5話:更なる仲間
今回も話が少しグダグダになってしまった気がします……(汗)
少し長いかもしれません!(-ω-;)
〜人間界〜
竜人兵との戦闘に勝利し、大量の経験値を得た事で一気にレベルが20上がった。
新スキルの「跳躍LV1」も習得した。
このスキルは、名前の通り自身の跳躍力が上昇するものだ。
所持しているだけで効果が発動する常時発動系のスキルである。
LV1では横方向へは木から木へと飛び移る程度にしか使えず、上方向へは敵の頭上を飛び越える程度だが、隠密スキルと合わせると索敵目的ではかなり需要度が上がる。
そして俺は現在、一時の協力関係を結んだ事により、竜人兵との手合わせを行っていた。
三匹のゴブリンも連れてきたので、俺が手合わせをしている間はそいつらに竜人兵の見回りの代役をさせている。
とはいえ、ゴブリン達にまともな戦闘は出来そうに無いので、侵入者を発見したら即座にここに知らせに来るだけの役目だ。
俺との戦闘はグレアからしても良い戦闘経験になると言うことで、一時間ほど連続で戦闘を続けていた。
『貴様、やはり強いな。我が竜人兵の兵長を務めてからというもの、この我の攻撃が一度も当たらぬ相手は貴様が初めてだ』
確かに、普通の人間にコイツの攻撃を全て避けきれる者は熟練の冒険者でもなかなか存在しないだろう。
『まぁな。だがお前もかなり筋は良い。鍛錬を積めばまだまだ強くなれる』
『フン……偉そうに言いおって。
まぁ良い。鍛錬を重ね、いずれお前を追い抜かす程の実力を身につけてやろう』
こいつもあと十数年……いや、数年あれば今の俺と対等にやり会えたと思う。
それ程までにこのグレアという竜人は戦闘の才能に秀でていた。
戦う度にグレアの戦闘力が増していき、俺が貰える経験値も増えていった。
『よし……結構経験値も溜まってきただろうし、そろそろ切り上げるか』
俺はそう言って手合わせを終了しようとしたが、
『いや、もう少し戦らせてくれ。もう少しで我の魔装が完全に近づけそうだ』
と、グレアから続行の申し出をされた。
こちらからしても、経験値は手に入るのでもう一戦だけする事になった。
そして今、最終戦を行っているところだ。
いつもと同じく、グレアは魔装の為の魔力操作に集中する。
『ハァァァァ……』
最初に見た時同様、持っている槍が段々と鮮やかな青色に発光してゆく。
しかし、戦闘を重ねる内にその色は濃くなっていき、攻撃力も速度も増していた。
『ハァッ!』
と気合を槍に込めた瞬間、グレアの体内や周りの空間に流れる魔力が目に見える形で槍に集束していく。
そして今までの戦闘の中で一番強く、魔力が槍に宿った。
『いくぞ!』
グレアはそう言うと共に、俺に向かって全力で槍を振るった。
槍を振る速度も最速で、俺の動体視力でも残像が見えている。
俺は槍を剣で受け流す。だがグレアはすぐに次の攻撃を繰り出してきた。
何度も俺に襲いかかってくるグレアの槍を受け流し続けるが、動作が早く隙がなかなか出来ないので俺としても攻めるタイミングが掴めずにいた。
……これは流石に二刀流を使わなければ厳しいか?
