十話
今日はどうしようか、やはり昨日すももさんにああ言われた手前カフェダムールに行きづらい。
とはいえ家でじっとしてるのもつまらない、ひとまず俺は外に出てみることにした。
「なっなんだ?!」
ダダダダ!
大きな音を立てながら黒い服を着た連中が出てきて俺を取り囲んだ。
「え?」
そして腕をガシッと掴まれ連行される。
「ちょちょちょ、えー?!」
わけがわからず俺はなすがままになる。
連れてかれた先には大きな二回建ての店がありメイド喫茶スターとある。
メイド喫茶?こんなのあったのか、ちゃんと近くの店をくまなく見たわけじゃなかっから気づかなかった。
「ささっ、どうぞ」
「あ、どうも」
黒服の人に勧められて中に入る。
パンッ、パンパンパン!
盛大にクラッカーの音が鳴った。そしてくす玉割られ中のちり紙が降ってくる。
『五百人目のお客様おめでとうございます!』
くす玉の紙と同じ言葉が大勢のメイドの形をした人たちから出迎えられる。
「よく来たわね五百人目の客人、よくよく歓迎するわ」
目の前に他の人と同じメイド服を着た金髪の女の子がいた。背丈から歳は高校生ぐらいか。
「五百人てなに?なんか祝ってくれんの?」
俺は目の前にいる女の子に聞いた。
「よく聞いてくれたわね。この店では五百人目、千人目の客には特別にその来店の注文を全てタダにしてるのよ」
「マジで?!タダで食わしてくれんの?」
急に黒服に連れてかれたとはいえタダ飯が食えるというのはかなりありがたい。
「その通り。そして…………」
女の子がスっと券を取り出す。
「これがタダ券よ、全部で三枚あるわ」
「三枚?てことは………」
「そう、今日だけじゃなくあと二日タダで食事が出来るわ」
「おー」
「無くさぬよう大事に使いなさい」
これはいくらなんでも大盤振る舞い過ぎる気がするが貰えるものは全力で貰っておこう。
「席はこっちよ」
女の子が案内をして俺はその席に座る。
「さ、メニューを受け取りなさい」
メニューを受け取る。中身は メイドオムライス、メイドハンバーグ、メイドチャーハン、メイドパフェ、メイドケーキ、フローズンドリンク等々だ。
なんでもメイド付ければいいってものじゃない気がするんだが……………。フローズンドリンクがあるのは珍しい、あっちの店にはなかった。
さて何を食べようか、俺が悩んでると女の子が話しかけてきた。
「いつまでメニュー見てるのよグズ!そんなのも出来ないのも?だらしないわねぇ」
女の子は蔑むような目でこっちを見てきた。だがどこか無理があるというか、恥じらいを見てとれる。
「えっと、そういうサービスなの?」
躊躇いがちに聞いてみた。
「あっ、えっ、そ、そんなことあるわけないじゃない!そんなサービスないわよ!」
顔を真っ赤にして否定してきた。
「すいませーん」
近くの席で店員を呼ぶ声がした。
「ご注文はお決まりでしょうかご主人さまー」
店員がさきほどの客に近づく。どうやら俺の目の前にいる女の子とは別の対応をしていたようだ。
「もしかして選べばそういうサービスもある?」
「だからそんなサービスはないって言ってるでしょ!」
全力で否定されてしまった、さっきのはいったいなんだったんだ。まあいいか、今度こそメニューを…………。
グゥ~。
腹の虫が鳴った、もうそんな時間か。
「まったく無様ねあなた、チャーハンでも食べたらどう?」
「なんでチャーハン?」
「ふ、この店のチャーハンはプロの料理人の指導を受け安価でありながら素材から調味料、火加減、調理時間………」
その後もうんたらかんたらと説明は続く。なんでこの店はチャーハンに異様なこだわりを持ってるんだろうか。
「じゃあチャーハンでも頼もうかな」
「チャーハン一つですね、お飲み物はいかがしましょうか」
ここはせっかくだ、普段飲まないやつでも頼むか。
「フローズンメロン一つ」
「フローズンメロンですね。注文繰り返します、メイドチャーハン一つ、フローズンメロン一つでよろしいでしょうか」
「はい」
「かしこまりました。チャーハンの方は少々時間かかりますがご了承ください」
女の子が立ち去る。チェーンのファミレスの場合作り置きを冷凍したものを解凍すると聞いたことがあるがここではもしかして一から料理を作っているのだろうか。
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