172/594
百七十話 たまには喫茶店以外の店も⑧
メニューを開くと甘処だけあってあんみつやぜんざいなどの名前があった。どこぞの漫画にあるような中二臭い名前ではない。
「わらび餅があるわね」
アリエが言う。
「それにするのか?」
「ええ、名前は聞いたことあるけど実際に食べたことないもの」
「なにいっ!?」
「えっ、アリエちゃんわらび餅食べたことないの?」
俺と清さんは驚きの声を上げた。
「だっておばあ様が粉で口が汚れるってうるさいもの」
「あー」
アリエに理由を話され俺は思わず納得してしまう。
「アリエさん、ですか?アリエさんのおばあさんて厳しい方なんですか?」
看板娘が言った。
「こいつお嬢様だからな、色々制限されてるんだよ」
俺は彼女に教えた。
「それは残念、わらび餅を食べないなんてもったいないわ」
清さんが言う。
「悪かったわね、もったいなくて」
アリエが悪態を返す。清さんの魅力も同じ女のアリエには効かない。




