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退屈した魔王は勇者になる様です。  作者: ナミ73
1章:魔王の転生と誕生
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4話:仲間達

今回は初の戦闘回です!(`・∀・´)

人間になっても、魔王の強さはチート級。

ミゼア大国まで進める予定だったのが、ミゼア大国への道の途中で終わってしまいました……。

 〜人間界〜


 住民の男と別れ、俺は現在町内の店を見て回っている。

 何件かの店を見て回ったところ、どの店も品揃えば悪くなかった。


 ミゼア大国への移動中に食べる食料を買い揃えた時も品質が良く、さらに腐敗しにくい食料が安く手に入り、先程も武器屋で丈夫で扱い易そうな片手剣が二本購入出来た。


 片方の剣の刃の長さは肘から手の指先ぐらいで、長さも丁度良いだろう。

 もう片方の剣の刃の長さは前述の剣の三分の二ぐらいの長さだった。


 剣を二本買った理由は、二刀流で扱うという目的もあるが、主な理由としては片方の剣が壊れた時の予備用にするためだ。


 剣術は魔王だった頃、どの魔族生命体とも比にならない程に極めていた。

 転生してこの身体になった事で身体能力が低下したからと言って、その程度で剣術が著しく衰えるような程ぬるい腕はしていない。

 ミゼア大国までの道中に出現しそうなモンスターの強さを考えても、攻撃力的にはこの剣で充分だろう。


 ステータスを確認したところ、数値で言えば15の攻撃力が加算されていた。


 ステータス上の攻撃力というのは、この値が大きいほど攻撃時に相手の体力を大きく削る事ができるものだ。

 しかし、ステータス上の攻撃力が高いからと言っても、必然的にステータス上の攻撃力が自分より低い者より攻撃面では有利……という訳ではない。


 下手に攻撃力が高い者よりも、攻撃力は高く無いが、物理的に敵を戦闘不能にする技量が高い者の方が強い場合もよくある。


 それを踏まえると、ステータス的にも物理的にも防御力がかなり心許ないのだが、俺は防具を購入せずに、出来るだけ装備を軽くすることで回避力を上げる事にした。


 俺には戦闘術があるし、ステータス的に厳しそうな敵は隠密スキルを使えば戦闘を避けることができるからな。


 と言うか、現在所持しているスキルが、最初から戦闘向きのスキルである事はわかっていたとは言え各スキルのバランスが良いのだ。


 俺が避けられなかったダメージは、ダメージ軽減スキルにより、身体への負担を抑えられ、敵の攻撃を避けている間は回復スキルで傷を修復でき、敵を倒せば戦利品増加スキルで戦利品が多めに手に入り、勝てなさそうな敵は隠密スキルを事前に使えれば戦闘を避けることができる。


