三百十二話 アリエと梨子とカフェダムールと
「ところでそれなによ」
  
アリエはみかん達が飲んでいるフルーツミックスを指さす。
「フルーツミックスだよ、お前も飲むか?」
「貰うわ」
そう言ってアリエが席に座る。
「あ、絹江さんフルーツミックス追加で」
「あいよ」
俺は絹江さんに注文を回す。
「あと、あたしはみかんと同い年だから敬語はいらないわ」
座ると梨子ちゃんに言った。
「え、同い年………」
梨子ちゃんは驚くとギギギと鈍い音がしそうな遅さで俺に向き直った。
「妹さんと同い年の彼女さん………」
どう驚いたのと思ったらドン引きしてらした。
「うるせえよ、年下が彼女で悪かったな」
俺は悪態をついた。
「あいよ、あんたにもフルーツミックス」
ちょうどいいところで絹江さんがアリエにフルーツミックスを出す。
「ん、これはいいわね。なんでこんないいもの今まで出さなかったのよ 」
アリエはフルーツミックスを口に含むと抗議するように言った。
「なんでって、メニューにもなかったし誰も頼まなかったからねえ。そこの新しい客がわがまま言わなきゃ出なかったんだよ」
絹江さんが説明した。
「ふーん、あんたって変わってるわね」
アリエが梨子ちゃんに目を向ける。
「あたしが変わってるんじゃなくてここが地味なだけだよ」
「地味じゃないわよ、葉月はかっこいいわよ」
「なんで彼氏さんの話?」
「あ、店の話ね。なんだ、勘違いさせないでよ」
アリエは怒るが勝手に勘違いしたのは彼女である。




