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三百三十三話 みかんの卵焼きと昼休み
どれ、俺も気になるな。弁当なので唯一になってしまった卵焼きを頬張る。
「ん」
「でっしょー!だから言ったじゃない、自信があるって」
思わず声が漏れるとまたみかんが自慢してくる。
喋るな、気が散る。声にするのも煩わしく俺は手の平を前に出した。
ほどよい甘さが広がり同時に出汁の香ばしさがコンボとなっている。うん、これが卵焼きというやつか。普段オムレツや目玉焼きしか作らないからこれはレアだぞ。
「あたしも、一ついいかな?」
「俺にもくれよー」
飯山と新井も卵焼きをねだる。
「ねえよ、三つしかないからお前らの分はもうねえよ」
俺は乱暴にお断りした。
「大丈夫だよ、わたしの分もあるから。飯山さんと新井さんもどうぞ」
みかんが自分の弁当から二人に卵焼きを分ける。
「ありがと」
「サンキューみかんちゃん!」
飯山と新井も卵焼きを美味しそうに食べる。
大好評だな、まさかこいつにこんな才能があるとは思わなかった。