 まぁダメージ軽減スキルはレベル1なのでやはり防御面は厳しいが、それでも武器屋で購入できる適当な防具程度の防御力は発揮してくれる。


 そういった訳で俺はこの先、なるべく防具を装備しない方針に決めた。

 ただでさえ身体能力が人間並みなのにやたらと重い防具を身に付けて旅をするのは体力的に厳しいのだ。


 そして現在、日が明るかった為まだ時間は遅くないのかと思ったが、先程の武器屋の店員に時刻を訪ねたところ、現在時刻は五時半頃だった。

 ミゼア大国へは徒歩でおよそ六〜七時間程かかりそうだった。

 特にミゼア大国への移動を急いでいる訳では無いので、本来は所要時間は気にする所では無かったが、夜になると魔族生命体の活動が活発になるのだ。


 それは空腹になった魔族生命体が闇に紛れて下等の生物を狩る為の習性によるもので、基本的には人間は捕食の対象外だ。

 しかし空腹状態の魔族生命体の視界に入った場合はその限りでは無く、見かけた人間に襲いかかる可能性が高くなる。

 人間を捕食するという訳では無く、人間の持っている食料を奪い取る為なのだが……。


 それでも食料の為なら魔族生命体は手段を選ばない。

 時には人間を殺害してでも食料を奪い取る場合もあるので、危険には変わりない。


 人間界に存在する冒険者の殆どは、大量発生した魔族生命体を狩って経験値や戦利品等を得る目的以外では滅多に夜に魔族生命体の生息地で行動する事は無い。


 しかし俺は夜に魔族生命体の生息地に行く事は問題としなかった。

 俺の剣術は、人間の身体でも人間界の殆どの魔族生命体に通用する。

 複数体の魔族生命体に囲まれたところで不利になる事も無い。寧ろ一人対大人数の戦闘を想定した剣術だからな。

 ちなみに剣術は我流のものであり、一刀流でも二刀流でも問題ない様に考案したものだ。


 ミゼア大国への道中はこの二本の剣で充分切り抜けられる。

 普通の人間ならなるべく魔族生命体を避けて行動するが、俺はむしろ多くの魔族生命体と戦闘してレベルやスキル熟練度を上げておきたかった。


 それにしても、スキルが戦闘向けで尚且つ剣まで購入してしまったので、もう戦闘職でも良い気がしてきた……。


 セインガルド王国で良さそうな冒険者ギルドが見つかればそこに入団でも構わないな。

 一般の職業と異なり、入団したての新参者でもクエストを大量にこなしていけばそれに見合った報酬が貰えるのだ。


 よし。ある程度の目的が決まったし、そろそろ出発するとしよう。


 たった一日だが、この町には世話になった。

 第二の人生において、幸先の良さを感じさせられる場所であった。


 そんな事を考えつつ、俺はこの町を旅立つのであった。


 〜平原〜


 リーズ町を離れて二時間。

 俺はミゼア大国を目指して歩みを進めている。

 未だ魔族生命体には遭遇していないが、道はまだまだ長く、まだそれほど暗くはない。このまま歩いて夜になれば、遭遇する可能性は高くなる。

 気を抜かずに進んでいこう。


 そう考えていた俺の視界の先に、話し合いをしている三つの生物の姿があった。

 まだ数百メートルの距離があるためシルエットでしか姿を確認出来ないが、そのシルエットあら推測する限り、三匹の生物の正体はゴブリンだろう。


 魔界でも人間界でも言わずと知れた下級の魔族生命体と認識されているが、一応言語を話す程度の知能はある。


 戦闘は三体一の状況になりそうだが、ゴブリン相手なら問題はない。

 俺は三匹のゴブリンに向かって歩いていく。


 ゴブリン達の近くまで歩き、三匹のゴブリンも俺に気づいた様子で持っていた武器を構えた。

 しかし、武器と言っても剣は形が歪な石で出来た剣で、切れ味が良さそうには全く見えない。


『ニンゲンダ! オマエタチ、タベモノ ウバエ!!』

『オウ! アニキ!』

『イクゾ!』


 話しているのは人間の言語ではなく、魔族生命体の言語だ。

 かなり片言だけど。


 ゴブリン達は人間の子供の様に小柄で、身長は九十〜百センチ程で、それぞれ茶色いボロボロの布で出来た服を着ていた。


 三匹目のゴブリンが台詞を言い終わった瞬間、アニキと呼ばれていたリーダー格のゴブリン以外の二匹が剣を振りかぶって襲いかかってきた。


 ……まぁわかっていたが、やはりどう見ても剣を振る筋が甘い。

 そもそも、剣を降る前から目線や初動で狙いが丸分かりである。


 俺は右手で長い方の剣を鞘から抜き、片方のゴブリンの剣を避け、もう片方のゴブリンの剣を、手に持った剣で受け止めた。


 受け止めたゴブリンの剣を弾き、がら空きになった無防備の腹に左手の拳を叩き込んだ。


『グウッ!』


 と言いつつ、俺の一撃を受けたゴブリンがその場に膝をつく。

 しっかり手応えはあるし、しばらくは立てないだろう。


