があって思わず声が漏れてしまった。
「なによ、文句ある?」
アリエが振り返った。近いから小声でも聞こえるのか。
「近いのはいいとして、背中はないだろ。顔が見えないじゃないか」
「この格好であんたの顔見たら恥ずかしいのよ!」
わけの分からない返答が来た。
「なに言ってんだ、ならなんでわざわざ一緒の風呂に来たんだよ」
一緒の風呂に入りたいから来たのに顔を見るのが恥ずかしいというのは筋が通らない。
「別に来たくて来たわけじゃないわよ」
「じゃあなんで………」
来たくて来たわけじゃないと言われ俺は落ち込んでしまう。
「みかんに唆されたのよ。さもなくばあんたのこと貰うって」
「そんなこと言ったのかよ。ほんと食えない妹だよ」
アリエの言葉に俺は目を丸くすると同時に呆れてしまう。




