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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
十三章 町内運動会
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百十三話 ハードルの練習




次の競技は障害物競走だ、とその前に障害物競走の練習の話をしようか。


その時はなぜか近所の空き地でやることになった。最近の話題にはならないが猫とか桜の木があるあの空き地だ。


りんごは店を出ると巨大なリュックを背負っており、歩くたびにカシャカシャ音を立てた。


短い間だがそれが妙に気になっていた。カシャカシャ?こんなでかいリュックに入れてなにをやるっていうんだ?ていうかこのカシャカシャてなんだ?音楽でもやるつもりか?


「あのさ、なんで今日はここでやるんだよ。走るんじゃないのか?」


空き地につくと俺はりんごにここで練習するわけを聞いた。


「走るんだが普通の道だと邪魔になりそうなんだ」


りんごはそう言うとリュックを背中から落とした。同時にリュック本体のドサッという音と中身のカシャンという音が重なる。


普通の道だと邪魔になる?なにかを置く気なのか。置くにしてもいったいなにを置くんだ。


「えっと…そちらのものはいったい………」


シャロンがリュックの中身について聞いた。


「よく聞いてくれた。これが今日の練習メニューだ」


りんごがリュックを開ける。チャックのジャーという音と共に中から現れたのは細い板に金属の脚がついたものだった。


「これは………ハードル?」


俺はその物体を見て言った。


「ハードルだろ?」


りんごが確認させるように言う。


「ハードルというと体育で使うあのハードルですよね」


シャロンもそれの使う場面を確認する。


「そのハードル」


りんごが肯定する。


ハードルといえば直線距離に平行に並べて走りながら飛び越える競技だ。


「でもなんでハードル?意味わかんねえ」


俺たちは走る練習をしていたはずなんだ。学校の体育祭の時も町内運動会の練習もずっと走って体力をつけることからやっていたからな。


「ばあちゃんに聞いたら町内運動会には障害物競走があってその中にハードルがあるんだって。だから今日はそれを練習することにした」


りんごがハードルを持ってきた経緯を説明する。


「なるほど、ハードルを置くには普通の道路では邪魔になってしまう。だからこの空き地を選んだんですね!」


シャロンがここで練習する理由に気づいた。


「そういうこと」


ハードルを使ったりここで練習するわけはわかった。だがあのハードル、どこで買ったんだろう。やっぱああいうのはホームセンターかな。ホームセンターなら色んなものが売ってるし体育で使う道具があっても違和感はない。


「これを並べればいいんだよな」


俺はリュックからハードルを取り出した。


「ああ」


りんごが肯定する。


「わたしも手伝います」


そう言ってシャロンもハードルを取る。


ハードルを一つ置き、それを基準に離れた位置にもう一つが置かれる。それの繰り返しで並べていく。



準備が終わり、りんごがストップウォッチを構える。


「じゃあ葉月からだ、準備はいいか」


「ああ」


それからりんごによる猛烈な特訓が始まった。


「甘いな、その程度の加速ではハードルも飛び越えられないぞ!」


まず助走の時の速度について怒られた。


「あ、ああ」


頷いたはもののスタートダッシュから全力とかかなり疲れる。


「もっと足を上げろ!」


これはハードルを飛ぶために足を上げる運動をやらされた時の言葉だ。


「わ、分かってるって!」


強がりを言うものの足はもうくたくただった。


「はあはあ、やっべ、すげえ疲れた」


「もう動けませーん」


練習が終わった頃には俺もシャロンも地面に倒れるしかなかった。


「二人ともよくやった。褒美にカフェオレをやろう」


りんごが水筒からコップにカフェオレを入れる。このカフェオレは運動に疲れた身体を癒すため塩を入れて砂糖を多めに入れるという変わった味付けだ。体育祭の練習の時からりんごはこれをくれる。


「ありがとう」


「ありがとうございます」


俺たちはお礼を言ってコップを受け取る。


ゴク、ゴク、疲れた身体にカフェオレが染み渡る。


「ふー」


一気に飲み干してコップを地面と平行にする。飲み終わって微妙な顔になった。


「あのさ、やっぱこのコーヒー甘すぎね?」


俺はりんごに味の感想を言った。


「そうか?糖分補給にはいいと思うが」


どうやらりんごにはこれがちょうどいいらしい。


「いや、そうだけどさ……」


シャロンを見ると気持ち悪そうに舌を出していた。正確には甘すぎると言ったところか。ただでさえコーヒーに牛乳が混ざって甘くしてるのにそこに大量に砂糖を入れれば甘さが限度を超えるというものである。


むしろ砂糖の固まりをそのまま舐めてる感覚だ。頭にびびっと来る。

今回もお読みいただきありがとうございます

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