013 ベースレベル 『10』と準備
夕方近くまでがっつりレベル上げを行い、帰り道用にマーキングしておいた場所に転移をする準備を行う。
転移先にファンタジー生物がいたら危ないので準備は当然必要だ。
まず『魔力回復量強化』を取得して魔力を9割以上になるまで回復させる。
その後いつもより広い範囲に『魔力障壁』を展開させる。
元から張っていた『魔力障壁』も張りなおして魔力をまた回復させたら準備完了だ。
検索したところ『魔法:空間』で転移を行う際に『魔力障壁』もしっかり魔力で包み込めば『魔力障壁』もそのまま転移できる。
その際にマーキングしてある場所にファンタジー生物などがいても、多少マーキングの位置からずれるだけで重なったり、『魔力障壁』の中にファンタジー生物などが入り込む事はない。
落とし穴や地形の変化には対応できないけれど、ファンタジー生物などの敵対勢力がいても『魔力障壁』があれば一先ずは安全だ。
まぁ例えどうにもならないほどの量がいたとしても、次のマーキングポイントにすぐに転移するという方法もあるしね。
新たに展開した『魔力障壁』で減った魔力が回復するのを待ってから転移を行うべく魔力で包み始める。
物の数秒で『魔力障壁』全体と自分を包み込み終えると、1度深呼吸をしてから転移を実行した。
一瞬で視界が切り替わり、しっかりとマーキングした場所へと転移する事に成功する。
なんというかとても不思議な感覚だ。瞬き1つの間に全然違うところに移動しているのだから当然だけれど。
でもそれでこそファンタジーの定番中の定番、転移だ。
不思議な感覚もほんの数秒で興奮へと切り替わっていった。
しかしそんな興奮も長くは続かない。
数回の転移でものの見事にボクの魔力は2割を切るほどにまで減少してしまったのだ。
やはり転移で消費する魔力はとんでもない。
この異世界はとても厳しく世知辛いのだ。
でも日が暮れるのももうすぐだし、回復するのを待っている時間はもうないので一気に戻ってきた。
マーキングしたポイントは一応そのまま残してある。
ボクのお城パートツーまでに転移した回数はそれほど多くない。
それでもほぼ満タン状態から2割まで魔力を使ってしまうのはよろしくない。とてもじゃないが行きには連続では使えないだろう。使うとしても途中で休憩を入れなくてはいけない。
ちなみに午後がっつりレベル上げを行ったがベースレベルは上がっていない。
でも手応えからして明日の午前中には上がるだろう。
このペースだと目標のベースレベル10には明後日から明々後日くらいには到達するだろうか。
そしたらニルギル村を目指して出発だ。
……場所はわからないけれど。
とりあえずリーファグル大森林から遠ざかるように移動すればそのうち着くだろう。
最悪ニルギル村を通り越しても次の村なり街なりに辿り着ければ、それでもいい。
多分ある程度進めば街道や人工物なんかも少しは出てくるだろうと思うし。
今日もゆっくりお風呂に浸かり、レベル上げでの疲れを取って検索の続きをして、おやすみなさいまた明日。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日、ボクのお城パートツーの周囲のファンタジー生物達がどうなったか確認のために少し探索してみた。
1日2日でどうなるものでもないかもしれないと思うだろうが、顎蜂の大量発生はものすごく急だった。
ボクの常識なんてここではあまり役に立たないのも身に染みている。
検索しても権限不足だったために念のために探索をしてみたのだ。
結果的には周辺のファンタジー生物の分布が元に戻っていた。
凄まじい回復速度というか縄張りの変動速度である。
スキルやレベルなんかがあるゲーム風異世界ではあるけれど、さすがにファンタジー生物が空中から湧き出してくるわけでもあるまいし空恐ろしい状況だ。
……でも見方を変えれば得物があっちから来てくれているということでもある。
要は考えようだ。ポジティブに行こう。
……そのおかげで午前中の早いうちにベースレベルが『9』へ到達した。
解禁されたものはなく、新たなユニークスキルや不思議能力はなしだった。
そこで不思議に思ったのは検索での権限はどうなっているのか、だ。
ログには特にそれらしい情報がないので、以前権限不足で閲覧できなかった事を検索してみる。
「……ほほぅ」
1番必要そうなマップ機能を検索してみたところやっぱり権限不足だったけれど、代わりに方角がわかるようになっていた。
そう、ニルギル村への方角がわかったのだ。
つまり検索での権限の解禁についてはログに表記されないということだ。
ベースレベルが上がったら権限不足で見れなかったところをいちいち試してみなければいけないということだが……面倒くさいなぁ。
まぁ知りたくなったらすぐに検索すればいいだろう。
毎日夜には検索祭りを開催しているわけだし。
とにもかくにもニルギル村への方角がわかったことは朗報中の朗報だ。
あとは目標を達成するだけ。
増えた分のスキルポイントを使ってレベル上げを加速させるために『経験値取得量強化』をLv3にする。
これで取得できる経験値は4倍だ。
さらに『アイテムボックス』や『魔力障壁』、さらには転移で魔力の消費量が加速度的に増えていることもあって『魔力強化』をLv2にすることにした。
ボクの種族特性である魔力関連全般の大幅なプラス補正により、『魔力強化』Lv1で魔力の総量は10倍になっている。
そして『魔力強化』をLv2にしたことにより、なんと10倍から『20倍』に増加した。
「これはまた……」
10倍でもかなり魔力が多かったと思うのにさらに倍である。
ボクとしては単純に助かるからありがたいのだけれど……。
10倍でも明らかに逸脱した魔力量だったのに20倍ではもう完全に規格外の領域だろう。
