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百七十四話 たまには喫茶店以外の店も⑫
俺はありがたくもう一つわらび餅をもらう。
「あら妬けちゃうわね。わたしもすももちゃんにやってもらおうかしら」
清さんが俺たちを見て言う。
「またすももちゃん、ですか…………。わたしじゃ駄目なんですか清さん!わたしならいつでもあーんくらいさせてあげます!」
看板娘が荒々しく言う。
「そんなゆうべちゃん、怒らないでちょうだい。ゆうべちゃんのことも大事なの、すももちゃんも好きだけどゆうべちゃんのことはもっと大事よ」
清さんが看板娘をなだめる。どうやら彼女はゆうべというらしい。夕と書いてゆうべか。
やはり昔からの付き合いだけあって彼女も清さんに気があるか。だが清さんはすももさんが好き、三角関係だなこれは。
少ししてあんみつが俺の元に来る。これで恋人にわらび餅を貰うという恥ずかしい真似は必要なくなる。
あんみつには寒天を中心としてもなかの生地や抹茶、さくらんぼや苺が皿に入っている。あんみつの由来である食材にかかっているみつがなんともそそられる。