 仲間を殴られて憤りを感じたのか、更にもう片方のゴブリンが俺に向かって剣を振った。

 このゴブリンも剣の筋が甘い。

 俺はそれをさっきと同じ要領で剣で受け止めて弾く。

 そして体勢を崩したゴブリンを蹴り飛ばした。


『ギャッ!』


 と言いつつ、リーダー格のゴブリンの目の前まで吹っ飛んだ。


『アニキ……コ、コイツ ツヨイゾ!』


 俺が強いってか、目の前のゴブリン達が余りにも弱過ぎるんだがな……。


『ナカナカ ヤルヨウダナ。 ツギハ オレ ガ アイテダ!』


 次はリーダー格のゴブリンがやる気のようだ。

 あまり戦闘力は期待できそうに無いけど。


『ウオオオオオッ!』


 雄叫びを上げつつ、二匹のゴブリン同様剣を振りがざして襲いかかってくる。

 しかし、二匹のゴブリンよりは剣の筋は良い様だ。

 二匹がかりで倒せなかった相手に挑もうとするだけはある。

 実戦経験の無い冒険者ならこのゴブリン一匹相手にも倒されてしまうだろう。


 まぁ俺から見れば二匹のゴブリンとあまり大差無く見えるのだが。


 俺は難なく二匹のゴブリン同様その剣を受け止めて弾いた。


 リーダー格の着ているボロボロの布で作られた服の裾を掴み、二匹のゴブリンの方向に投げ飛ばした。


『グギャッ!!』


 投げ飛ばされたゴブリンは受身が取れず、背中から地面に衝突した。

 そこまで強く投げてないし、投げた角度も浅いから大したダメージは無い筈である。


 強く投げ飛ばさなかったのはゴブリンの体重が重かったので強く投げられなかった訳ではなく、ゴブリン達を殺すつもりも、必要以上に痛めつける気も無いからだ。

 ゴブリンが大した戦利品を持っているようには思えないし、そうでなくても無駄な暴力や殺傷は好まないからな。


 俺から戦闘を仕掛けた理由はこの身体で、実戦でどれだけ動けるかを確認する目的と、経験値を得る為の目的があった。


 経験値は敵を倒す以外に、敵の降参を確認した場合でも手に入るのだ。


 そして、もう一つの最大の理由としては、この辺りに生息している魔族生命体の生息地や活動時間を聞き出す事だった。


 隠密スキルを使用せずに、わざわざ自分から戦闘を仕掛けたのも人間の魔族生命体は自分より弱い生命体と対等に話す事がほとんど無いので、まず自分の強さを証明する必要があった為だ。


 さて、ここまで圧倒してやればコイツらも俺の力量を確認できただろう。


 三匹のゴブリンも、武器を構えてはいるのだが、さっきみたいに積極的に襲いかかっては来ないので、やはり今の攻撃で力の差を認識しているようだ。


 やっと話し合いができる状況を作れたところで、三匹のゴブリンに話しかける。


『三匹のゴブリン達よ、そう警戒しないで欲しい。俺の話を聞き入れてくれれば、これ以上戦闘する気は無い』


 とりあえず下手に怯えられても会話がスムーズに進みそうに無いので、極力警戒心を下げさせておく。


『コイツ、オレタチノ コトバ シャベッタ!』


『メズラシイ ニンゲンダ!』


『イッタイ ナンノ ハナシダ? 』


 魔族生命体の言語を話せる人間はまず存在しないので、人間二匹のゴブリンは驚いている。

 リーダー格のゴブリンは少し驚いた表情をしているが、話を聞く気になった様だ。


『俺は現在、レベルやスキルを上げ、戦利品を得る為に強力な魔族生命体を探している。

 この辺りで生息している強力な魔族生命体の生息地をお前達の知る限りで教えて欲しい。詳細まで知らない魔族生命体の居場所は大体でも構わないし、お前達ゴブリンに纏わる情報の要求はしない』


 魔族生命体の戦闘力が高ければ高いほど、戦闘でその魔族生命体に勝利した時の経験値が多く得られる。

 要は強力な魔族生命体を倒すと経験値稼ぎの効率が良いし、貴重な戦利品も手に入り易くなるのだ。

 俺には『戦利品増加LV2』があるのでなおさらその効果が高い。

 まずはそのスキルを最大限活かす為に、この広大な平原に存在する多種の魔族生命体の分布を知り、効率良く戦闘を仕掛ける。


 それに、この平原に存在するのならば、どうしても遭遇したい魔族生命体がいるのだ。


『ワカッタ。 オレタチノ マケ ダ。 ホカ ノ モンスター ノ イバショ オシエル。』


 リーダー格のゴブリンが敗北を認め、俺の要求も聞き入れてくれたようだ。


 俺の前に俺自身のステータス表が現れ、経験値獲得の報告を告げた。


 ⦅1200の経験値を獲得しました。『戦利品増加LV2』の効果で1.5倍の経験値が加算されます。合計で1800の経験値を獲得しました。⦆


 実はこの『戦利品増加』スキルは、名前よりも実用性の高いスキルで、敵からドロップするアイテムの個数が上がるだけでなく、アイテムの希少度レアリティや貰える経験値も増加する効果があり、このスキル一つで他の人間とステータスの成長速度にかなり差をつける事が可能だ。

