二百話 みんなで庵々に来た③
「ねえよ。ただ、男同士の青春てやつをやりたかっただけなんだよ。俺、なんかああいうのに憧れててさあ」
新井が俺に固執する理由を説明する。
「そういうのがキモいのよあんた、葉月から離れなさいよ」
「ちょ、押すなよアリエちゃぁん」
アリエが新井を席から追い出してそこに自分が座った。
「助かったアリエ、危うく変な世界に連れてかれるとこだったわ」
「彼女が彼氏を守るなんて当然じゃない」
アリエが鼻を鳴らして言う。
俺も釣られて鼻を鳴らしてしまった。昔は男が女を守るのに今じゃ逆だな、しかも年下に守られるなんて驚いた。
「ではアリエちゃん、僕と踊らないかい?」
マイクが新井とアリエの間に割り込んで言う。
「なんで葉月でもないのに踊らなきゃなんないのよ」
アリエはキッパリと拒絶した。
「それは残念」
「ていうか人の彼女口説くんじゃねえよ、殴られたいのか」
俺はマイクを睨みつけた。
「失敬、可愛いものには惹かれるのが性分でね」
「可愛いのは認めるけど葉月以外に言われても嬉しくないわよ」
アリエが言う。このブレない姿勢、彼氏としてはとても安心していい。




