百二話 アリエの文化祭
鳳凰院学院大文化祭当日、俺はりんごやすももさん、シャロンや新井、山崎や飯山と来ている、来ていたのだが……………。シャロンはお嬢様学校の文化祭に興奮して暴走、りんごがついていく羽目になり同じく山崎も好き勝手に行き初め飯山がそれについていき残ったのは俺以外に新井とすももさんだけになった。
「どういうことだよ、どうしてこうなったし」
「まあいいじゃねえか。俺達は俺達の文化祭を楽しもうぜ」
新井が俺の肩を叩いて言う。
「ま、そうだな」
「そうそう、マイペースが一番だよ」
すももさんが両腕を前にして言う。
「いやー、すももさんがいてくれるなんて感激っすよー、美人なお姉さんと文化祭回れるなんてサイコーっす」
新井が頭の後ろをかきながら言う。
「ええ、そう?わたし美人?」
すももさんが照れたように言う。うわ、知り合いに言われることあんまないから調子に乗ってるな。よし、ちょっと意地悪するか。
「残念だが、この人お前よりも俺のが好きらしいぞ」
俺は新井に言った。
「なんだってー!?それは本当ですかすももさん!」
衝撃を受けて新井がすももさんに詰め寄る。
「うん、まあ、そうなんだけどね」
すももさんは気まずい顔をした。よし、これでいい。
「なんてやつだ君嶋!金髪美少女のアリエちゃんと付き合ってるどころかすももさんにも好かれるなんて!なんて羨まけしからん!」
二人の女性に好かれてるという事実が新井を激怒させた。
「いや、すももさんはいらないからやるよ。持って行っていいぞ」
「いらないって、そんなはっきり言わないでよもー。流石にひどいよー」
すももさんがプンプンと怒る。
「俺もちょっと引いたわ」
新井が言う。じゃあどうしろと言うんだ。
「はあ、とりあえずアリエのとこに行くか」
俺はため息をついてから言った。
「来て早々彼女のところかよ」
「わりいかよ、あんま待たせたら悪いだろ」
「真面目だなー葉月くんは」
すももさんが俺の頬に肘を当ててくる。
「真面目で悪かったですね」
俺は嫌味を入れて返した。
☆
事前に聞いていたアリエのクラスについた。扉についている看板の字を読む。
「地中海風喫茶?」
「喫茶店、やっぱあの子もコーヒー好きなのかな」
「どんなコーヒーを出すんでしょうね」
すももさんと新井が盛り上がる。いや、気にするのはそこじゃないだろと思いつつ中に入る。
「いらっしゃいませ、五名様ですか?」
派手な刺繍のついたどこかの民族衣装を着たウェイトレスが出迎える。
その時に確認された人数が気になり振り返る。
「え、五名?」
するとシャロンとりんごがいた。
「お前らいつのまに」
「姉貴に呼ばれたんだよ」
「わたしもアリエの催しに行ってみたいですから」
二人が答える。
「飯山と山崎は呼ばなかったんですね」
「あ………」
すももさんから忘れてたというような返事が来る。
「うわ、あいつら可愛そう」
新井が二人に同情する。
「まあ、俺が呼んどくよ」
席に案内されメニューを渡され中身を確認する。地中海風リゾット、イタリアンモツ煮込み、牛のシェリー煮、ミネストローネがある。
「なにこれ。え、これがここのメニュー?」
すももさんが首を傾げる。
「地中海風てこういうことか」
「我が国フランスもですがイタリアやスペインも地中海沿岸の国々なんですよ」
シャロンが得意気に言う。
「へー、そうなのか」
俺は話には加わらず一人辺りを見渡していた。
「どうしたそんなキョロ充して」
りんごが奇妙な動詞で俺の動きを指摘する。
「ちょっとー、みっともないよー」
すももさんは嗜めるように言ってきた。
「いや、アリエがいないなって」
「どうせ裏方にでも回ってんじゃねえの?」
新井が言う。
「なるほど」
ん?何か妙だな。先ほどから周り、しかもこのクラスの人間が騒がしい。何かあったのか?
「待たせたわね!」
「うわあ!」
そうこうしてると当のアリエ本人が現れてびっくりした。
「なによ、人の顔見るなに変な声上げないでよ。失礼ね」
アリエが怒って言う。
「わりい、てっきり裏方かと思ってたから」
「実際裏方よ。でも、あんたが来てるのに出ないわけにはいかないでしょ」
「ご苦労なこった」
そう言う俺の言葉は自然とほころんでいた。
「で、何食べるの?」
「わたしリゾットー!」
「じゃあ俺も!」
「わたしも同じのをください」
新井とシャロンがすももさんに続いた。
「リゾット三つね」
「あたしはこのモツ煮込みを」
「イタリアンモツ煮込みが一と」
りんごめ、モツ煮とは粋な真似を。
「あんたは?」
アリエが残った俺に聞いてくる。
「そうだな………」
ここはまだ選ばれていない第三の選択肢と行くか。
「ミネストローネを一つ」
「ミネストローネね、飲み物は?」
「あ………」
言われてここにいる五人全員が目を合わせる。そういえば飲み物のことは考えてなかったな。
「飲み物て何があんだ?」
「イタリアンローストコーヒーよ」
「イタリアンロースト?!」
りんごが声を上げた。
「なによ急に大声上げて」
すももさんが驚く。
「イタリアンローストと言えば数ある焙煎方法の中でも一番濃いやり方だったはずだ」
「焙煎が濃いとどうなんだよ」
新井が言う。
「確か苦くなるんだっけ」
俺が指摘した。
「そう、イタリアンローストは一番濃いから苦味もかなりのはずなんだ」
「で、その苦いのをここに置いてると」
「ええ」
「他には?」
「カフェオレとかあるわよ」
「じゃあそれにしようぜ」
新井が提案する。
「うん、それにしよ」
「苦過ぎるのは流石に避けたいですね」
すももさんとシャロンが同意する。
「いや、ここはブラックだな」
「あたしもそれで」
俺にりんごが続いた。
「ええ!?」
「マジかよ……」
その選択にすももさんと新井が驚いた。
「ミルクや砂糖は後からでも足せるからな」
「最初は元の味を楽しみたいんだ」
「へー、変わってるね」
「カフェオレが三つとブラックが二つね」
アリエが食べ物から注文を繰り返す。
「他に注文はない?」
「ない」
「同じく」
「じゃあ、作ってくるわね」
アリエが席を離れる。
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