『流石は竜人兵ハーフドラゴンナイトのリーダー、かなり早くなったな。だが、そろそろこちらから行かせてもらおう!』
腰に携えた二本目の剣を抜き、両の剣で槍を受け止め弾いた。
『……クッ!』
槍の勢いを止められ、グレアはすかさず槍を構え直そうとする。
しかし、俺はその構えるまでの動作を見逃さない。
ようやく作った隙を見逃さず、「高速移動」で間合いを詰める。
そしてグレアの懐に潜り込み、グレアの首元目掛けて片方の剣を振った。
しかし当然、本気で切りつける気は無いので首の前で寸止めする。
『クッ……今度こそ魔装は完璧だったハズだったのだが……我が認めただけあって、流石に強いな。
今の魔装すら通用しないとは』
自身の首の前で止められた俺の剣の先を見つめながら、悔しそうにグレアが言った。
『いや、俺も途中まで攻撃を防ぐので精一杯だった。もし所持している剣が一本のみだったら負けていたのは俺の方かもしれない』
実際、二刀流を覚えていなかったら相当な苦戦を強いられていただろう。
それ程までにグレアの魔装は完璧に近かった。
『フッ、貴様なら二刀流を使わなくとも我に勝利できるだろう。だが今の一戦は今までで一番の経験となる手合わせになった。
こちらが協力する側とは言え、貴様のお陰で我にも力が身についたぞ。
それと、約束通り貴様に「竜眼」をくれてやろう』
グレアの言葉に反応して、竜人兵の一匹が完全な球体をした綺麗な水晶を持って俺に手渡しした。
『この命ある限り、貴様の名と顔を忘れる事は無いだろう。
また何時でも訪れるがいい。貴様なら喜んで歓迎しよう』
『ああ、俺も世話になったな。突然訪れていつまでもここに長居する別にもいかないし、そろそろ出ていくよ。何時かまた会おう』
そう別れを告げ、三匹のゴブリンと共に竜人ハーフドラゴンの生息する湿地帯を離れたのであった。
竜眼ドラゴンアイズを貰った時に出現していたが、会話の最中だったので開かなかった通告を確認する。
⦅竜眼に『戦利品増加LV2』を反映させますか?
YES/NO⦆
「戦利品増加」スキルは、ステータス表からスキルの反映をするのか否かを選択するシステムだ。
何故選択の必要があるのかと言えば、『収納スキルや手持ちのバッグには収納できる限界があるので、むやみやたらと戦利品を増加させると手持ちが有り余ってしまうから』である。
今の通告はその選択を問うものだったようだ。
まだ麻袋の収納には余裕があるので、当然『YES』と心の中で答える。
すると、右手に持っていた竜眼が青く輝き出した。
竜眼の輝きが収まると、右手に持っていた水晶の色が透明から青色に変わっていた。
『戦利品増加』スキルの影響によって性能が上昇したのだ。
⦅竜眼を龍精眼に変換しました。⦆
龍精眼か。
この水晶を通して凝視した相手の詳細なステータスを可視化する上、相手体内や空気中に流れる微細な魔力まで可視化できるというものだ。
再び平原に戻り、ステータス表を確認するとレベルが一気に58も上がっていた。
転生してきた最初のレベルと比べて、合計で85の上昇になる。
各ステータスの変化は以下の通りだった。
《基本ステータス》
名前:クロト
種族:人間
武器:剣×2
属性:闇
レベル:205
攻撃力:160
防御力:120
俊敏性:130
魔力:80
《スキル》
ダメージ軽減:LV2
自動回復:LV3
戦利品増加:LV3
隠密:LV3
高速移動:LV2
跳躍:LV1
収納:LV1
《固有スキル》
闇属性耐性
《新スキル》
索敵:LV1
いつの間にかダメージ軽減などのスキルレベルが上昇している様だった。
スキルはレベルが一つ上昇するだけでも、かなり実用性が伸びてくれるので嬉しい。
戦利品増加スキルが無いと、これほど早いスキルレベルの上昇は無理だっただろう。
その戦利品増加スキルが3に上昇してくれたのも相当に大きい利益だ。
やはり竜人はそれ程の経験値に見合った戦闘力が備わっている種族だった様だ。
……とは言え、魔王だった頃の俺を仮に人間が倒す事が出来たなら、竜人とは比較にならない程の経験値が手に入るのだが。
それにしても、早めに魔法が使えるようになりたい。
俺が魔王だった頃には、攻撃系魔法の他に便利系魔法も覚えていたので魔法さえ覚える事ができれば相当楽になるんだが……。
やはり魔王だった頃と同じ感覚で魔法を使おうとしても上手く発動出来ないのであった。
やはり、魔法を扱う人間に教わるしかないのだろう。
経験値稼ぎは完了したので、現在はミゼア大国を目指してゴブリン達と旅を続けていた。
ゴブリン達が俺の持っている龍精眼ドラゴニア・アイズを興味津々に見つめてる。
『ニイチャン、ソレ、キレイナ スイショウ ダナ』
『オレタチニ クレヨ!』
『オレモ ホシイ!』
どうやらコイツらは食料だけでなく珍しいアイテムも相当に欲しがるようだ。
しかし、せっかくグレアが俺を認めて渡してくれたのを容易に手渡すわけにはいかない。
『悪いな。これは俺を認めてくれた竜人ハーフドラゴンから貰った物だ。
一時的とは言え、協力関係まで結んでくれた者から折角受け取った物を渡す事はできない』
『ヤッパリ……。マァ、ハーフドラゴン タチモ イイヤツ ダッタカラナ』
『ソレハ ニイチャンノ タカラモノ ダナ!』
下位種族のゴブリンである自分たちを寛容してくれた竜人の優しさがゴブリン達にも伝わっているようで、俺の言葉をすんなりと了承してくれた。
しかし、こいつらを旅に同行させる時に、戦利品の半分を……と約束しているので、このまま何も渡さずに別れる訳にはいかないな。
『ゴブリン達、お前らが持ってる剣を貸してくれ。』
『ン? コノ 剣ケンガ ドウカシタノカ? 』
俺の意図を読み取れずに不思議がりながら、ゴブリンは俺に剣を渡す。
俺はステータス表を開き、「戦利品増加」スキルの欄を開いた。
⦅『戦利品増加』を石剣に反映させますか?
