二百八十六話 二年目のバレンタイン
「我が女神、そろそろバレンタインですね」
バレンタインの近い日、カフェダムールでマイクがアリアさんに言った。
「それが?どうかしたの?」
アリアさんは意に返さない。
「えっと、僕にチョコを恵んで欲しいなと………」
マイクがたどどしく言う。切り出しの余裕はどこへ行ったのだろう。
「まあ、それくらいなら………」
アリアさんはあっさり承諾する。
「え、ほんとに?くれるんですか?」
マイクが動揺する。
自分でくれと言っておいて変なやつだ。
「別に減るものじゃないしいいわよ」
そう聞くとマイクはガッツポーズを取ってニヤついた。
★★★★★★★
別の日、新井がすももさんに聞いた。
「あのすももさん、俺にバレンタインのチョコ貰えたりしませんかねぇ」
こいつの顔はあの時のマイクより気持ち悪かった。
ゴン!シンクに皿が落ちる音がした。すももさんが皿洗い中に動揺して落としたか。
「あ、うん。バレンタイン?か、考えとくよ。うん」
答える彼女はやはり動揺していた。
これはこれで面白いな。




