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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
十三章 町内運動会
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百二十一話 障害物競走本番




さて、障害物競走本番に話を戻そう。ピストルの音はもう鳴っている。俺たちはもう第一関門の網くぐりを目指していた。


真っ先に網に触れたのはりんごだ。流石は運動神経抜群なだけある。だが俺も負けてはいない、なぜなら彼女の次に網に触れたからだ。


練習の通り平泳ぎをイメージしながら進む。持ってるのは網、周りは地面だ。だが俺には網が、波、地面と周囲の空気が水に見えた。そしてその波を、かく!かく!かく!そうしてどんどん進んでいく、いや、進めるぞ!


りんごには及ばなくても二番手にはいける、そう思ったのだが、違った。


「うりゃうりゃうりゃ!うりゃ、うりゃー!」


「え?」


「姉貴!? 」


俺たちはその光景に目を見張った。


すももさんが凄まじい気合いと共に網をかき分けていったんだ。そして彼女はりんごすら抜いて一番に網を抜けた。


なんて人だ………。いけない、俺も行かないと!俺は首を振って冷静になった。


意外にも俺はりんごを抜いて二番に網を抜けた。次は跳び箱だ。この間は立ち上がりから一瞬の加速がものを言う。短距離でどれだけタイムを縮められるかだ。短距離走の練習はしてないがやるしかない。


とは言ったがやはりかなりの短距離ですももとの距離を縮めるには至らなかった。俺より先にすももさんが跳び箱を飛んでいたからだ。


「いったぁ………」


すももさんが痛みに尻を抑える。跳び箱の端にガッと尻をついてしまったのだ。いや、三段の高さでこんなことありえるのかと思うが彼女は実際ドジを踏んだ。


今だ!この隙に前に出る!あ、りんごに抜かれた!いや、構うものか!りんごが難なく跳び箱を超え、俺も続く。トラックのカーブを回り直進ルートに戻る。次はハードルだ!


ハードルとハードルの間を絶え間なくジャンプすることで突破し、最後の直線に入る。


そしてゴール手前にあるのが、じゃんけんだ。名乗りを上げた担当のじいさんばあさんが交代で選手の相手役として登場する。一度でも勝てれば突破だがあいこか負けだとずっといることになる。


りんごはまだそこで止まってるから勝ってはいない。


『さいしょはぐー、じゃーんけーん………』


俺も到着し相手役のじいさんとじゃんけんを始める。この大会にいるということは彼もそれなりに研究してるはずだ。裏をかいてくるか、セオリー通りチョキかパーか………どっちだ。


拳が、開かない?いや、彼だけじゃない、相手の出方を伺っていた俺の拳も開かなかった。


グーとグー、あいこだ。


『あいこーで………』


あいこの時はどうでる?確かあの後アリエに教えてもらったパターンだと次は別の手と聞いていた。なら今回はチョキかパーになる。チョキだとあいこになる可能性もあるが………いや、イチかバチか、この一手にかける!


俺がグー、彼がチョキだ。


「おめでとう、君の勝ちだ」


じいさんが俺を褒めたたえた。


「ありがとうございます」


俺はお礼を言って前に出る。俺はその光景に驚いた。ゴールテープが、ある。つまりりんごがまだ抜けていないんだ。今の内にいっけー!俺は全力で走ってテープを切った。


ワアァァァァ!


会場内から歓声が湧いた。これが一位に対するリアクション、これを自分が受けることになるとは。かん、げきである。





テントのアリエの元に戻ると褒めてきた。


「一位を取るなんて、流石はあたしの葉月、やるじゃない」


偉そうに腕を組んでるが頬が紅潮してるのが丸わかりだ。


「まったくだな、ははは………」


俺にそれを指摘する気などなかった。そんなことより俺自身も勝利の余韻に顔がにやけているからだ。


「下僕も二位なんてやったじゃない、褒めてあげるわ」


アリエがシャロンに微笑む。


「ありがとうございます、ご主人様!」


シャロンが両腕を上げて感激する。二番手でもその喜びはかなりのものだろう。


「それに比べて、あの二人は………」


アリエに釣られてすももさんとりんごを見ると二人は力なくうなだれていた。俺たちより遅い三位と四位、じゃんけんで時間を取られてこうなったのだ。


走ったというより何度もじゃんけんをして声の疲労とストレスでうなだれている。


「だから言ったじゃない。じゃんけんなんて勝てるわけないって」


アリアさんが優雅に紅茶を飲みながら言う。しかしなんで星宝家の人だけテーブルと椅子が違うんだ、セレブだからか?


アリアさんがああ言ったのはじゃんけんを研究してるアリエに勝てなくて痛い目を見てるからだろうな。

今回もお読みいただきありがとうございます

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