 しかし人間には『戦利品増加』スキルを持つ者が全く存在しないので、そんな突出したステータスを持つ人間には、まず遭遇できない。

 むしろ人間界の超希少スキルの一つとして逆に有名になっているぐらいだ。


 経験値の量から推測すると、おそらくこのゴブリンはLV25〜50ぐらいだろう。


 この平地に豊富な食料源がある為か、平均的なゴブリンよりも少し強力に育っている様だ。


 人間から見ればそこそこの危険度を持っている。

 このレベルの魔族生命体にこれほど容易に遭遇できるなら、並の冒険家が夜にこの平原で活動する事はまず無いだろうな……。


 レベルが2つ上がり、ステータスが各々上がっているが、俺はスキル以外のステータスに興味は無いので今のところは見ないことにした。


 ステータス表を閉じようとした時、新スキル習得の通知が表示された。


 ⦅新スキル『高速移動LV1』を習得しました⦆


 まるで俺の興味に従うように、新しいスキルが手に入った。

 高速移動については……まぁ細かくは後で解説しよう。


 それからは、要求通りゴブリン達に魔族生命体の生息地を教えてもらい、道案内をしてもらう事になった。

 道案内……というのは本当の目的ではなく、実は道を同行させる事によって誤情報を防ぐのが本当の目的だが。

 最初は強力な魔族生命体と遭遇したくないとゴブリン達は拒否していたのだが、俺が生命の保証をする事と、俺が手に入れた戦利品の半分を渡す事を提案したらすんなりと同意した。


 現金な奴らだとも思えるが、魔族生命体の中でも下等生物であるゴブリンにとって、強力な魔族生命体の戦利品を自らの手で入手する事は困難を極めるのだ。

 ゴブリン以外の強力な種族と手を組んで希少な戦利品を手に入れられる機会を見逃すなどという真似はまずやらない。


 まぁ、つまり俺が強力な魔族生命体を倒せるだけの力を持っているとゴブリン達は確信したというのもあるのだろう。


 道案内のついでに、歩いてきた道を引き返すのも嫌なのでなるべくミゼア大国への進行方向に近い方角で魔族生命体を探す事も頼んでおいた。

 魔族生命体の生息地は知らないものの、地形はしっかり覚えているので、ゴブリンが方角を間違えても俺が指摘できる。

 魔族生命体の生息地が判れば、知識に入れて以後からは案内無しでも向かえるようにしようと思う。


 俺達は二時間ほどゴブリンの道案内通りに歩みを進ませていた。

 ゴブリンの知能は人間が認識しているよりも低くは無く、割と方向感覚にも優れている。

 俺が方角を指摘する事も無く、真面目に道案内をしてくれているので、道案内が偽りのものである可能性やゴブリン達が道に迷う可能性は無いだろう。


 俺達はまず、ミゼア大国への方角を少し逸れた方向に位置する、竜人(ハーフドラゴン)の生息する湿地帯に向かっていた。


 竜人(ハーフドラゴン)は、人間界に出現する魔族生命体の中でもなかなか高い戦闘力を有し、更に集団での行動を基本としている。

 冒険者達は大体、レベル100〜150の仲間を8人程集めて経験値を稼ぎに来る程だ。

 明らかにゴブリンとは戦闘力が違っている。

 経験値を一度に大量に得るには打って付けの種族だ。


 湿地帯は森林が密集しており、幾つもの木々の影が重なり合い、少しばかり不気味な雰囲気を放っていた。

 竜人(ハーフドラゴン)は、大まかな見た目はゴブリンの様に人間に近い姿をしているが、頭部はドラゴンの頭をそのまま首にくっ付けたようで見た目で、手足は人間の腕にドラゴンの鱗が生えた様な見た目をしている。


 また、平均身長も人間より一回り大きく、戦闘兵として存在する竜人ハーフドラゴンは185〜190センチ程の大きさだ。

 よほど大柄な人間でも無い限り、その外見だけで圧倒されてしまうだろう。


 奴らはこの迷路の道を作るかの様に並んでいる木々の影に潜み、沼の様にぬかるんだ地面に足を取られた獲物を、硬質な鱗で覆われ、悪路をものともしない身体と身体能力を生かして狩っている。


