一話
俺は春から実家から離れた高校に通うことになり高校デビューを前に一人暮らしをするために引っ越すことになった。
引っ越しの手続きや荷物整理が終わった後近所の道を把握するため見回ることにした。
住宅街の中に個人経営のレストランや写真館が混じる中俺は一つのシャレた店を見つけた。看板は立体的な文字で構成されており達筆な字で書かれている。達筆だと思ったがよく見るとそれはいわゆる筆記体と言われるもので書かれた英語の字だった。
ひ、筆記体てどう読むんだっけ。中学でも英語の筆記体なんてめったに練習しないから読み方が分からない。途中間があるところを見ると単語が二つあるのか。最初は大文字でCとあるから分かる、三番目にfがある、カフェと書かれてるのか。後ろの方は大文字でDと書かれていて後ろにやたら丸い字が続いてる、間にあるのはひょっとしてmか。とにかくさっぱり分からない。
近づいてみると小さい看板があってちゃんとカタカナで読み方が書いてあった。カフェダムール?変わった名前だ、とにかく入ってるみるか。
カランラカーン。
ドアを開けると上に付いたベルが鳴る。
中に入ると俺は動きを止めた。カウンターの向こうにいた女性は店長というには若くシワのない顔をしていた。齢19ほどだろうか、長い黒髪に切れ長のまつ毛、穏やかで優しさを思わせる瞳に俺は釘付けになった。春物のワンピースとカーディガンがまた庭園の花々に囲まれてるようで心を奪われた。