表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アゲハの開拓街  作者: 天界
第1章 長いお散歩編
10/25

010 ベースレベル 『5』



 荒療治で酷いトラウマは解消されたようだが、以前よりはずっと周囲を気にして歩くようになった。

 でもこれくらいなら現代日本人としての平和ボケが多少解消されて、こっちの世界に馴染んできたとも取れなくもない。


 ……今までが無警戒すぎたのだ。


 『鷹目』で得物を発見したら風の向きすら気にせず近寄り、風の刃の射程圏に入ったら攻撃するという今思えば殺してくださいといってるも同然の行動を取っていたわけだ。


 ほんとよくボク死ななかったね?


 でももう違う。

 一端の狩人……とは決して言えないけれど、なるべく気をつけて音を殺して歩き風の向きにも気をつけて風上からは近づかないようにしている。

 本職から見たらきっと下手すぎて笑われそうだけど気持ちは立派な狩人だ。


 そんな調子で慎重にレベル上げを続けていく。

 慎重に行動しているので効率は落ちていると思われるだろうが、昨日は1回しか出会わなかった顎蜂と今日はかなりの頻度で遭遇している。

 顎蜂はボクが先制するよりも早く『魔力障壁』に激突してくるのだけど、200程度のダメージではボクの障壁は破れない。

 積み重ねたら破られるけれど、耐久力が減ったら張りなおしちゃうしね。


 『魔力障壁』に激突した顎蜂は完全に気絶するのであとは止めを差すだけ。とても簡単な作業だ。


 最初はあの羽音にびくついていたけれど、何度も何度も激突しては気絶するのでいい加減慣れるというものだ。

 今では羽音が聞こえたらボーナスみたいに感じている。


 ……トラウマさんほんとどこいったんだろうね?


 結局効率は落ちるどころか顎蜂のおかげで割りと良いくらいにまでなっていた。


 レベル上げのついでに他のファンタジー生物達の攻撃も障壁で受けてダメージ測定もしておいた。

 もちろんボクの周りに球形状に展開している『魔力障壁』で試すなんてことはしない。

 魔力さえあれば『魔力障壁』は何個でも展開できるので新たに作っての実験である。


 その結果、顎蜂の突進攻撃が1番火力が高い事が判明している。

 一角兎の角を突き立てる突進や、6本足の噛み付きや引っかきなんて3桁ダメージにすら到達していない。

 ましてや白芋虫の場合は糸でのダメージは1桁台だし、その他のファンタジー生物でも3桁に到達するものはまったくいなかった。

 やっぱりあの顎蜂がこの辺最強の生物なのだろうか。


 そんな実験をしながらもレベル上げを続け、3時を過ぎる頃には念願のベースレベル『5』へと到達したのだった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 さておやつ時なのですぐさまボクのお城パートツーへと戻ってきた。

 ごめん、うそ。おやつだからじゃなくてベースレベルが5になったときにちょっとしたサプライズがあったのだ。


 増えたスキルポイントの確認と念のためにログも見てみたところ、ソレが判明したのだ。

 スキルポイントは予想通りに5ポイント増えており、そしてログには――


『ベースレベルが5に上がりました。

 解放条件:ベースレベル5を達成しました。

 アプリ:How to ミジェスギラが解禁されました。

 ユニークスキル:『経験値取得量強化』が解禁されました』


 なんと新しいアプリと新スキル――しかも実に魅力的な名前のスキルが解禁されたのだ。

 逸る気持ちを抑えてダッシュで戻ってくると中へ入り、安全のために拠点の周囲へ『魔力障壁』を展開する。


 ……さぁさぁお待ちかねの時間ですよ!


 まずはアプリなんかよりも先にこのユニークスキル――『経験値取得量強化』の情報だ。

 スキル辞典をさっさかスクロールさせてお目当てのスキルに辿り着くとさっそく取得だ。


 Lv1で必要なスキルポイントは3。

 意外と多いような少ないような微妙なラインだ。ユニークなくせに取得するのにポイントを要求するところも世知辛い。

 でも新たにゲットしたスキルポイントは5あるのでLv1はいける。


 取得するといつものようにスキルの情報が流れ込んできて、『経験値取得量強化』がただのスキルではなくユニークスキルという完全に別枠扱いのスキルであるという事を理解した。

 どうやらこの『経験値取得量強化』はボクだけのスキルらしい。

 だからこそ、ユニーク(唯一の)スキル。


「……むふ」


 ついつい笑みが零れてしまう。

 だってボクだけの特別なスキルなんだからね。しかも間違いなく有用だ。

 Lv1でなんと経験値の取得量が『2倍』になるのだ。

 もうちょっと刻んでくるかと思ったらいきなり2倍だ。

 これはLv2も期待できる。でも残念ながらLv2にするにはあと4ポイントいる。2ポイント足りない。


 でも今は安全なボクのお城パートツーの中だ。

 解除しても問題ないスキルを解除してスキルポイントを確保してLv2にしてみる。


「おお! 3倍だ!」


 思わず可愛い声が飛び出ちゃうほどの喜びがボクを支配する。

 『経験値取得量強化』Lv2の効果は入手する経験値が『3倍』になるというもの。

 Lv1が2倍、Lv2が3倍ときたらLv3は4倍だろうか。

 2倍でもすごいのにさらに倍の4倍になんてなってしまったらボクのベースレベルはどんどんあがっちゃう!


