百十五話 跳び箱がなければ布団を使えばいいじゃないか、その一言が彼らを怒らせた
網くぐりの練習はハードルの時と違いすぐ終わった。教えるりんごがわからないのに長くは続けられないからだ。
時間が余ったのでどうするか、それをりんごに聞いた。
「ふっ、跳び箱の練習をする!」
わざわざ口から短く息出してドヤ顔で言ってきた。
ハードルも網もホームセンターで買ったらしきものがあった。だが流石に跳び箱はあるのだろうか。俺はりんごに聞いた。
「なに言ってんだ、布団があるだろう?」
馬鹿にする口調で返ってきた。
布団を重ねて跳び箱代わりにする気か。あの厚さなら折って二つか三つ重ねれば十分跳び箱になるが。
「ああ、確かに布団を重ねれば跳び箱になるな」
こう答える俺の顔はすごい歪んでいただろう。こいつ、さっきの網くぐりの練習といいなんでこんなに偉そうなんだ。すっごい腹立つ。
「ねえ、今日のあいつちょっと調子乗ってないかしら?処す?ねえ処しちゃいましょう?」
後ろでアリエがシャロンにギリギリりんごに聞こえない声で言った。なんだろう、井戸端会議の奥さんみたいな声に聞こえる。
だが最後の処すという言葉、女子中学生が処すなんて戦国時代でしか使わない物騒な言葉を使うんじゃないよ。確かにあのりんごは俺も腹立つけど、俺も処していいかなとは思ったけど。
ああ、だめだ。本当にりんごに殺意が湧いてきた。気がついたら拳も握ってる。こいつ、早く死なないかなー。
「いえ、やめましょうアリエ。獲物はもう少し泳がせてから仕留めるがいいでしょう」
シャロンの答えも物騒だった。獲物てことは何かめぼしいものが出たら仕留めるのか。
いや、この場合もう少し自分達を怒らせて限界になった時徹底的に痛めつけるという意味だろうな。ああ、恐い恐い。女子って恐い。
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