Vita-ウィータ- 始まり
黒杦結希は白いベッドに囲まれた病室の中にいた。窓と空のベッドしか無く時計もない室内では、時間の感覚が狂っていく。結希は、窓から見える景色から病室の入れ口へと視線を変えた。
小さな足音が大きくなり病室の前で消えた。それと同時に薬品と香水の臭いが部屋中に広がり吐き気が結希を襲う香水の持ち主が結希の正面に立つ。名前は赤池央子 ニ十四歳。健康肌でセミロングの茶髪を一つに束ねている薄化粧のせいなのか赤い口紅が濃く見える。こう見えても看護師である。
「黒杦さん、薬の時間ですよ」
「・・・・・・・・」
毎回のことなので結希は答えなく央子はわかっているのか、結希の白い腕を掴み準備を始める。
小さい瓶の中に入っている赤い液体が注射器へと移動し結希の体内へ入った。央子が注射の片付けが終わる頃にはだるさと痛みがひいた。
「最近、ご飯残しているようだけど・・・わざとかしら?検査しても異常なし怪我もないし私だって貴女の他に見る患者はいるのに・・・先生はなぜ退院させないのかしら、不思議でしょうがないわ」
貶すような口調で話すが本人は無言で空を見ていた。央子は気に入らないのか結希の腕を強く握る。白い肌が青紫色に変化してきた頃、ノックが聞こえた。
入ってきたのは、結希の担当医、斎藤一哉 ニ十ニ歳だった。健康肌で黒髪、黒縁眼鏡という日本男性の手本のような人物だ。
央子は一哉だとわかると寄り添うみたいにかけだした。一哉はカルテを見ながら結希の視線をおっていた。
「調子どうかな?」
「先生、黒杦さん最近体調いいみたいですよ?怪我も熱もないし・・・」
「いや、顔色悪いし、様子見だね。食事もまともにとれてないみたいだしまた薬増やしてみようか。そういえば、高橋先生が捜していましたよ?」
「・・・そうなんですか。でもこっちやってますので終わってから行きますね」
央子は二人きりにさせたくないのか中々、引きがらない。
一哉は小さく溜め息をし、わざとらしく片手で髪をかきながら央子を見た
「高橋先生、急用らしいですよ?304号室の田中さん、確か・・・点滴した後、薬を変えるはずなのにリーゼになっていると言ってたような・・・」
「・・・っ!?用事思い出したので、失礼します!」
一哉の言葉で明らかに央子の顔色が悪くなり嵐が去るように病室をでた。
はい。始まりました。更新が遅いですが、これからもよろしくお願いします。