二十七話 すももの友達、大鳳清
すももは大学で同じゼミになった大鳳清と構内を歩いていた。
「すももちゃんはゼミの男の子で好きな人とかいるかしら?」
「うーん、ゼミの中じゃいないかな」
清の問いにすももが答える。大学の授業が始まって何日か経つがすももと清は授業もいくつか同じものに出ており話す機会も多いのだ。
「ゼミの中でってことは他に気になる人がいるのかしら?」
「まあ、気になるっては間違いじゃないかな…………」
すももは清に言われて恥ずかしそうに頬をかく。
「あら、どんな人なのかしら。よかったら教えてくださらない?」
清が目をキラキラさせて聞く。
「うちの喫茶店で働いてるバイトの子で、高校生なの」
「まあ、年下の子!やっぱり年下の子って男の子でも可愛いく見えるのかしら」
「可愛いっていうか、からかいたくなっちゃう感じ?」
「あらあらまあ、すももちゃんはいたずらっ子なのねぇ」
「いたずらっ子っていうかこっちがちょっと変なことしても受け入れてくれそうっていう包容力があるんだよねあの子」
すももが葉月への想いを言う。
「優しいのね」
「うん、まえにちょっとあの子にひどいこと言って突き放しちゃって悩んだ時も一緒にいるって言ってくれた。だから好きなの」
すももは葉月が初めて自分の部屋に来た時のことを思い出す。彼女にとってあの出来事は忘れられないものになっていた。
「うふっ、気になってるとは言ったけどやっぱりその子のこと好きなのね。いっそのこと付き合っちゃえばいいのに」
「それは駄目、もうちょっと時間が欲しいっていうか……………」
清の言葉にすももが煮え切らない態度をとる。
「どうして?その子のこと好きなじゃないの?」
好意を抱いているのに交際を申し込まないとはどういうことだろうか。すももの想い人との奇妙な関係に清は益々首を傾げることになった。
「昔色々あってね、男の人とお付き合いするのに抵抗あるんだよね」
「ごめんなさい、悪いこと聞いちゃったわね」
清はすももに謝罪し俯く。
「いいよそんな気にしなくて。そうだ、清ちゃんは好きな人とかいるの?」
すももは慌てて話題を変えようとする。
「わたしはー、まだいいかな。お家のお手伝いで忙しくて恋とかはちょっと………」
「お家って確か茶道の家元だよね」
「ええ、会員の人達にお茶を振舞ったりしてるの」
清はゼミでの自己紹介の時に実家が茶道の家元だと言っていたのだ。その際にすももが実家が喫茶店をやっていたのをきっかけに意気投合したのだ。
もっとも清は最初すももの店は主に紅茶を主にやっていると勘違いしていた。カフェダムールのおすすめはコーヒーで紅茶はあまり客達に飲まれていないのだ。
「やっぱり家が茶道やってると道具とか準備するので大変だったりするのかな」
「道具というより作法とかしきたりの面が大変かしら。わたし家を継ぐために最近そういうの習い始めたから」
「あー、わたしそういうの苦手だなー。身体がかゆくなっちゃうていうかむずむずしちゃいそう」
「ふふ、みんな最初はそうよね。特に正座なんかすぐ悲鳴上げちゃうわね、わたしもお茶会が終わると立ち上がるのが難しくて」
「はは、清ちゃんも色々大変だね」
「そうでもないわ、大学ですももっていう友達が出来たもの。だから大学も茶道も大変じゃないわ」
「清ちゃん…………、わたしも清ちゃんがいてくれて嬉しい!」
すももと清は友情を確かめ合うと互いに顔を合わせ笑った。
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