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二百六話 みんなで庵々に来た⑨
「まあ、分からんでもないが………」
芸術に見とれる気持ちは分かるがしかしと俺は横に目をやった。
飯山も釣られてその方、すももさんとりんごを見ると目を見開いた。なんと二人はまんじゅうを無造作に手づかみで食べていたんだ。なんと大胆な。
「ちょっとあんた達なにやってんの?!さくらまんじゅうだよ?そこのばあさんがひと彫りひと彫丁寧にやったやつだよ!?なに適当に食べてんだし!?」
飯山は二人に狼狽して言った。
「いや、まんじゅうはまんじゅうだろ」
「うん、食べちゃえばみんな一緒でしょ?」
二人は気にせず食べ続ける。
「うーん」
飯山は唸ると一口一口噛み締めるように食べる。
少しして新井にもさくらまんじゅうが出される。
「おー、これがさくらまんじゅうかあ」
新井がさくらまんじゅうを掲げてクルクル回す。
「いいから食えよ、あんみつもそろそろ食べ終わるぞ」
俺は面倒くさくなって言った。
「でもさあ、これ食ったらこの時間も終わるんだよな」
新井がわびしさを出して言った。




