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アゲハの開拓街  作者: 天界
第1章 長いお散歩編
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004 創造



 7匹の一角兎と6匹の白芋虫と逸れたのか1匹だけでいた6本犬を倒したところでベースレベルが上がった。

 ちゃんと上がってくれたよベースレベル。

 そして思ったとおりスキルポイントが加算されたのだ。


 そのポイント量は『2』。


 ……うん、増えたんだからよし。

 それにしてもベースレベルはずいぶん上がりにくいと思う。

 合計で16匹もファンタジー生物を倒してやっと1から2になったのだ。

 小説とかゲームなら1匹2匹、せいぜいでも5匹も倒せば1から2にはなってくれる。

 ……やっぱりこの異世界は厳しいご様子。


 もしくは取得経験値がとても低い雑魚なのかもしれない。……どいつもこいつも風の刃で1撃だしね。

 それでもきっと攻撃されたらボクではひとたまりもないだろう。

 何せボクの格好は防具なんて何もない。着心地はそこそこのチュニックとズボンに柔らかい革の靴だけなのだから。

 ……あ、下着はつけてるよ? パンツは綿っぽいので、ブラジャーはスポブラっぽいのだった。ゴムはなくて紐だったけど。


 ベースレベルが上がってちょっと安心したところで、ボクのお腹が可愛らしい声をあげた。

 そういえばお昼を食べていない。

 あの黄色い結界にいたのが朝の7時くらい。

 2時間で準備を整えて1時間くらい走って逃げて、その後スキルを吟味して練習してさらに2時間。

 この時点でお昼だったけど、食べ物も飲み物もなかったし何より魔法に興奮していて気づいてなかった。


 そこからさらにファンタジー生物を倒して倒して……3時間。

 すっかりおやつ時。


「おなかすいた……」


 可愛い声をあげるお腹を押さえて項垂れる。

 ファンタジー生物を探す間にそれっぽい木の実なんかは見つけている。

 でもボクの知っている物では決してなくて……。


 ……正直怖い。こんなところでお腹を壊したりしたら死の危険に直結する。

 かといってファンタジー生物を焼いて食べるのも似た様なものだし、何より気持ち悪くて死骸に近づけない。


「どうしよう……」


 とりあえず安全だったあの魔法の練習をした場所に戻ってきた。

 そしてスキル構成を弄ってお腹がすいてるのを誤魔化すことにした。


 まずは残弾を多くするために『魔力強化』の取得だ。


「ふわぁ……すごいこれ」


 取得した『魔力強化』はハイエルフの種族特性である魔力関連全般の大幅向上という効果を受けてとんでもないものになっていた。

 元々多かった魔力が今や『10倍(・・・)』に膨れ上がっているのだ。


 ……10倍だよ、10倍。どうやら種族特性がなかったらLv1で1.5倍くらいにしかならないみたいなのにボクは10倍だ。


 うん、やはりボクは魔法チートで決定だ。

 そしてこれだけの量があったらもしかしたらアレが使えるかもしれない。


 実はスキルを吟味していたときにとても素敵なスキルを見つけている。

 その名も『魔法:創造』。

 取得するのになんとスキルポイントが『10』もかかる。

 一応取得して情報だけでも手に入れておいたけど、ボクの多い魔力でも何も創造できないということがわかっただけだった。


 そう、魔力が足りなかった。でも今は10倍になっている。


「……むふふ」


 自然と笑みが漏れてしまうのは仕方ないだろう。

 うまくいけばこれでご飯の問題は一気に解決なのだ。もちろんそれだけではない。

 色々と……そう、色々と問題が解決してくれるかもしれないのだ。


「むふふふん」


 ボクの創造魔法無双はここからスタートするのだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ――とか思っていた時期がボクにもありました。

