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僕とカフェダムールの喫茶店生活  作者: 兵郎
1章カフェダムールへようこそ
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九話




日も落ち夜になった。さて、そろそろ夕飯でも作らないとな。と言ってもレトルトのカレーだが。


鍋に水を入れ沸かそうした時インターホンが鳴った。


「はーい」


インターホンの受話器を取る。


『佐藤です』


隣の家の佐藤礼子さんの声だ、確か小学生の娘さんと単身赴任の旦那さんがいるんだったか。


『ねえ、葉月くんて晩御飯まだだったかしら?』


「ちょうど料理始めようとしてたところです」


レトルトが料理と呼べるのか厳密には謎だが広い意味では料理には違いない。


『ならうちで食べていかないかしら?』


「え?」


俺は佐藤さんの意外な提案に目をパチクリさせた。



『いただきます!』


俺は佐藤家で礼子さんや礼子さんの娘の美結ちゃんと一緒にレトルトじゃないカレーを食べることになった。


一人暮らしだと料理も大変だろうとこで礼子さんが誘ってくれたんだ。


「ねえねえ、葉月お姉ちゃんの学校てどんな感じなの?」


美結ちゃんが聞いてくる。


いや、お姉ちゃんじゃないから。


「こら、お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんでしょ」


俺がそう言おうとした時礼子さんが美結ちゃんをたしなめた。


「えー、お姉ちゃんじゃないのー?可愛いのにー」


「え…………」


美結ちゃんに言われて俺のスプーンが止まった。


そうだ、思い出した。俺は名前だけじゃなく顔まで女ぽいんだった、間宮家の人間には指摘されなかったから完全に忘れてた…………。この外見のせいで今までどんなに苦労したか…………。制服買おうとした時は最初女の制服渡されるわ中学では同じ男から避けられるわ不幸しかない。


高校進学しても上手くやってけるだろうか不安になってきた。


「ごめんなさいね。うちの子も悪気があるわけじゃないのよ」


礼子さんが美結ちゃんの代わりに謝る。


「いいんですよ、慣れてますから………」


そして俺の耳元で言った。


「今度わたしの服着てみてくれないかしら?」


「はい?」


「冗談よ冗談」


「ははは…………」


このお母さん優しいようでどこか恐い。


「ねえ、葉月お兄ちゃんの学校てどんな感じなの?」


美結ちゃんが言う、今度は男扱いしてくれた。


「ごめん美結ちゃん、まだ春休みで入学してないから分かんないんだ」


「へー、でも今時ネットでも見れない?ほらタブレットとかパソコンとか」


美結ちゃんの言葉にハっとする。確かにネットなら学校の噂やスレ、裏サイトも載ってそうだ。ネットで学校のことを調べようとする辺り今時の女子小学生というのは恐い。


「でも悪い噂とかあったら恐いしやめとくよ」


「そうだね、いじめとか陰口があったら恐いもんね」


「う、うん…………」


さらっといじめとか陰口という言葉が出る女の子てやはり恐いな。


スマートフォンの着信音がなった、種類からして電話か。画面を見るとすももさんからだった。


二人に断りを入れて席を離れる。


「はい」


『ねえねえ、晩御飯まだだったりするかな』


電話口の向こうは何かを期待するような楽しそうな声だった。


「今食べてるとこです」


『どこで?やっぱり家?』


「隣の人のとこです」


その時電話の向こうからプッツンて音が聞こえた気がした。


『ふーん、葉月くんはわたしの手料理より隣の人の作った料理のがいいんだぁ』


呪うような声で言ってくる。


なぜ会って三日の人の手料理でここまで言われなきゃならないんだろう。ケーキだっていちごしか乗せてないんじゃなかったじゃないか。


『もいい!葉月くんなんて知らない!知らないからね!』


怒鳴る声がするとツーツーと電話が切れた音が聞こえた。


なんだったんだ今の………。


礼子さんと美結ちゃんのところに戻る。


「電話誰から?」


美結ちゃんが聞いてくる。


「喫茶店のお孫さんからです」


「喫茶店?個人経営の?」


礼子さんが聞く。


「はい、カフェダムールて言うんですけど知ってます?」


「あそこの?あの店ておばあちゃんが一人でやってたはずだけど………」


「最近息子さん夫婦が事故で亡くなってお孫さん姉妹を引き取ったみたいです」


「葉月お兄ちゃん最近出来たばっか同士の人なのにカフェダムールのお孫さんと仲いいんだ、すごいね!」


美結ちゃんが僕を褒める。


「まあね、向こうが人懐っこい性格てのがあったけどそれでもすごいと思うよ」


「でも、喧嘩してたような声聞こえたけど?」


僕は事情を説明する。


「うわあ、お兄ちゃんも大変だね」


「うん」


これからあの喫茶店行くのが危ぶまれるかな、行ったら行ったで怒られそうだし。

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