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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
十三章 町内運動会
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百十四話 網くぐりの練習


ハードルの練習はそんなにやらなかった。他の競技や基本的な体力作りが運動会の練習のメインだったからあの日のあの時間だけだった。


だが障害物競走にあるのはハードルだけじゃない。次の日にも俺たちは空き地に来た。そこでリュックを背負ったりんごはこう言った。


「今日は網をくぐる練習をやるぞ」


「網?なんでそんなもんくぐるのよ」


アリエがりんごの言葉に疑問をぶつける。今日は気まぐれらしくアリエも特訓に参戦だ。


こいつのジャージ姿とか初めて見たな。色は赤がメインでそこに白いラインが走っているものだ。お嬢様校とはいえジャージなのでそこはシンプルなデザインだ。


「ばあちゃんに聞いたら障害物競走には網をくぐるのも入ってるんだと。どうせなら障害物競走にあるやつ全部やらないとな」


りんごが答える。


「全部てあと何があんのよ」


「跳び箱とじゃんけんらしい」


「跳び箱と………」


「じゃんけん………」


俺とシャロンは残りの種目を復唱した。


「なんかどれもかったるいわね。特に網くぐるとか手が汚れて気持ち悪いわ」


アリエがむっつり顔で言う。


「え、じゃあ今日の練習パス?せっかく来たのに?」


アリエと一緒に運動出来ると思ったのにちょっとがっかりだ。


「悪いけどあんた達の頑張りを見物させてもらうわ。応援してあげるからせいぜい頑張りなさい」


「へいへい」


「はい、頑張ります!」


俺とシャロンは頷いた。だがなんて偉そうな応援なんだ。


今回使う網もホームセンターで買ってきたであろう大きな網だ。


しかしハードルの時も今回の網も妙に使いふるされてる感がある。まさか絹江さんが昔から練習用に使っていたのか?いや、まさかな、あはは………。


「どうした?」


「いや、なんでもない……」


俺の変な憶測が顔に出たのかりんごに怪しまれてしまったがなんとかごまかした。


りんごを手伝い地面に杭を打ち込んで網を固定する。


「網くぐりは平泳ぎの逆でやればうまくいく、やってみろ」


りんごが練習方を教える。


「いや、わかんねえよ」


「どういう意味でしょうか」


俺たちはその方法に疑問を唱えた。


「わからないのか?ほら、平泳ぎて手をこう、するだろう?その逆で、下から網を持ち上げるようにすればうまくいくと思うんだ」


りんごが身振りを交えて説明する。


「思うってことはあんたもわかってないのね」


アリエが突っ込む。


「あ、確かに」


「悪かったな、初めてなんだこういうのは」


りんごが気まずい顔で返した。てっきり教える側だから詳しいかと思ったらそうでもないんだな。


「とにかく、やってみればわかる!」


そして初めて教えるのになぜか強気になった。


「とりあえず、やってみるか」


「ですね……」


俺とシャロンは苦笑いした。


身体を地面に降ろし片手で網を掴む。網を頭の上に持っていく。片手が空いてるのでそれでまた網を掴み後ろに持っていく。


おっと、りんごは平泳ぎと言っていたな。グルグル回すようにしてみよう。すると思いのほかするする前に進んだ。


「お、すごい。行けるぞこれ!」


俺は思わず歓声を上げた。


「だろう?」


りんごが誇らしげに腰に手を当てた。さも当然という言い方だ。


「お前やったことあんの?」


「あ、ああ。学校の体育祭とかでな」


なぜかりんごは慌てたように答えた。


「うそね。さっき考えたって顔に書いてあるわよ」


アリエがりんごに指摘した。


「そうなのか」


「すまない、うそをついた」


りんごは少し間を置いて答えた。


クスッと鼻の鳴る音がした。アリエか?いや、あいつはクスッというよりフッとだ。この鳴らし方は違う。


しかしこの体勢じゃ周りを見づらい、早く網を抜けよう。


網を進んでると鼻を鳴らした本人の声がした。


「ごめんなさい、リンゴはてっきり真面目な方だと思ってましたから」


シャロンが謝る。


「なんだ、わたしが見栄とか張って悪いのか」


バツが悪そうにりんごが言う。


「いえ、可愛いと思っただけです」


その言葉にりんごは顔を赤くした。


「いや、可愛いくないし!」


そしてなぜか大きな声で否定した。

今回もお読みいただきありがとうございます

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