YES/NO⦆
当然、心の中でYESと返答する。
その瞬間、ゴブリンに渡された剣が魔装の時のように淡く発光し始めた。
少しの間、淡い光を放った剣が突然閃光を放った。
その光を遮るために俺は目を閉じ、数秒の間を開けて目を開くと、俺の手には先程まで石で作られた粗悪な剣だったとは思えない、鉄で造られた精巧な造りの剣が握られていた。
ゴブリンの剣が強化されたのだ。
『戦利品増加』スキルは、戦って勝利した相手から受け取ったアイテムや武器ならどのタイミングでも強化できるのだ。
当然、強化できる程度には限界があるが。
ゴブリンの剣は、最大強化で石から鉄に変わるぐらいだった。
『悪いな、戦利品を渡す約束は守れないが、代わりにこれで我慢してくれ』
『ス、スゲエ! コノ剣、メチャクチャ ツヨソウダ!』
『ニイチャン スゲー!』
『オレノ 剣 ニモ ヤッテクレヨ!』
残り2匹のゴブリンの剣も同様に強化させた。
今まで手にした事も無かったであろう、上質の武器を目にしたゴブリン達はまるで欲しかった玩具が手に入った子供の様にはしゃいだ。
多分、適当な魔族生命体の角とか牙程度の戦利品を期待していたのだろう。
角や牙は武器強化をしたり、強力な武器を制作する時の素材になるから冒険者達なら誰でも欲しがるのだ。
さて、これで竜人ハーフドラゴンまでの道案内もしてもらったし、約束の戦利品は先程強化した剣で満足して貰えたので、これ以上ゴブリン達が俺についてくる義務は無いのだが……。
『俺はこれからミゼア大国に向かう。だがお前達はどうする?案内はしてもらったし、戦利品も渡したからこれ以上俺についてくる必要は無いだろう?
