百四十話 この店、混んでない?ていうかあんた達忙しいわね
妙だ、カフェモカを飲んでる間アリアさんの様子がおかしい。せわしなく目を動かしていて落ち着きがないんだ。
「なあ、あの人様子変じゃないですか?」
接客の片手間俺はすももさんに聞いた。
「確かに、どうしたんだろ」
すももさんはアリアさんに近づいた。
「ねえ」
「ちょっと」
「な、なに?」
すももさんが話しかける前に向こうから来た。
「この店、混んでない?ていうかあんた達、忙しいわね」
「うん、クリスマスだからね」
「手伝おうかしら」
「え?」
俺も頭にハテナが湧いた。どういうことだ、なんでこんな言葉が出た。
「だから、この店の仕事手伝ってあげるって言ってんの!」
アリアさんが声を荒らげて言った。
「え、ほんと?マジ?リーアリー?!」
すももさんが後退してオーバーリアクションを取りながら言った。
「そんなに驚くことかしら」
アリアさんが眉を潜める。
「え、ほんとに手伝ってくれるの?」
すももさんがアリアさんに確認する。
「だからそう言ってるじゃない」
「ありがとー、アリアちゃん!わたし嬉しい、一緒に頑張ろ!」
すももさんが感激のあまりアリアさんに抱きつく。
「別に………そんなに喜ぶことでもないわ」
アリアさんが顔を赤らめる。
「アリアちゃん!」
清さんが立ち上がって言う。
「なによ急に大声出して」
「すももちゃんはわたしのものよ、あなたなんかに渡さないんだから」
「いや、意味分かんないし。別にあなたのものでもないわよ」
アリアさんが清さんの言葉に戸惑う。
「シャラップ!とにかく……」
「え、清ちゃんも手伝ってくれるの?」
清さんの言葉を遮ってすももさんが言った。どこをどう解釈すればそうなるか分からないがナイスだ、これで起きたであろう喧嘩を未然に防いだ。
「ええ、もちろんよ!」
清さんは目をとろんとさせてオーケーした。