 現在、俺は湿地帯エリアの目の前まで来ていた。

 ゴブリン達が竜人(ハーフドラゴン)に侵入者として認識されるのを防ぐため、ゴブリン達は湿地帯エリアとは少し離れた場所で待機させれている。


 待機させている間、ゴブリン達は逃亡する事も出来るのだが、戦利品を心底欲しがっている様だったので俺が戦利品を持ってくるまで逃げられる心配は無いだろう。


 湿地帯の森林の中に入っていくと、やはり地面がぬかるんでおり、地形の不利はこちらにありそうだった。


 そこから少し進んだところで、早速前方数十メートル先に竜人(ハーフドラゴン)特有の暗闇で光る目を発見した。


 これ程簡単に竜人(ハーフドラゴン)が見つかるとは思わなかった。


 俺は『隠密スキルLV3』を使って湿地帯を探索し、辺りの竜人(ハーフドラゴン)の数を把握している。


 まだ戦闘は仕掛けず、大体の数が把握出来たところで戦闘を始める事にした。

 どちらにしろ、奴らは俺の姿を見つけた途端に集団の仲間を呼ぶので、一体一の状況になる事はまず無いだろう。


 隠密スキルはLV3にもなれば相当便利なもので、大きな音を立てない限り、普通の魔族生命体では俺の姿を認識することは難しい。


 見つかる事なく、入口付近で戦闘を仕掛けた場合にどれだけの数の竜人ハーフドラゴンと戦うかを大体把握できた。


 やはり仲間をすぐに呼べる範囲で分散行動し、見張りをしている様だった。


 入口付近で戦闘をするなら、一気に五匹の竜人ハーフドラゴンと戦闘になりそうだ。


 少し苦戦になるかもしれないが、一応戦闘に勝利することは出来そうだな。

 とは言え、竜人(ハーフドラゴン)はゴブリンよりも遥かに戦闘力の高い敵。

 気を抜かない様にしよう。


 なるべく木々の少ない開けた場所で、隠密スキルを解除した。

 ここなら地面のぬかるみも無いので、地形の不利は問題ない。

 隠密スキルを解除した瞬間、俺の姿を早速認識した竜人ハーフドラゴンが雄叫びを上げた。


『ウォォォォォォォォォォォォーーーッ!!!!』


 これは集団の仲間を呼ぶための遠吠えであると共に、侵入者への威嚇の意味合いもあった。


 雄叫びに反応した竜人ハーフドラゴンが四匹集まってきた。


「我らが竜人(ハーフドラゴン)の領地に踏み込む愚かな人間よ! 何用で参った!」


 始めに俺を発見して雄叫びを上げた竜人(ハーフドラゴン)が人間の言語で問いかけてきた。


 こいつらは魔族生命体の中でも知能が高く、魔族生命体と人間の言語の両方を話すことができる。

 しかし、俺も竜人(ハーフドラゴン)らも魔族生命体の言語の方が得意な種族だ。

 魔族生命体の言語の方が話がスムーズに進みそうなので、わざわざ人間の言語を話す必要は無さそうだ。


『俺に人間の言語を話す必要は無い。そして俺はお前らの領地を荒らしに来たのでは無い』


 竜人(ハーフドラゴン)の殲滅依頼を受けた人間と勘違いしている様なので弁解をする。

 実際、領地を荒らすのが目的では無く経験値を手に入れる事が主な目的だ。

 まぁ軽く戦闘を行ってくれるだけもで良いのだが……。


 しかし、こいつらは侵入者に対してそう甘い種族ではないだろう。


『ほう……これは珍しい。たった一人でこの地を訪れ、我々の言語を言語を話す人間か。しかし、人間の冒険者がわざわざ夜にこの領地に足を踏み入れる等、討伐依頼を高額の見返りで受理でもしない限り有り得ん話だ。