それに、ミゼア大国に魔族生命体が受け入れて貰えるかわからん。俺に付いてきてもお前達が入国できるかどうか……』
ゴブリン達は三匹でどうするか話し合う。
少々時間がかかったが、どうやら意見がまとまったようだ。
『ソウダナ……スコシ サミシイケド、オレタチハ 村二 カエルヨ』
『そうか……短い間だったが、旅に付き合ってくれて助かった。
また何時か会えるといいな』
『オウ! オレタチハ、サイショニ ニイチャン二 デアッタ トコロノ チカクニ アル モリニ スンデル。』
『イツカ モリニ ヨッテイッテクレヨ!』
『ああ。……そうだ。そういえば、お前達は
最初に食料を求めていたな。
俺も沢山持っているわけじゃ無いが、少し分けてやろう』
三匹のゴブリンの腹を満たせる程度の肉や野菜を渡した。
ゴブリン達は俺に感謝しつつ、別れを告げた。
俺もゴブリン達にも竜人ハーフドラゴンとも、また会える日が来ることを願って旅を再開したのであった。
旅を再開して三十分。ここまで魔族生命体に遭遇すること無く俺は順調に足を進めていた。ゴブリン達に遭遇した事や、竜人に出会うために少し道草を食ってしまったが、レベル2に上昇した『高速移動』で移動しているので、リーズ町を離れる前に想定していた時間よりも少しだけ早くミゼア大国に到着しそうだった。
レベル2の『高速移動』は、百メートルの距離を十秒で走る程の速さで三十秒ほど持続して走れるようになる。使用した後、再び使用可能となるまでに一分間の間隔をとる必要があり、レベル1より間隔が長くなったが、長距離を移動する際にはレベル1と比較してもかなり楽になった。
魔法の身体強化は下手に扱うと付加された者の身体に悪影響を及ぼす場合があるのだが、高速移動の場合はスキルが切れても筋肉痛になる等のデメリットが一切ないので、スキルが切れた後も通常通り走ることが可能だ。
そして一分後にまた高速移動ができるので、徒歩でも中々の移動速度となる。
高速移動スキルを使用しつつ、ミゼア大国に向かっていると、ミゼア大国から十キロメートル程離れた地点で、俺の近くに敵の殺気を感じて足を止めた。
「……近くに隠れているのはわかっているぞ。出てこい」
俺が大声で言うと、殺気を更に近距離に感じた。
敵が自ら俺に近づいてきたのだ。
しかし次の瞬間、俺は複数の殺気を察知した。
やがて敵の姿が見えると、俺の周りを円を描くように、魔狼種ビーストの群れが俺を取り囲むように整列しているのが確認できた。
周りを見回し、敵の情報を把握する。
頭数は……十二匹か。
《…此処は我々の縄張りだ。足を踏み入れるとは…何用だ? 人間。》
頭に直接話しかけられる感覚。
人間の言語だった。
……この感覚は、固有スキルの精神感応テレパシーか。
スキルレベルが低い場合、数人の仲間としか会話が出来ないが、俺に話しかけられるという事はこの魔狼種の精神感応は相当にレベルが高いのだろう。
更に、もしも俺と会話しながらこれ程の頭数とも会話出来ているというのなら、今俺に話しかけている魔狼族の精神感応のlvは確実に3以上。
魔狼種は数匹〜十数匹のグループで縄張りを張り、精神感応で指示を与えつつ獲物を狩る習性がある。
俺を取り囲んでいる魔狼種ビースト達は、鋭い眼光を放つ双眸で俺を睥睨しつつ、ガルルル……と呻き声で威嚇している。
体長は…尾を入れて150〜160センチ程度か。
「ここはお前らの縄張りなのか。無断で足を踏み入れて悪かった。
俺はこの先のミゼア大国に用があって旅をしている最中だ。
無益な争いは避けたい。悪いがここを通して貰えないか?」
弁解しようと台詞を言い終えた瞬間、魔狼種ビーストの一匹が高速で俺の目の前に移動し、鋭利な爪を振り下ろそうとしていた。
俺は咄嗟に反応し、片方の剣を抜いて防御する。
大きい金属音が鳴ると共に、俺の腕に目の前の魔狼族の強い力が剣から伝わった。
《なっ……!まさか我の一撃を受け止めるとはな。人間とは思えない反応速度だ》
奇襲に失敗した魔狼種は、高速移動で俺から後退する。
「突然爪を向けて襲ってくるとは、中々に珍しい返答の仕方だな。
答えはノーだと受け取れば良いのか?」
俺が若干の皮肉を込めつつ尋ねると、リーダー格らしき魔狼種が精神感応で話しかける。
《我々は誇り高き種族。他種族に領地を踏み荒らされたままでは示しがつかぬ。
貴様にはここで息絶えてもらう》
「まぁ、通してくれる気がないのなら無理にでも押し通るまでだ。
