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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
十三章 町内運動会
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百十六話 跳び箱の練習準備




店に戻ると絹江さんが言った。


「おや、もう帰ったのかい。練習はもういいのかえ?」


いつもより早い時間に戻ったので絹江さんも不思議に思ったんだ。


「跳び箱の練習するから家でやろうかなって」


「家に跳び箱はないよ、なに言ってんだい」


絹江さんが怒って言う。まあこれが普通の反応だろう。


「でも布団を重ねれば出来ないかかな」


りんごがめげずに案を言う。


「ほう、分かってるじゃないか」


すると絹江さんがニヤリと笑った。この笑みは、最初からこの方法があると分かっていたやつの顔だ。やっぱりこの人自分で毎年練習してるのかー。恐るべし絹江さん。


「なに?跳び箱の練習するの?」


店で留守番をしていたすももさんが食いついた。


「ああ、布団を重ねて跳び箱にしようと思うんだ」


りんごが答える。


「おー、あったまいー」


すももさんは素直でりんごの案を褒めた。


「そうだろうそうだろう」


すももさんに褒められ調子に乗ったりんごは腰に手を当てふんぞり返った。


その姿が俺をさらに怒らせた。こいつ、どんだけ調子に乗れば気が済むんだ。きっと後ろのアリエとシャロンも同じ気持ちだろう。


「上でやると危ないかんね、庭でシート広げてやんな」


絹江さんが練習に行く前に注意した。


「はーい。あたしブルーシート持ってくからみんなは布団持ってきてくれ」


りんごが俺たちに言う。


「わかった」


多少怒っているからと言って俺たちは逆らったりしない寛大さがあった。


二階の絹江さん、と旦那さんの寝室から敷布団と毛布の一セットを持っていく。ここは俺とすももさんが担当した。布団を運ぶなんで男の俺なら一人でも十分だ。すももさんも実生活でそれなりに筋力使ってるから一人で十分だ。


階を降りてリビングを経由、空いてる窓から庭にいるりんごに布団を渡す。


そういえばりんごの部屋に行ったシャロンとアリエは大丈夫だろうか。


「どうしたの、なにか心配ごと?お姉ちゃんが相談に乗るよ」


すももさんが可愛い子ぶって言う。そのポーズは置いておいても一つ気になった。


「勝手に人のお姉さんにならないでください。アリエのことですよ」


シャロンは一人暮らししてるから布団運びくらいわけなさそうだがアリエはお嬢様だからそういう力仕事はしなさそうなイメージがある。そのことを伝えた。


「あー、確かに。大丈夫かなあの子」


すももさんが俺の不安に同意した。


「ま、シャロンもいるし大丈夫だろ。別に二人で一つ持ってもいい」


りんごが楽観的に言った。


だが後から現れた二人の様子は俺たちの予想と違ったものだった。


「さあ下僕、庭までもう少しよ。踏ん張りなさい!」


「ははー!」


アリエが命令し、シャロンがそれにかしずいた。なんだこの主従関係は、いつの間にこんなものが出来ていたのか。


布団を運んでるのは二人がかりじゃない、シャロンが一人で運んでアリエが後ろでふんぞり返ってるんだ。


「はい」


「ああ」


シャロンがりんごに敷布団を渡す。


「では毛布の方取ってきます」


「ああ、悪いな」


シャロンとりんごがやり取りを交わす。


「行ってきなさい!」


「ははー」


アリエが命令した。だからなんなんだこの主従は。


毛布がさらに重なり跳び箱の練習をする準備が整った。

今回もお読みいただきありがとうございます

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