二百八十八話 二年目のバレンタイン③
「ハッピーバレンタイン、今年もチョコレートを持ってきたわ」
「いらっしゃいアリアちゃん」
すももさんがアリアさんを出迎える。
今日のアリアさんはダンボールを抱えていた。
「なんだそのダンボールは」
りんごがアリアさんに聞く。
「チョコレートよ」
「は?」
その返答にりんごは惚けた返事をする。
「もしかしてその中全部がチョコレートですか!?」
シャロンが手を重ねて興奮する。
「ええ、そうよ」
「わあ!すごいですー!くださいください!」
返答を聞くとシャロンは益々興奮してアリアさんにチョコレートを要求する。
「はいはい、慌てないの」
アリアさんがダンボールの中からチョコレートを差し出す。
「ありがとうございますー」
「仕事中には食べるんじゃないよ」
「はーい」
絹江さんが釘を指す。
「はい、すもも」
「ありがとアリアちゃん」
「はい」
「どうも」
アリアさんは俺たちにもチョコレートを配っていく。去年と同じ高級ブランドのチョコレートだった。
「ハローバレンタイーン、みんな元気かーい」
「いらっしゃい」
マイクがハローエブリバディとバレンタインを混ぜた挨拶で現れた。
「あ、わ、我が女神………」
マイクはアリアさんに恐る恐る近づく。
「あなたも食べる?」
「あ、ありがとうございます!」
そしてアリアさんからチョコレートを受け取る。
するとマイクは周囲を見渡す。そう、俺たちの手にも同じチョコレートがある。
「手作りじゃ、ない。しかもこれって………義理チョコじゃないかな?」
本命チョコレートを期待していたマイクはそうでないと気づいて目を泳がせる。
「どんまいマイク。ま、俺はすももさんの手作り貰ったけどな」
新井がマイクの肩に手をやってもう片方の親指を立てる。
「ま、まさかこの僕が本命チョコレートを貰えないなんて。あんまりだー!」
マイクは絶望に頭を抱えて店を出ていった。
お前もその口か。
「もう1枚あげた方が良かったかしら」
「そういう問題じゃないわよ」
アリアさんのデリカシーのない言葉はアリエに突っ込まれた。