切られたい奴からかかってこい」
……実際は極力相手を傷つけるつもりは無いのだが、折角ここまで来たのだ。
多少強引な手段を用いてでも通してもらう。
俺は集団で襲いかかる魔狼族ビーストの群れを一対複数の形で相手をしていた。
それから十数分後。
戦闘不能に陥った十二匹の魔狼種ビースト達の中心に、二本の剣を握った俺が立っていた。
少々厄介な相手だったが、どうにかダメージを負わずに全員を捌ききったのだ。
当然、一匹たりとも殺していない。
流石にやむを得ず切ってしまった者もいるが、手加減はしたので普通に生きている。
魔狼族は強い治癒力もあるので、数日で完治する程度の傷だろう。
《貴様、人間では無いな……? 有り得ん戦闘力だ……。まるで…魔界に生息している上位魔族のような……》
戦闘不能に陥りながらもかろうじて意識を失っていないが、地面にひれ伏しているリーダー格の魔狼種ビーストが尋ねる。
「いや……俺は人間さ。ただ、王国の兵士よりも多少の戦闘経験があるだけだ」
そう。人間よりも戦闘経験が豊富なのだ。
……俺が魔界から種族間戦争を無くした時からも一応戦闘の腕は磨いていたので、百数万年程の戦闘経験があるのだが。
……どう考えても多少どころでは無いな。
そもそも人間と比べ物にならない。
《フッ……そうか……我々は…戦闘を仕掛ける相手を……間違えた様だな……》
グググ……と、リーダー格の魔狼種は力を振り絞るかのようにゆっくりと起き上がる。
やはりこいつは他の魔狼種ビーストと比べて戦闘力が飛び抜けてるな。
ほぼ正確にツボをついたはずだが、起き上がってくるか……。
ただ、流石にこれ以上戦闘を仕掛けるつもりは無いようだ。
と言うか、まず満足に戦闘を続行出来る様な状態では無さそうだが。
《貴様の力を認めねばならんな……。我々は強者に敬意を払う主義がある。貴様の力に服従の意を示す。
可能な限り、我々は貴様の如何なる頼みにも従おう》
どうやら、この魔狼種ビースト達は格上と認めた者の意思を守り抜く主義を徹底しているらしい。
まぁコイツらの忠誠心に見合う程のものを頼むつもりは無いのだが。
嬉しい事に、戦闘中に俺が判断した限りでは、ここに居る魔狼族全員が『高速移動』スキルのレベルを4〜5に強化している様だ。
そもそも魔狼種は『高速移動』スキルの適合率があらゆる種族の中でも非常に高いのだ。
ここに居ない魔狼種の中で、『高速移動』スキルのレベルを5に上げている者がいても何ら驚くことでは無い。
この魔狼種達に乗せてもらえれば、ものの数十分でミゼア大国にたどり着くことも可能だろう。
「なら……俺をのせてミゼア大国まで連れて行ってくれないか?
お前達の高速移動はかなり優秀だ。是非ともその力を貸して欲しい」
《……そんな事でいいのか?我はこの生命を貴様に捧げる事も覚悟していたのだが……》
お……おう……。
流石にそこまで忠誠心があるとは思わなかった。
どうやら俺の要求は魔狼族にとって非常に程度の低いものだった様だ……。
「ところで、お前の仲間は全員気絶しているが、今すぐでも頼めるのか?
短い間とは言え、目覚めた頃にリーダー格のお前がいなくなっていたら混乱するかもしれないだろ?」
集団行動を基本的戦闘態勢にしている種族にとって、リーダーの不在は致命的な事態だと言える。
それは、これ程戦闘慣れしている魔狼族にとっても分かり切った事だろう。
《問題ない。我の精神感応は遅延して伝える事もできる。
皆が目を覚ましても混乱する事態にはならない》
便利な固有スキルだな。
特に問題ない様なので、早速乗せてもらう事にした。
《そうだ。我の名はガウルだ。よければ、貴様の名も聞いておきたい》
「俺の名はクロトだ。少しの間、協力を頼む」
そうして俺と魔狼族は、竜人の時のように一時的な協力関係を結んだ。
……いや、一時的ではなく、仮に今度出会った時にも協力してくれるであろう。
突然の戦闘だったが、更に仲間が増えたのは幸運でだった。
それからはガウルの背中に乗りながら風を切るかの様な速度を感じながら平原を移動し、ものの数分というあっという間の時間でミゼア大国へとたどり着いたのであった。
魔狼種を仲間にして、ミゼア大国に到着したクロト。
勇者として旅立つ事になる日は、刻一刻と近づいていく。
次回はミゼア大国内での話になります!
コメント、訂正の等があれば指摘して頂けると幸いです!
(`・ω・´)