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二百九話 みかんと庵々②
注文の品が現れ俺たちはたい焼きの皮をバリッと二つに割った。あんこに皮をしょうゆのごとくつけて口に入れる。
うん、美味い。いつも通りのたい焼きだ。
「あの、今思ったんですけど……あんこつけるくらいなら普通のたい焼きにした方が良かったのではないでしょうか」
夕さんの一言で俺たちに衝撃が走った。そして俺とアリエはみかんを見た。
「悪かったわね、変な頼み方して」
みかんが頬を膨らます。
「ま、いっか。これはこれで、普通のたい焼きとは形も食感も微妙に違うし」
「みかんのことだからあまり気にしてないわよ」
アリエが腕を組んで言う。
「なんかむかつく言い方ね」
みかんがまた不服な顔をする。
「まあまあ」
俺はみかんをなだめる。