 我々の貴様に対する扱いは、そいつらと同じ侵入者と変わらぬ』


 やはりな。警戒心の強い種族だからそう言うと思ったが……。

 まぁこちらとしても戦闘が目的なので、自分から戦闘を仕掛けてくれるのは好都合だ。


『疑いは晴れないか。だが俺としても戦闘は好都合だ。

 俺の経験値の糧になりたい奴からかかってこい』


 討伐依頼を受けていると勘違いしているのなら、命を奪わずに戦闘不能にまで追い込めばいいだろう。


『人間如きが、我らを舐めた事を後悔させてやろう……』


 そう言いつつ、雄叫びに呼ばれた竜人ハーフドラゴンの一匹が武器を構える。

 持っている武器は三メートルぐらいの長さの鎌槍だ。

 ゴブリンの持っていた剣と違って、刃の部分には鉄が使用されており、丈夫な造りとなっている。


 思っていたよりも強敵そうだ。

 少なくともこいつら一匹でもさっきのゴブリン三匹を一掃出来ただろう。


『フンッ!』


 と俺に向かって槍を振りかかってきた。


 腕も悪くは無いし、なかなか戦闘慣れしている事が伺えた。


 しかし俺は腰に携えた片方の剣を抜き、その槍を難なく弾いた。


『何っ!?』


 間違いなく俺に攻撃が当たるかと思い込んでいたのか、槍を弾かれた事に驚いているようだ。


 俺は素早く間合いを詰めて竜人(ハーフドラゴン)の槍を持った方の腕を掴み、剣の柄頭(メンボル)でその腕を突いた。


 ドスッ、という鈍い音と共に、硬い弾力を持つ竜人(ハーフドラゴン)の腕の筋肉に柄頭(メンボル)がめり込む感覚が伝わる。


『……ッ!』


 少し遅れてやってきた痛みに、竜人ハーフドラゴンはもう片方の手で打撃を受けた腕を抑えた。

 今の打撃はただ単に腕を殴っただけでなく、魔族生命体の医学の知識を利用してツボを正確に突いた攻撃なのだ。


 これでしばらくこの竜人(ハーフドラゴン)は槍を握る事は出来ないだろう。


『まず一人。次の相手は誰だ?』


 早速、仲間の一人が戦闘不能に追いやられた事に驚愕したのか、竜人(ハーフドラゴン)の表情からは焦燥が見てとれた。


 竜人(ハーフドラゴン)一匹相手なら余裕で勝てる。

 こいつら全員がこの程度なら、二匹でも三匹でも勝てるだろう。


『貴様、予想以上の手練だな。どうやら私が相手をする必要があるらしい。

 お前達はさがっていろ!』


 同レベルの仲間をいくら戦わせても俺に勝てないと判断したらしく、リーダー格の竜人ハーフドラゴンが名乗りでた。


 殺気や鋭い眼光を放ちつつ俺を睥睨する双眸や、他の竜人(ハーフドラゴン)よりも一回り大きい体格などから判断する限り、やはり先ほどの竜人(ハーフドラゴン)とは明らかに戦闘力が高い。


 コイツを倒せば、他の仲間も俺の話を聞く気になってくれるだろう。


『ハアァァァ……』


 俺がそう考えていると、リーダー格の竜人(ハーフドラゴン)が何やら神経を研ぎ澄ませて腕に力を込め始めた。

 すると、持っている槍が青白く発光し、段々とその光の強さが増幅していく。

 己の魔力を武器に注ぎ込み、『魔装』と呼ばれる武器強化を図っているのだろう。


『……()くぞ!』


 準備が整ったであろうところで、槍をふりかぶってきた。

 魔力が充分に注ぎ込まれたのか、槍の色は最初の淡い光と違って鮮やかな青色の光を発光していた。


 あの槍を弾くのはさすがに無理だろうと判断した俺は、槍を剣身(ブレイド)に滑らせて受け流した。


 二回目の攻撃が来る前に、『高速移動』スキルで素早く竜人ハーフドラゴンの後ろに回り込み、『隠密』スキルを発動する。


『奴が消えた……!? いや、気配はある!

