二百十四話 清、久しぶりのカフェダムール
「いらっしゃいませー。あ、清ちゃん!」
すももさんが客を迎える。その人はなんと清さんだった。
「あいつがここに来るなんて珍しいわね」
「ここんとこずっと庵々にばっか行ってたからな」
俺はアリエに同意した。
「でも、この賑やかな雰囲気もたまに来たくなっちゃうのよねぇ」
清さんがシャラランと美しい音が鳴りそうな声で言う。
「それはありがたいな、うちの強みってことか」
りんごが言う。
「人がたくさんいるのはいいことです」
シャロンが言う。確かに人がたくさんいるのは大事だな。
「それに………あなたのように美しい人がいると店も華やかになる」
マイクが髪をかきあげ気取った声で言う。
「あら、お世辞が上手ね」
清さんは彼の軽い文句にも動じない。
「お世辞ではありませんよ、あなたは本当に美しい」
「認めたくはないけどそれは同意見ね」
「うんうん、清ちゃんみたいな綺麗な人なんて早々いないよ」
マイクがめげずに続けるとアリエとすももさんが賛成した。確かにこの美しさは誰もが認めるものだろう。
「そんな真正面から褒められちゃうと………」
清さんが頬に右手を当ててうっとりする。
「照れちゃうわー!」
顔を赤くして逃げていく。
「それわたしのー」
するとすももさんが突っ込みを入れる。
「わたしのーは分かるけどなんで逃げたの?!ちょっと褒めただけじゃない?!あいつもしかして恥ずかし屋?!」
アリエが困惑して叫ぶ。
「うん、真似にしては意味わかんねえな」
「人は恥ずかしくなると逃げたくなるものだ」
「なるほど」
りんごの台詞にシャロンが納得する。
「納得してるところいいけど、追わなくていいのかい?」
マイクが尋ねる。
「む、確かにこれでは売り上げが減ってしまう。追うんじゃすもも!」
絹江さんが発破をかける。
「ラジャー!」
すももさんが敬礼と共に清さんを追う。
「あたしも!」
りんごを後を追う。




