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百七十九話 葉月は再び甘処に寄る
「いらっしゃい。あ、また来てくれたんですね」
夕さんが出迎える。
俺はアリエと共に甘処庵々に来た。
「お邪魔します」
「来てやったわ」
俺とアリエが挨拶を返す。
「またこの店の味が食べたくなってね」
俺は席につきながら言った。
「とりあえず玉露」
「おい」
いきなりまた玉露を頼むアリエに驚いた。
「なによ、お金ならあるって言ったじゃない」
俺の驚きなどアリエは意に返さなかった。
「そ、そうだな………」
一度二度ならずも三度も玉露を頼むとは、金持ちの感覚はやはりわからん。
お通しの薄いお茶を飲みながら玉露を待つ。やはりあまりいい味はしない。