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二百七十五話 清とアリエと苦いブレンドと
夕さんと清さんがコーヒーを飲んでいるとアリエが現れた。
「いらっしゃい」
「今日も来たわよ。あ、夕も来てたのね」
彼女は夕さんに気づいた。
「はい、喫茶店は美味しいです」
夕さんが返す。
「ん、喫茶店?あ、そう」
アリエがやや疑問を浮かべながら頷く。
彼女は夕さんの言葉を別にコーヒーが抜けただけで別に喫茶店そのものを美味だと言ったわけではないと察したのだろう。
だが来店直後の夕さんの言葉を聞いた俺はそれが言い間違いではないと知っていた。
「あんたっていつもコーヒー飲んでたっけ」
アリエは今度は清さんに注目する。
「今日からよ、夕ちゃんに勧められたの」
清さんが経緯を説明する。
「へー。じゃああたしもブレンドにしようかしら」
「大丈夫かよ、最初飲んだ時苦くて嫌がってなかったか?」
俺はアリエの舌を心配する。
「もう昔じゃないのよ、いいから寄越しなさい」
「そこまで言うなら淹れるけど後悔しないか?」
俺は念を入れて確認する。
「大丈夫よ、さっさと寄越しなさい」
「はいはい」