「ぐふふ……」


 ニマニマと口元がゆるゆるになりながら『経験値取得量強化』Lv3を取得し、やはり予想が正しかったことを理解した。


 でも喜んでばかりもいられない。

 ボクが外へ出るには必須となるスキルが多すぎるのだ。

 とてもじゃないがLv2やLv3を取得するのはポイント的にも安全面でも無謀がすぎる。


 とりあえずもう少しベースレベルを上げよう。

 『耐性:精神』Lv2も欲しいのでスキルポイントはいくつあっても足りない。

 でもLv1とはいえ効率が2倍になるのだ。苦労も半分。時間も半分。ニマニマが止まらない。


 さてお次は新アプリだ。

 なんとも言えない名前の新アプリ――How to ミジェスギラ。


 ……ミジェスギラって何?


 そんな疑問を抱きつつ、ニマニマしている間に自動スリープしたスマホのロックを解除してホーム画面を立ち上げると、そこには見慣れないショートカットが1つ。


 さっそくタップすると画面にはどこぞで見たことあるような……具体的には某有名な海外の検索エンジンが出てきた。

 Gog○leの文字が書いてあるところにはカタカナでミジェスギラと格好良く掘り込まれた画像があり、その下には検索フォーム。


 え、どういうこと……。


 疑問は深まるけれど、検索フォームがあるのだからと『ミジェスギラ』と入力してみた。

 予測検索は機能していないのか、ドロップダウンリストは出てこない。


 でも検索結果は出てきた。

 どうやらミジェスギラとはボクが今いるこの異世界の名称であり、神様の名前らしい。

 でもこの世界の名称自体は普及しておらず、神様の名前としてしか認知されていないそうだ。


 そしてボクは結論を下す。


「異世界の検索エンジンだこれー!」







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 もうずっとボクは色々な疑問をHow to ミジェスギラで検索しまくっている。

 そしてわかったことが幾つかある。


 まずHow to ミジェスギラは学習機能があり、検索を繰り返す事によって便利になっていく。

 最初に気づいた予測検索のドロップダウンリストなんかがコレだ。

 今では『魔法』とフォームに入力すると、『魔法:火』とか『魔法:水』とか色々出てくるようになった。


 しかし簡単な事はわかるのだけど、どうやらHow to ミジェスギラはまだまだ解禁されていない箇所が多いらしく、深く突っ込んだ事になると『権限不足により閲覧できません』と出てくる。

 『How to ミジェスギラ 権限』で検索したら、ボクのベースレベルの上昇と共に解禁されていくシステムだとわかった。

 しかし制限された情報でもボクにとってはとてもとても有用だ。


 まず1番の収穫がコレ――『『アイテムボックス』の取得方法』。


 やっぱりありました。いやっふー!


 このようにある程度のスキルについては多少の解説と取得条件を検索できたのだ。

 それによると、『アイテムボックス』を取得するには『魔法:空間』が必要。

 さらに『魔法:空間』で検索すると、『空間把握』と『魔力制御』が必要だとわかった。

 ちょうどよく『魔力制御』は『魔力障壁』の前提条件でもある。


 でも閲覧可能なのはある程度のスキルであり、全部では当然ない。

 『魔法:創造』なんかは権限不足で閲覧できなかった。最初から取得できたんだけどなぁ。


 『アイテムボックス』の取得条件の他にも色々と有用な情報をゲットできている。


 その中の1つ、魔法について。

 ボクはやはり一般からは逸脱した存在であるらしく、普通は魔法スキルをもっていても『発動体』というアイテムが魔法を使用するには必要らしい。

 この発動体がないとイメージを魔力で現実に反映させる事ができないみたいなのだ。


 発動体とはそのまんま名前の通り魔法を発動させるための媒体なのだ。


 そして魔法使いはもう1つアイテムを持つのが普通だ。

 それは『増幅体』。


 一般的な魔法使いでもボクと比べたら一般人に毛が生えた程度の魔力しかもっていない。

 この世界――ミジェスギラでは量に差はあれど、誰でも魔力を持っているそうな。でもその差もボクからみたら誤差の範囲以下でしかない。

 それでも普通の人から見れば一般的な魔法使いの魔力量は一般人の数倍から十数倍はあるらしい。

 そんな一般人よりも大量の魔力を持っていても、魔法を早々連発はできない。

 そこで登場するのがこの増幅体。

 増幅体はその名の通りに魔力を増幅(・・)してくれる。


 ……まぁそれでも魔法は大砲の役割であり、早々連発するものではないらしく魔法一辺倒の魔法使いというのは非常に稀らしい。

 みんなそれぞれ近接戦闘がある程度できるのが一般的だそうな。


 さて、そんなわけで魔法使いには2つのアイテムが必須。

 発動体と増幅体だ。


 当然ボクはこの2つを持っておらず、それでも魔法を使いまくっている。


 危なかった……。人前で発動体も持たずに魔法を使ったりしたりどうなっていたことか。


 ちなみに発動体は大体杖の形状をしており、増幅体はローブやアクセサリー。

 魔法使い=ローブに杖って感じであってるみたいだ。


 早急にボクも杖をゲットしなければ……。

 ローブは絹糸で作ろう。


 幸いにも『武器作成』と『裁縫』のスキルでこの2つは作れるみたいだしね。

 材料も今持っているもので十分足りるみたいだ。

 一般的なローブや杖の形状や材料なんかも検索できてたりするのでとても便利だ。


 この世界の常識なんてないボクにとってはこのHow to ミジェスギラは何よりも有用な代物だろう。

 頑張ってベースレベル上げしてよかった。


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