 何処にいる!』


 俺の姿を認識出来なくなった竜人ハーフドラゴンは周りをキョロキョロと見回して俺を探している。

『隠密スキル』の効果で、死角に回り込んだ俺の姿を何となくの気配でしか認識できていない様だ。


 周りにいる竜人ハーフドラゴンの仲間達には、俺が死角にいるわけでは無いので俺の姿がハッキリ見えているけど。


『どこを見ている、背後だ!』


 仲間の一匹が俺の位置を教える。しかし、もう遅い。

 その時、俺はすでにリーダー格の竜人(ハーフドラゴン)の首元を確実に仕留められる体制に入っていた。

 死角から、柄頭(メンボル)竜人(ハーフドラゴン)の首元を強く殴る。


 肉体に鈍器がめり込む鈍い音と共に、俺の腕に硬い弾力が伝わる。


『ガッ……!』


 ドサッ! とリーダー格の竜人ハーフドラゴンが倒れ込んだ。

 戦闘力が高い種族だが、虚を突かれて強力な一撃を入れられればひとたまりも無い。


 ステータス表が経験値獲得の通知を告げる。


 ⦅8000の経験値を獲得しました。『戦利品増加LV2』の効果で1.5倍の経験値が加算されます。合計で12000の経験値を獲得しました。⦆


 やはりコイツら、ゴブリン達よりも相当に戦闘力が高い。

 リーダー格の竜人(ハーフドラゴン)は高度な魔力操作技術が必要な『魔装』も扱えるし。


『ぐっ……貴様、本当に人間か? 有り得ん戦闘力だ……。しかし、何故それ程の力を持って我らを殺さない?』


 リーダー格の竜人ハーフドラゴンが、一番質問して欲しかった事を聞いてきた。


『だから、殲滅依頼で来た訳では無いと言ったろ?俺は経験値を稼ぎに来ただけだ。 ただ、他にお前達に勝利した戦利品を貰いたい』


 一番こいつらに伝えたかった事を話した。


『何だと? 経験値稼ぎ……? 我々は殲滅依頼を受けてこの地に踏み込んだ冒険者を何人も葬ってきたが、そのような目的でこの地にやってきた人間は貴様が初めてだ。

 魔族生命体の言語を話し、なんの依頼も受けずにこの地にやって来るなど、何とも珍しい人間……。しかも人間には有り得ぬ力を持っている。

 そうだな。何しろ貴様は我々に力を示し、その上で命を奪うこともしなかった。

 貴様の言う事を信じてやろう』


 リーダー格の竜人(ハーフドラゴン)が、俺を認めてくれたらしい。

 と言うか、最初から経験値稼ぎが目標だと言っているのに話を聞かない奴らだな……。


『それで、貴様は経験値稼ぎをしたいと言っていたな。命を見逃してもらった貴様の心の寛大さを認め、協力してやろう。

 それと戦利品の話だが……。我は貴様を気に入った。我々の種族に伝わる秘宝の一つ、竜眼(ドラゴニア・アイ)をくれてやろう。

 人間の拳程の大きさで、相手の力量を詳細まで測ることができる魔法具(マジックアイテム)の一種だ』


 要求も飲み込んでくれた。こいつらが相手になってくれるなら、良いスキルが手に入り熟練度も上がるだろう。


『それと、人間にして強靭な力を持つ貴様の名前を是非伺いたい』


 名前……か。魔界では俺の名は『サタン』で通っていたけど、全く人間らしい名前じゃ無いからな……。


 名前を聞かれたところで、名乗る名前が無いのではどう名乗ろうか迷ったものだ。


 闇属性だから、何となく黒のイメージを取り入れて…。

 ……『クロト』なんてどうだろうか。

 たった今適当に考えたものだが、一応人間らしい名前では無いだろうか?


『俺の名はクロトだ。少しの間、協力よろしくな』


『クロト……か。強き戦士として記憶に焼き付けておこう。

 我が名はグレア。我々竜人兵(ハーフドラゴンナイト)のリーダーだ』


 グレア……か。こいつがリーダーなのは既に感づいていた事だが、竜人(ハーフドラゴン)の重要人物だ。こいつの名はしっかり覚えておこう。


 その後はグレアたちの先導で他の竜人(ハーフドラゴン)に出会い、本格的に竜人(ハーフドラゴン)達との協力関係を結んだのであった。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 ゴブリン達や竜人ハーフドラゴンとの戦闘に勝利し、短い間の協力関係を結んだ主人公クロト。

 この先に待っている更なる種族との出会いがクロトの旅を大きく動かしていく事になる。


 文章中に解説が書けなかったので記載↓


『高速移動LV1』……ほんの一瞬のみ、あらゆる生物の目に見えない速さで移動できる。

 移動できる距離は数メートル程度。

 このスキルを使用後、再び使用するまでにおよそ十秒間の間隔が必要。

 このスキルのレベルが上がる毎に使用可能時間と移動可能距離が増加する。

 但し、再度使用可能になるまでの時間も延長される。

ゴブリン三匹と竜人族を仲間にしたクロト。

次回で更に仲間が増える(かも)!

次話こそミゼア大国まで進めたいと思います!

今回は旅の途中で終わってしまいすいません!

m(_ _)m

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