定番の魔力測定とかあったらボクはきっと小説の主人公まっしぐら路線だね。
……検索したところ魔力測定が出来る魔道具はあるらしいけれど、一般には出回っていない珍しい代物らしかった。残念。
さすがに4倍にまでなった経験値取得量でも、今日中にはベースレベル10に到達することはなかった。
でも間違いなく明日には上がってくれるだろう。
その後色々準備なりなんなりをして明後日にはニルギル村に向けて出発だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ついさっき遂に目標だったベースレベル『10』に到達した。
まだお昼にもなっていないのでペース的には大分早い。
まぁ早い分には越したことは無いのでよしとしよう。
それよりも解禁されたものが重要だ。
そう、やはり区切りっぽい10という数字では解禁されるものも特別なものになるようだ。
解禁されたものは2つ。
1つ目は――ユニークスキル:『必要経験値量減少』。
ベースレベルが上がるのに必要な経験値量が減少するというスキルだ。
もちろんボクだけの特別なスキルだ。
『経験値取得量強化』と合わせて使えばボクのベースレベルの上がりっぷりが加速すること請け合いだろう。
2つ目は――スマホの偽装。
ブックカバーがついているとはいえ、ボクのスマホはこの世界――ミジェスギラでは明らかな異物だ。
魔道具で押し通す事も出来ない事は無いだろうけれど、珍しい物であることには変わりない。もしかしたら目を付けられる可能性も十分にある。
しかしこの偽装のおかげでボク以外からは手帳にしか見えなくなるそうだ。
手帳なら『製紙』で作れるので別段不思議には思われないだろう。
2つともとてもありがたいのは言うまでもない。
得たスキルポイント10でさっそく『必要経験値量減少』をLv2まで取得して、お昼までレベル上げを続けた。
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さすがにレベルは上がらなかったけれど、今日はもうボクのお城パートツーに帰って出発に向けての準備をしなければいけない。
ここ数日間を過ごした場所なだけにちょっと愛着が沸いているのもあって、例え土に戻して埋めてしまうとしても箒を作って掃除をすることにした。立つ鳥後を濁さずってやつだ。
部屋の数もお風呂場と寝室兼リビング兼キッチンとトイレしかないのであっという間に掃除も終わり、溜め込んでいたファンタジー生物の死骸を少し解体しておくことにした。
もちろん解体は外で行うのだけれど、安全確保のために『魔力障壁』を広めに耐久力を高めにして展開しておいた。
解体には必要ないので経験値系のスキルを解除して『解体』をLv5にまであげて処理をしていく。
Lv5にまで到達したスキルはLv1とは雲泥の差となるのは生産系スキルで試してわかっている。
『解体』は魔力を使うわけではないけれど、動作に補正が入るし適切な行動を自動で行ってもくれる。
解体の知識どころかファンタジー生物のどの部位が有用なのかすらボクはしらない。
しかし『解体』のスキルがソレを教えてくれる。
Lv1ですらこれほどの恩恵を与えてくれるスキルなのに最大Lvと思われるLv5となると……。
「肉や脂がまったくない……。なんだかお肉も心なしか美味しそうだし……。
魔石は……かわんないか」
Lv1では若干残っていたりした余計な肉や脂が完全になくなり、解体速度も非常に速い。
まさにプロの手際だ。いや達人の領域だろう。
何せ大きな一角兎丸々1匹分の解体に30秒とかかっていないのだ。
……速いなんてレベルじゃない。Lv5すげー……。
魔力が増えた分だけ『アイテムボックス』に注ぐ魔力量も増やしたので解体で種類数が増えても特に問題はない。
その後一角兎を中心にファンタジー生物の死骸をお昼まで解体した。
お昼は解体したばかりの一角兎のお肉でバーベキューだ。
最近はずっと10秒チャージで済ませていたので久しぶりのたんぱく質だ。
『解体』Lv5で前よりもずっと美味しそうに見えるお肉を、すっかり忘れていた『調理』スキルをLv5にして焼き上げる。
調理は魔力を注いで手間隙を省く系の生産スキルではないらしく、『解体』と同じように動作に補正や適切な行動が自動で行われる系だった。
ただ調味料も何もない状況では焼き加減くらいしか効果がない。
ただそれでもやはりLv5、大したものだ。
以前食べたものとは比べ物にならないくらいに柔らかく口の中で蕩ける。
明らかに味が向上しているし、調味料もタレも何もないというのにいくらでも食べられそうだ。
……これは調味料なんかが手に入ったら料理無双も夢じゃない。
全部食べずに熱々のままのお肉を『アイテムボックス』に何枚も収納しておくのも忘れない。
取り出すときに注意が必要だけど、先に木のお皿を出しておけば大丈夫だろう。
もちろんお皿の上に乗せたままでは収納できなかったのでこうなっている。いちいちこの制限ほんとめんどくさい。
お昼をお腹一杯食べた後も準備の続きだ。
解体して確保したお肉を『燻製』スキルで燻製肉にする実験をしてみた。
香り付けのチップなんかがないけれど、そこはスキルの効果とLvでなんとかできるだろう。
新たに燻製部屋を増設して『燻製』Lv5で勝手に動いてくれる体に任せて燻製の準備――調味料などがないので下ごしらえは飛ばして、塩抜き洗浄――を済ませる。
2、3時間置いてからお肉の表面を『魔法:風』で一気に乾燥させる。
次は煙で燻すのだが、スモークチップなんて高尚なものはないので薪をそのまま使った。
もし食べられなくなっても勉強にはなる。
勝手に動いてくれる体のおかげでさくさく作業は進み、スモークする段取りなんかもほとんど自動で出来るように準備が完了した。
あとは待つだけである。