 結論から言いますとですね。『魔法:創造』はそんな生易しいものじゃありませんでした。


 牛丼でも食べようと思って頑張ってイメージしてみた結果、牛丼は見事に創造できませんでした。

 魔力が圧倒的に足りない。

 牛丼がだめならということでもっと簡単そうな物をどんどんイメージしては失敗していった。

 ちなみに失敗したときには魔力は消費しない。


 10種類くらい料理をイメージして失敗したところでちょっとこれはまずいんじゃないかと思い始めた。

 まずはイメージするのは思いのほか集中力を使う。

 つまりは周りが見えづらくなるってことだ。

 ハッと気づいて周囲を見渡してみたが今のところファンタジー生物達はいない。でも今いないからといってずっといないわけではないだろう。

 何せ少し歩けばいるんだ、アイツらは。


 ではどうすればいいか。

 ある程度周りを気にせず集中できる安全な場所が必要だ。


 ……場所。

 『魔法:風』を使えば4桁ダメージのオーバーキル攻撃が出来る。

 魔法はイメージ次第である。

 では『魔法:土』ではどうだろう。


 魔力は大量にあるのでさっそく実験してみた結果――


 十分な広さを残してその周りに深さ3メートル、幅5メートルの円状の堀が出来上がった。

 『魔法:土』で土を移動させた結果だ。

 もちろん堀の中にあるスペースの端っこには、移動させた土を3メートルくらいの壁にして囲ってみた。採光も兼ねた小さな覗き窓が複数付きという細かさだ。


 ……うん、ファンタジーすげー。


 この中になら早々アイツらも入ってこれないだろう。

 壁が高いから目立っちゃうだろうけど、近寄って来ても堀がある。

 堀の中に降りたら今度は6メートルの壁だ。ものすごいジャンプ力を持っていなければ無理だろう。

 今まで見た中ではそんなジャンプ力を持ったヤツはいない。

 一角兎ですらせいぜい1メートル程度しか飛べてない。

 ……まぁそれでも十分にすごいとは思うけど。あの巨体であのジャンプ力なのだから……。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 安全な場所も確保したのでさっそく実験の再開だ。


 いきなり料理の創造はちょっとハードルが高かったようなのでまずは練習から始めてみよう。

 足元の30センチメートル程度の草を千切って同じ物を創造してみる。


 魔法はイメージが大事だ。

 これだけの至近距離でじっくりと観察しながらのイメージはかなり詳細にでき、魔力の消費はずいぶん抑えられるはずだ。

 あれだけの工事をしたので『魔法:土』で消費した魔力が結構あるけど、それでもまだ8割以上は残っている。


「創造!」


 別に『魔法:創造』を使う際にこんな掛け声はいらないのだけど、気合を入れるために言ってみた。

 結果は……成功!

 しかし――


「すごい魔力消費……」


 信じ難い事に先ほど消費した魔力量よりも少し多いくらい消費した。全体の2割強だ。

 30センチメートルほどの草を見ながら詳細にイメージしたのにこの消費量。さすがにちょっと呆れた。


 だって風の刃なら200発撃ってもまだ余るくらいの量なんだから……。


 しかし創造された草は元となっている草とまったく変わるところがないように思える。

 そりゃじっくり見ながらイメージを固めたんだから当たり前といえるけれど。


 ……魔力さえあれば複雑な物でなければきっと複製が可能だ。


 『魔法:創造』。やはりすごいスキルだ。

 まぁでも最初ボクが思っていたよりはずっと使い勝手が悪くてシビアだけれど。

 ……やっぱりこの異世界は優しくない。


 ずいぶん消費してしまった魔力だけど、時間経過で少しずつ回復していく。

 でもそれは微々たる量だ。

 だからここで登場するのは新スキルさん。

 その名も『魔力回復量強化』。


 『魔法:創造』を解除して出来る限りスキルLvを上げて休憩する。

 戻ってきたスキルポイントではLv3までしか上げられなかったけれど十分だろう。


 壁を作った時に一緒に作った土のベッドに草をかき集めて敷き詰めて座り心地をマシにして腰掛ける。


「はふぅ……」


 今日はずっと走ったり戦ったりしていたので、こうして安全に休めるのは初めてだ。

 スキルを吟味していたときはあんまり安全とはいえなかったしね。


 天井は開いているので青い空が見える。

 ボクもソラ。あれも空。

 ……異世界でも空は一緒で青いんだなぁ。


 しばらくボーっと空を眺めていたらあっという間に魔力は満タンに回復していた。まだ10分も経っていないのにすごい回復量だ。

 『魔力回復量強化』Lv3で普通は6倍の回復量になる。

 そしてここにボクの種族特性がかかり、大体倍くらいの回復量になるようだ。つまりLv3で10倍以上の回復量になっている。


 魔法チートすげー。


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